ERPとは?主な機能やメリット・デメリット、導入の流れと選定のポイントを解説

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ERPとは?主な機能やメリット・デメリット、導入の流れと選定のポイントを解説

ERPとは、企業経営に必要な資源を一元管理して最適化する方法や、そのためのシステムのことです。クラウド型ERPの登場による導入ハードルの低下やビジネスの競争環境激化などで、近年導入する企業が増加しています。ERPは情報の一元管理や経営状況の見える化、迅速な意思決定に有効です。

本記事では、ERPの概要や活用するメリット・デメリット、導入の流れと選定するポイントについて詳しく解説します。ERPについて知りたい方、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ERPとは

ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を適切に管理・分配して、企業運営の最適化を目指す考え方や、そのための手法・システムのことです。部門ごとに行っている購買や生産、販売などのデータを集約することで、効率的かつ円滑な業務の実行を目指します。

ここからは、ERPに関する以下の項目について解説します。

  • 由来や歴史
  • 求められる背景
  • 基幹システムとの違い
  • 業務システムとの違い

ERPの由来や歴史

ERPは生産管理手法であるMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)に由来しています。MRPとは、製造業において必要な資材を効率よく調達して生産効率を向上させる考え方のことです。MRPが発展して、企業全体の経営資源を効率的に活用・最適化する考え方が生まれました。

世界初のERPシステムは、ドイツに本社を構えるSAP社が1973年にリリースした「R/1」といわれています。1990年代にERPは欧米を中心に普及し、企業の成長や競争力の向上に役立つシステムとして導入企業が増加しました。

日本にも1992年にERPが入ってきましたが、日本独自の商習慣に対応させるためのカスタマイズに多くのコストがかかったため、当初は浸透しませんでした。日本でERPを導入する企業が増えた要因は、日本の商習慣にマッチしたERPや国産のERPの登場によるコストパフォーマンスの向上です。とくに、クラウド型ERPの登場で低コストかつスピーディーに導入が可能となったため、利用する企業が増加しました。

ERPが求められる背景

ERPが求められる背景には、激化するビジネス環境があります。多くの企業では、競争力の向上に向けDXの推進によるシステムの導入や業務プロセスの変革が行われています。ただ、導入システムの増加はデータ分散の原因となり、適切なデータ活用を妨げるケースが少なくありません。また、事業の多様化や複数部門の設立が連携を阻害して、非効率な業務処理になっているケースも存在します。

グローバル企業の場合は、各国の規制や商習慣にも対応しなければならず、負担が増加する原因になっています。ERPを導入すれば、情報の一元化による適切な経営判断や効率的な業務処理を実現可能です。

基幹システムとの違い

ERPと混同されがちな基幹システムですが、活用の目的や対象範囲が異なります。基幹システムも企業の根幹をなすヒト・モノ・カネ・情報を集約するためのツールです。ただ、ERPは情報の一元化だけでなく、業務効率化を促す機能も実装されています。また、ERPは一つのシステムで複数業務のデータや業務プロセスの管理が可能である一方、基幹システムの場合には販売管理や人事管理など、特定の業務ごとにシステムが分かれています。

業務システムとの違い

ERPと業務システムの主な違いは活用目的と機能です。業務システムは、特定の業務を効率化させる目的で活用するシステムです。具体的には、顧客や商談、勤怠管理システムなどが挙げられます。特化している分、ERPと比べ対象業務を効率化するための便利機能が多数実装されている傾向があります。ただ、ERPとは異なり企業におけるデータの一元化などはできず、企業全体の効率化を図ることは困難です。

ERPの種類

ERPの種類

ERPは複数あり、いくつかの観点で分類されます。続いて、ERPの種類について解説します。

導入形態による分類

導入形態では以下の3つに分類されます。

  • 統合型
  • コンポーネント型
  • 業務ソフト型

順に解説します。

統合型

統合型は、会計や生産、購買管理などの業務に関する機能が全て一つに統合されたものです。データの一元管理がしやすく、各機能の連携により高い業務改善効果が期待できます。

