仮想化はIT部門の救世主となれるのか?

コラム
#システム運用
仮想化はIT部門の救世主となれるのか?

物理サーバーを利用したオンプレミスでの環境構築には、サーバーの保持、メンテナンス等のコストが付き物です。IT部門はシステム運用を現状のレベルで保持しつつ、これからの企業を支えるDXの実現にも奔走することが期待されています。日々増えていくシステム環境、それに伴い増加していくオンプレミス環境の維持にIT部門は足を引っ張られてよいのでしょうか?
このIT部門の多忙を緩和するソリューションが仮想化技術です。サーバーの仮想化により物理サーバーのメンテナンスから解放され、それでいて必要なサーバーは仮想環境として用意ができます。サーバーの集約にもつながり、システム運用の効率化、コストの削減にも繋げることもできる施策となります。
本記事では、システム稼働環境の仮想化について記載します。

仮想化のおさらい

仮想化とは

ソフトウェアによってサーバー等のハードウェアと動作環境を抽象化する技術を、仮想化といいます。この「仮想」は英語のVirtualから来ているのですが、「実際の」「実質的な」といった意味を持っています。ソフトウェアにより「実質的な」サーバー環境を提供できることから、Virtual Machineと呼ばれており、これを日本語訳した際に「仮想」という単語を当てはめているのです。

仮想マシン(Virtual Machine)とコンテナ

仮想化技術の中でも、特に普及しているのが仮想マシン(Virtual Machine、VM)です。
VMは端的にまとめると、とあるサーバー(マシン)上に仮想のサーバー環境を作る技術といえます。より具体的には、VMはホストOS上で仮想化ソフトウェアを動かし、その上でゲストOSを稼働させる形をとります。ホストOS上に複数のゲストOSを作成することも可能です。これは複数のサーバー環境を一つのサーバーにまとめる集約にも利用が可能です。
また、近年ではDockerをはじめとしたコンテナという仮想化技術にも注目が集まっています。
コンテナは仮想化ソフトウェアの代わりにコンテナエンジンと呼ばれるソフトウェアを利用し、サーバー上に複数のアプリケーション実行環境を作る技術です。環境構築の際にゲストOSを作らないため、VMよりも軽量で手軽ですが、OSがLinuxに限定されるなどの制限があります。
こちらのコンテナも、コンテナオーケストレーションにより複数のコンテナを管理する機能も提供されているため、環境の集約、再構築用途にも適用されます。

仮想環境への接続とクラウドサービスの利用

仮想化された環境には、多くの場合はネットワークを介してアクセスします。社内ネットワーク上に物理サーバーを用意しそこに仮想化した環境を用意するのが一つのパターンです。また、クラウドサービス上に環境を用意する形でもよく利用されます。
クラウドはネットワーク上のどこかにアプリケーションやサーバーをおき、そこにインターネット等を介してアクセスして利用するサービス形態です。このサービスと仮想環境は非常に相性がよく、クラウドベンダーはIaaS、PaaSといったサービスとして、インターネットを介して利用できる仮想化環境を提供しています。クラウドサービスとして仮想化環境を利用する場合、物理サーバーのメンテナンスや運用を考える必要がなく、サーバーリソースも柔軟に変更できるというメリットがあります。

仮想化のメリット

仮想化のメリットの一つとして、一つのホストOS上に複数のゲストOSの環境を作ることができることがあります。例えば、現行バージョンのOSと次世代のOSとの比較のための環境として利用することが想定できます。
また、一つのホストOSに仮想化したゲストOSを複数おくことで、サーバーの集約が可能です。ハードウェアのメンテナンスや資産管理上の問題が解決できます。
保守性の向上もメリットの一つです。ゲストOSをイメージとしてバックアップすることが可能になり、バックアップ/レストアや環境の再現もしやすいため、障害対応時の切り替えが行いやくなります。また古いOS環境を残し、システムの延命に利用する用途でも活用できます。
仮想化とクラウドサービスを合わせて利用するときに生まれるメリットが、サーバー環境の制約を意識する必要がないことです。クラウドサービスならば、リソースは課金により後から追加することも可能で、スケーラビリティの観点からも有用です。OSも自由に利用可能で、企業にとって物理的なサーバーを所有することを必須ではなくしてくれます。さらには、クラウドサービス上の仮想化環境を利用することで、IT部門は物理サーバーの運用、メンテナンスから解放されることが可能です。
※ただし、IT部門としてクラウド利用に伴った業務は発生します。
前述のとおり、システムの集約に仮想化を利用すること可能なため、物理的なサーバー数を減らし、管理コストの削減にもつながる施策となります。

なぜ今仮想化なのか

仮想化技術の成熟

2021年7月時点で、仮想化に関する技術は多くの選択肢が用意されています。
VM、クラウド、コンテナ・・・現実的な性能要件を満たし、コスト面でも比較、検討できるサービスが充実してきました。多数のサービスがか競合することで、その提供レベルは高まり、価格やサービスの種類の充実に繋がっています。
事例が出揃ってきたことも、重要なファクターです。クラウドベンダー、仮想化ソフトウェアベンダーは過去の事例からベストプラクティスを提供してくれる準備ができています。
システム環境の移行には失敗は許されません。これまでは環境を構築する際の失敗がリスクとなって、仮想化への踏ん切りがつかないケースを耳にしました。しかし、仮想化やクラウドサービスの利用事例が増えたことにより、安心して仮想化への移行が実現可能なフェーズになったといえます。

IT部門の人材不足

IT技術の複雑化により、IT部門に必要な人的リソースは増加しています。一方で、労働人口減によりIT人材の不足が加速しており、DX推進や運用リソースのためのIT部門の人材確保は各企業にとっての課題となっています。経済産業省の「- IT 人材需給に関する調査 -調査報告書」では、2030年には最大で79万人のIT人材が不足する可能性を指摘しており、もはや楽観視していられる状況ではありません。
さらには、企業にとってはDXの実現が目の前の課題として迫ってきています。新型コロナウイルスの影響により、企業の体力が減っている状況を打破する施策として、IT部門の人材にはDXの推進も活躍の場として期待されているのです。
IT部門にとっては重要性が認識されることによりやりがいは増えますが、それに比して仕事量が増えていくことになります。しかしながら、仕事量が増えたからといってシステム稼働の質を落とすことはできません。
運用業務へのリソース、コストダウンが急務となる中、その一つの改善策となり得るのが「仮想化」です。オンプレミス環境のメンテナンスにかかるコスト/リソースの削減、サーバーの集約による効率的なシステム運用の実現が可能な仮想化は、IT部門の業務効率化にとって非常に有効な施策です。
さらには仮想化による環境の集約が行えれば、バックアップやレストア等のトラブル時の環境対応もしやすくなります。開発環境が必要な際にも、オンプレミスよりも素早い準備が可能となり、ビジネスへの対応スピードも増加します。

仮想化のシステム運用環境への導入を検討している場合には

システム運用へ仮想化を適用することを検討していているが、技術知識、事例などが不足して中々前に進めない。どのようにシステム運用の効率化と組み合わせて利用するかがわからない。
そんな場合はSDTにご相談ください。最適な仮想化を適用した環境を共に構築します。

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