CISOとは?CIOとの違い、重要性や仕事内容について解説

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サイバーセキュリティの脅威が日々増加する中、企業や組織における情報セキュリティの重要性はますます高まっています。その中心的な役割を果たすのが、CISO(Chief Information Security Officer)です。しかし、CISOの具体的な役割や責任、必要なスキルについては、まだ十分に理解されていない部分もあります。この記事では、CISOの基本的な概念や役割、不在時のリスクを解説していきます。

企業の安全を守るためにも、ぜひ参考にしてください。

CISOとは

企業や組織がデジタル化を進める中で、情報セキュリティの重要性が急速に高まっています。特に、CISO(Chief Information Security Officer)は、企業の情報を守るための重要な役職として注目されています。

まずは、CISOとは一体どのような役職で、何を担うのかについてみていきましょう。

CIOとの違い 

CIO(Chief Information Officer)とCISOは、どちらも企業の情報戦略において重要な役割を担いますが、その役割と責任は明確に異なります。

CIOは主にIT戦略の策定と実行を担当し、企業の技術インフラを管理します。業務の効率化やコスト削減、ビジネスの成長を目指すための情報システムの整備が中心です。

一方、CISOは、企業の情報セキュリティを強化するためにサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを管理し、セキュリティポリシーの策定・実施を行います。

要するに、CIOが情報技術を活用してビジネスの成長を目指すのに対し、CISOはその情報技術の安全性を確保しています。CIOとCISOは相互に関連しながらも、それぞれ異なる視点で企業の情報戦略を支える関係です。

CISOの役割と重要性

CISOは企業の情報資産を守るための重要なリーダーとして、不可欠な存在です。その核となるミッションは、サイバー攻撃やデータ漏洩といったリスクから企業を守り、情報の安全性を確保することです。

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現代のビジネス環境では、デジタルデータやシステムの利用が飛躍的に拡大し、情報が攻撃対象となるリスクも日々高まっています。CISOは綿密な全社的セキュリティ戦略を策定し、徹底的なリスクアセスメントを通じて潜在的な脅威の特定に努めています。

そのうえで、実効性の高い対策を計画・実行し、組織全体へのセキュリティポリシーの浸透を図ることがCISOの役割です。
➡情報セキュリティポリシーとは?基本構成と策定手順、運用方法を徹底解説!

全従業員を対象としたセキュリティ教育や実践的な訓練を通じた意識向上も、CISOの重要な使命です。

最新のテクノロジーを活用したデータ保護の管理体制や、巧妙化するサイバー攻撃に備えた強固な防御システムの構築にも取り組んでいます。また、万が一のインシデント発生時には、冷静かつ迅速な対応で被害を最小限に抑えるべく陣頭指揮を執ります。

CISOは単なるセキュリティ担当の枠を超えて、企業がデジタル技術を安心して活用できる環境を創出する存在ともいえるでしょう。

CISOの仕事内容

CISOの役割は非常に多岐にわたり、企業の安全を守るために幅広い責任を負っています。
単なる情報セキュリティ対策にとどまらず、セキュリティ戦略の立案やリスク評価、従業員教育の推進なども含まれます。

まずは、CISOが具体的にどのような仕事をしているのか、その仕事内容をみていきましょう。

セキュリティポリシーの策定と運用

デジタル時代の組織防衛の要となるのが、実効性の高いセキュリティポリシーです。

CISOは、組織の DNA に合わせた包括的なセキュリティ戦略を描き、刻々と変化するデジタルリスクに柔軟に対応します。たとえば、ゼロトラストやクラウドセキュリティといった最新のアプローチを取り入れ、より強固な防御線を築き上げています。
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インシデント対応の立案と指揮

サイバー攻撃は「いつか」ではなく「いつ」起きてもおかしくない脅威です。

CISOは、緊急事態に備えた万全の体制を整えると同時に、実際のインシデント発生時には冷静な判断と迅速な指揮で組織を守ります。24時間365日体制のSOC(Security Operation Center)も統括し、インシデント後には詳細な分析と再発防止策の立案を行い、企業の回復力も高めます。
➡SOCとは?仕組みや最適な体制まで紹介 

コンプライアンスの確保

法令やガイドラインへの準拠は、組織の信頼性を維持する上で不可欠です。

GDPR、HIPAA、PCI DSSといったデータの保護を目的とした各種規制への対応や、定期的な監査の実施、ISO 27001などのセキュリティ認証の取得・維持を行います。
➡ISMSとは?Pマークとの違いや認証取得のメリット・デメリットを解説

また、取引先やベンダーのセキュリティリスク評価も重要な業務として位置づけられており、サプライチェーン全体のセキュリティ確保もCISOの仕事です。

経営陣へのセキュリティ報告

組織が直面するセキュリティリスクを可視化し、経営層へのわかりやすい報告は、適切な経営判断を支援するうえで重要です。セキュリティは「コスト」ではなく「投資」であるという認識を経営層と共有し、適切な投資判断を導き出す仕事もCISOの責務です。

ほかにも、新技術導入時のリスク評価やセキュリティインシデントの影響度分析結果なども、経営陣の意思決定をサポートする重要な情報として報告します。

従業員への教育

最新のセキュリティ技術も、それを使う人々の意識が伴わなければ真価を発揮しません。

そこでCISOは、全従業員を「セキュリティの担い手」として育成することにも力を注ぎます。実践的なフィッシング訓練や部門別の専門研修を通じてサイバーセキュリティへの理解を深め、一人ひとりが組織を守る力となるよう導いています。