コンポーネント型

コンポーネント型は、業種や業務に合わせたシステムを一つずつコンポーネント(部品)として選択するものです。連携・最適化したいものを業務単位で選択でき、自社の状況に合わせて拡張しやすい特徴があります。また、統合型と比較してコストが安く短期間で導入できる点も魅力です。

業務ソフト型

業務ソフト型は、会計や人事・給与管理など特定のシステムを一元管理するものです。各機能が単体で提供されているため、コストが安く予算があまり取れない企業でも導入しやすい特徴があります。ただ、全ての業務をカバーできるわけではなく、業務効率化や情報の一元管理はあまり期待できません。

提供形式による分類

提供形式では以下の3つに分類されます。

  • クラウド型
  • オンプレ型
  • ハイブリッド型

順に解説します。

クラウド型

クラウド型は、クラウドサービスを介して利用するタイプです。物理的なサーバーを用意する必要がないため、初期費用やランニングコストを抑えることが可能です。ただ、長期的に利用する場合、オンプレ型よりもコストが高くなるケースがあります。

オンプレ型

オンプレ型は、社内独自の物理サーバーを構築して利用するタイプです。自由度が高く自社に合わせたカスタマイズや、既存システムとの連携がしやすいメリットがあります。一方で、サーバーを設置する場所やメンテナンスする人材の確保が必要となり、コスト負担が増加するでしょう。

ハイブリッド型

ハイブリット型は、クラウドとオンプレを組み合わせて運用するタイプです。データの重要性や処理量などに応じて、クラウドとオンプレが使い分けられます。具体的には、重要な機能はオンプレでそれ以外はクラウド、データ処理量の多い本社はオンプレ、地方都市の支社はクラウドにするなどが該当します。ハイブリッド型の魅力は、運用の負担を軽減するとともに自社に合わせた機能開発をしやすくすることです。

開発方法による分類

開発方法により以下の3種類にも分けられます。

  • パッケージ型
  • スクラッチ型
  • オープンソース型

順に解説します。

パッケージ型

パッケージ型は、多数の業種や企業に対応できるように、全企業で基本的に必要とされる機能を実装したものです。既製品をそのまま導入・利用すれば良いため、コストを抑えスピーディーな導入が可能です。また、ツールの運用は開発ベンダーが行うため保守・管理の手間を抑えられます。

スクラッチ型

スクラッチ型は、オーダーメイドで各社に合わせた機能などを実装するものです。一から開発を行うため、自社に必要な機能の実装や業務フローを実現しやすく、使いやすいシステムを構築できるでしょう。ただ、システム開発に多くの時間とコストがかかります。また、メンテナンスや保守・管理の手間も発生します。

オープンソース型

オープンソース型は、無料で公開されているソースコードを活用して開発するものです。自社用のシステムを構築でき、初期費用やライセンス料がかかりません。ただ、高度で専門的な知識がなければ、ERPの開発は困難です。また、オープンソースの利用にはセキュリティ面の課題があるため、対策に多くのコストがかかるケースがあります。

ERPに実装されている主な機能

ERPに実装されている主な機能

続いて、ERPに実装されている主な機能について解説します。

会計管理

企業の売上や利益、コストなどの情報を集約・見える化する機能です。収支の分析や不要なコストの削減、予算作成に役立ちます。また、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表作成も可能です。

購買管理・資材調達・在庫管理

必要なときに適正量の資材や材料を発注するとともに、在庫を管理する機能です。商品の生産に必要な部品・原材料の種類や数量の管理により、生産工程を効率化させます。また、在庫管理で発注不足や過多を防止して、適切な在庫量を保ちます。

販売管理

商品やサービスの販売状況を集約・管理する機能です。販売実績の分析に基づいて販売戦略の検討・決定に活用できます。販売や市場データを利用した将来予測が可能なERPも存在します。

生産管理

生産計画の作成や生産プロセスの管理を行う機能です。受注や販売計画に基づき、どの商品をいつまでにいくつ作れば良いかを分析して、生産計画を作成します。また、計画を実行するための材料調達や生産プロセスの管理も可能です。

人事・給与管理

従業員の基本情報や勤務・勤怠データを一元化して、給与計算と支払いを行う機能です。従業員のキャリアやスキル、資格情報などを活用すれば、組織戦略の立案や適切な人員配置の実施にも役立ちます。必要な人材の選定や、採用活動の管理が可能な機能も実装されているERPも存在します。

ERP活用のメリット

ERP活用のメリット

続いて、ERPを導入するメリットについて解説します。

情報の一元管理

ERPにおけるメリットは情報の一元化です。企業には、複数のシステムが存在し情報が散在しています。システム同士が連携できない場合、データ活用の際に再入力や加工の手間が発生するでしょう。再入力などの課程で、ヒューマンエラーが発生する恐れもあります。ERPの導入で情報を集約すれば、データ活用がしやすくなるとともに手間の抑制が可能です。

経営状況の見える化とスピーディーな意思決定

経営状況の見える化とスピーディーな意思決定も、ERP活用のメリットです。企業の重要なデータが集約されたERPがあれば、複数のシステムをチェックする必要がなく、企業の状況を簡単に確認できます。また、多くのERPには経営分析機能が実装されているため、課題を把握可能で迅速な意思決定ができるでしょう。

内部統制強化

内部統制強化もERP活用のメリットです。企業情報を一元化することで、各部署・事業の透明性が高まり、データの改ざんや架空処理などの不正を防止しやすくなるでしょう。また、多機能なERP導入で利用するシステム数が減れば、システム管理者の監視対象が少なくなり、セキュリティ体制の強化にもつながります。

成功企業の情報収集

ERPベンダーは多くの企業・業種にシステムを提供しており、その情報を蓄積しています。また、蓄積したノウハウを顧客に提供したり、システムにいかしたりしており、情報収集や活用が可能です。成功企業の情報やノウハウを自社に転用すれば、効率的に成長できるでしょう。

ERP活用のデメリット

ERP活用のデメリット

メリットがある一方でデメリットも存在します。ここからは、ERP活用のデメリットを紹介します。

コストの発生

ERPの導入・利用には以下のコストがかかります。

  • ソフトウェアやハードウェアの購入費用
  • 導入支援やコンサルティングに関する費用
  • ライセンス料
  • 保守費用
  • 従業員のトレーニング費用
  • サポート費用

また、導入後にもメンテナンスやアップデートが必要で、その費用も発生します。

導入・運用における負担

導入や運用における重い負担も、ERP活用のデメリットです。ERPが影響を与える範囲は幅広く、導入プロセスが複雑であるため、導入検討から完了までに多くの時間がかかります。大規模導入の場合には、予定通り進まず長期化するリスクも存在します。
また、導入にあたり業務の棚卸しとフローの再構築が必要です。導入後も、従業員が操作や利用方法を理解して活用が浸透するまでに時間がかかるでしょう。

ERP導入の流れ

ERP導入の流れ

続いて、ERPを実際に導入する際の流れを解説します。

1.導入目的の明確化

まず、ERPを導入する目的や解決したい課題を明確にしましょう。目的により必要な機能やERPの種類が異なります。

2.プロジェクトの立ち上げ

続いてプロジェクトを立ち上げます。ERPの選定には業務の棚卸しなどが必要になるため、経営層・システム部門のみでプロジェクトを行うのではなく、実務を担当する従業員を参加させることが重要です。ERPを実際に利用する部門の従業員が参加すれば、システムに対するニーズや業務要件などを正確に把握できるでしょう。

3.業務の棚卸し

次に、実際に行っている業務やプロセスの棚卸しを行います。現在どのようなツールや手法で業務を処理・管理しているか、確認しましょう。

4.業務フローの再構築

棚卸しした業務内容を基に、ERP導入後の業務フローを検討します。どの業務をERPで実施するかや、その際に業務フローを変更する必要があるか、変える場合にはどのように変更するかを明確にしましょう。

現場で業務を行っている従業員の意見を聞き、合意を得ながら進めることが重要です。経営層やシステム部門が一方的に決定すれば、現場の理解を得られずERPが活用されない恐れがあります。

5.システムの選定

必要な機能や要件などが明確になった後に、システムの選定を行います。システム選定時には、機能・要件だけでなくコストパフォーマンスやベンダーのサポート内容などの比較も欠かせません。