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CISO不在のリスク

CISOのいない企業では、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが格段に高まるとされています。
特に、対応の遅れやセキュリティ方針の不備は大きな問題を引き起こしかねません。

ここでは、CISO不在が企業にもたらすリスクについて解説するので、CISOの必要性を再考しましょう。

十分なサイバーセキュリティ対策が行われない

セキュリティ戦略を統括する責任者の不在は、包括的なセキュリティ対策が実施されにくい状況が生まれます。
各部門が独自の判断で断片的な対策を行うと、組織全体として一貫性のない脆弱なセキュリティ体制となってしまうためです。

また、新たな脅威に対する予防的な対策も不十分となり、攻撃者に狙われやすい状態が続くでしょう。

インシデント発生時の対応が遅れる

セキュリティインシデントが発生した際、指揮系統が明確でないため、適切な初動対応が取れない可能性が高くなります。また、責任者不在による判断の遅れは被害の拡大につながるだけでなく、事業継続性にも深刻な影響を及ぼすリスクにもつながります。

インシデント後の分析や再発防止策の策定も不十分となり、同様の被害を繰り返す可能性も高まるでしょう。

コンプライアンス違反の可能性が高まる

セキュリティに関する法規制や業界基準への対応が適切に行われず、意図せずにコンプライアンス違反を起こすリスクが増大します。罰則や制裁金といった直接的な損害だけでなく、取引先からの信用低下や事業機会の損失などの間接的な影響をもたらすおそれもあります。

セキュリティ投資が不足する

セキュリティ投資の必要性を経営層に適切に説明し、予算を確保する役割を担う人物が不在となれば、必要な投資が行われにくくなります。結果として、古いシステムの使用が継続される、必要なセキュリティツールが導入されないなどセキュリティ体制の弱体化につながります。

新たな脅威に対する対応が遅れる

日々進化するサイバー脅威に対して、組織として迅速な対応が困難になります。新たな攻撃手法や脆弱性に関する情報収集が不十分となり、適切な対策が行われないためです。

結果として、すでに存在しているウイルスやハッカーといった脅威に対しても脆弱な状態が続きかねません。

セキュリティ文化が構築されない

組織全体のセキュリティ意識を高めるCISOが不在の場合、適切な行動を促進するセキュリティ文化の醸成が困難になります。従業員教育や啓発活動が体系的に行われず、セキュリティに対する理解や意識が低いまま放置された結果、人的要因による情報漏洩やインシデントのリスクが高まります。

ビジネスチャンスが失われる

強固なセキュリティ体制は、取引先や顧客からの信頼獲得において重要な要素となっています。

CISO不在だとセキュリティ要件の厳しい取引先との商談機会を失ったり、新規事業展開の障壁となったりするなど、ビジネス機会の損失につながる可能性があります。

CISOがいない時の対策

全ての企業がCISOを雇用しているわけではなく、特に中小企業やリソースに限りのある組織ではCISO不在のケースも多いでしょう。CISOがいない環境でも情報資産を守り、サイバー攻撃のリスクを低減するためには具体的な対策や実務的な工夫が不可欠です。

ここでは、CISOがいない組織がセキュリティ強化を図るための方策について解説します。
セキュリティ担当の方は、ぜひ参考にしてください。

既存の役職者が情報セキュリティ管理責任者を兼任する

情報システム部門の責任者やIT部門の管理職が、情報セキュリティ管理の責任者を兼任するケースが多く見られます。その場合、セキュリティに関する明確な権限と責任を定め、経営層の承認が必要です。また、担当者は情報セキュリティに関する知識やスキルの習得に努め、最新の脅威や対策について学ばなければなりません。

社内で部門横断的なセキュリティ委員会を設置し、組織全体でセキュリティ課題に取り組む体制構築も効果的です。

外部のサービスを利用する

専門性の高いセキュリティ対策については、外部のサービスやリソース活用で補完可能です。
たとえば、マネージドセキュリティサービス(MSS)の利用により、24時間365日のセキュリティ監視や脅威検知を実現できます。

また、セキュリティコンサルタントとの契約によって、定期的なリスク評価やセキュリティポリシーの策定支援も受けられます。社内へのクラウドセキュリティサービス導入も、最新のセキュリティ対策を比較的低コストで実現する手段としておすすめです。

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セキュリティ監査を受ける

定期的な第三者による監査は、セキュリティ体制の客観的な評価と改善に有効です。
外部の監査機関による定期的なセキュリティ診断を実施し、脆弱性や課題を特定します。また、セキュリティ認証(ISO 27001など)の取得を目指せば、体系的なセキュリティ管理体制の構築も進められます。

さらに、ペネトレーションテストの実施により、セキュリティへの防御力の評価と改善を行う取り組みも重要です。

まとめ

情報セキュリティの重要性が増す現代のビジネス環境において、CISOの不在は確かに大きな課題となります。しかし、それは必ずしも組織のセキュリティが脆弱であると意味するわけではありません。
既存の管理職による責任ある兼任体制の確立、外部の専門サービスの戦略的な活用、そして定期的な監査による客観的な評価と改善を着実に実施すれば、効果的なセキュリティ管理体制の構築は可能です。

重要なのは、セキュリティ対策を単なる「やるべきこと」として捉えるのではなく、組織の持続的な成長と発展を支える重要な投資として認識することです。日々進化するサイバー脅威に対して、組織全体で危機感を共有し、積極的に対策を講じていく姿勢が求められます。

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