6.トライアルの実施

自社に合うシステムが見つかったら、トライアルを実施します。実際に利用して、操作性などに問題がないか確認しましょう。

7.本格運用の開始

トライアルを行い見つかった問題点を解消できれば、本格運用を開始します。利用開始にあたり、マニュアル作成や操作説明などを行い、現場従業員が利用しやすくなるサポートを行いましょう。また、定期的に運用状況を検証して機能の調整などを行うと業務改善効果が高まります。

ERPを選定する際の着眼点

ERPを選定する際の着眼点

ERPは複数あるため、最後にシステムを選定する際の着眼点について解説します。

導入目的を達成できるか

導入目的を達成できるかの確認は、ERPの比較で欠かせない項目です。自社がなにに重点を置きたいかを明確にした上で、それを達成できるかを確認すると良いでしょう。

自社に合うタイプか

ERPにはさまざまなタイプがあるため、自社に合うか確認しましょう。タイプにより特徴やメリット・デメリットが異なります。例えば、コストをかけてでも完全自社用のERPを利用したい場合には、オンプレ・スクラッチ型が良いでしょう。一方、コストを抑え短期間で導入したい場合には、クラウド・パッケージ型がおすすめです。

自社に必要な機能が実装されているか

自社に必要な機能があるかもチェックします。ERPには幅広い業種の利用を想定した汎用的なものや、特定の業界に特化したものなど多様なシステムが存在します。業種・自社の特性や目的を踏まえ、必要な機能を洗い出し確認すると良いでしょう。

操作性に問題がないか

ERPは利用して効果を発揮するシステムであるため、操作性に問題がないかの確認も重要です。企業により従業員のITリテラシーは異なるでしょう。誰でも使いやすいシステムであれば、現場からの反発を生みにくくスムーズに浸透します。

拡張性は高いか

拡張性はコストパフォーマンスや長期間利用できるかに影響を与えます。拡張性が高ければ、必要なときに必要な機能のみを利用でき、不要なコストが発生しません。また、自社の成長とともに機能追加などの拡張ができれば、長期間利用可能です。

他のシステムと連携できるか

ERPは多機能で多くの業務範囲をカバーできるシステムですが、特定の業務に特化しておらず、粒度の細かい業務処理には不向きです。中には、ERPと特定業務に特化したシステムを併用する企業もあるでしょう。併用システムがある場合には、そのシステムと連携できるかの確認がおすすめです。

コストパフォーマンスは高いか

コストパフォーマンスも検証しましょう。どんなに良いシステムであっても、コストに対するリターンがマイナスであれば、導入効果が低下します。導入により削減できるコスト・得られる利益を試算して、ERPの導入・利用料と比較することも重要です。

弊社SMSデータテックでは、ローコード開発ツールであるPleasanter(プリザンター)の導入支援を行っています。Pleasanterは、パッケージ製品では対応できないさまざまなWebアプリをスピーディーに開発できるため、高い費用対効果を実現可能です。

セキュリティに問題がないか

ERPは企業にとって重要なデータを保存するシステムであるため、セキュリティに問題がないかも確認すると良いでしょう。万が一、セキュリティ機能が脆弱でサイバー攻撃を受ければ、システムの停止や情報漏洩などの問題が発生します。

ベンダーのサポートは充実しているか

ベンダーのサポートが充実しているかの確認も重要です。ERPの導入時や運用時に不明点が発生するケースも多分に想定されます。充実したサポートを受けられれば、安心して利用できるでしょう。

まとめ

まとめ

ERPとは、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を適切に管理・分配して、企業運営の最適化を目指す考え方やそのための手法・システムのことです。部門ごとに行っている購買や生産、販売などのデータを集約し、効率的かつ円滑な業務処理と企業経営を実現します。以前は導入・利用に多くのコストが必要でしたが、クラウド型の登場でコストが低下して、導入する企業が増加しています。

ビジネス環境の変化が激しい昨今において、データの活用や業務改善は企業競争力の向上に欠かせません。ERPなどの活用で、データを有効活用した効率的な経営を実現しましょう。

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