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DX白書とは。DXの推進状況や人材、技術など内容をわかりやすく説明します
多くの企業が課題に挙げ、事業の今後を左右すると目しているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DXとは、デジタル技術により業務に新たな価値を付与するイノベーション・変革といえます。
「DXの必要性は認識しているが、どう取り組んでよいのか分からない。」多くのDX推進担当に任命された方たちが頭を悩ませる問題です。なにしろ、企業によってDXの形は違いますし、事例がそこまで多くは存在していませんから、何を参考にして良いのかも難しいでしょう。
そんな場合に役立てることができる資料としてDX白書があります。DX白書は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)という経済産業省のIT政策実施機関による書籍です。IPAはIT分野での認知度、信頼性が非常に高い団体で、海外や国内の事例も多数集めています。
本記事では、2023年9月15日時点で最新のDX白書「DX白書2023」について、概要をひもとき、わかりやすく説明します。DX白書への取り掛かりにご利用いただければ幸いです。
DX白書とは
DX白書は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が刊行するIT人材や新技術の動向についてまとめた書籍です。日米企業に対するアンケート調査や国内DX事例などからDXの推進状況や課題などについて解説しています。
紙の出版物については有料で販売されていますが、pdfのデジタルデータは誰でも無料でダウンロードして参照することが可能です。ダウンロードはこちらのページから行ってください。
DX白書の役割・意義・重要性
IPAは国内の情報処理に関するデータや情報が集まる団体です。経済産業省の政策実施機関のため、情報の信憑性が高く、信頼できるデータソースといえます。
DXはあらゆる企業の課題として存在しており、DX白書は取り組みへの参考としたり、現状の比較対象に大いに役立つ資料です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業や組織におけるデジタル技術を用いた事業の変革を意味する言葉です。概念的でイメージがしづらいのですが、単にデジタル化、IT化を実現するだけでなく、既存事業とデジタル技術の融合により新たな価値を生み出す点が重要とされています。
現場業務の改革からサプライチェーンマネジメントまで、規模や実現形態も様々です。しかしながら、これまで事業の中で発生したデータの活用は課題どまりでしたが、活用の実現によりユーザーへの新たな利便性の提供、販売する製品そのものに価値を付加することなどがポイントとなっています。
DX白書の構成
DX白書2023の構成は下記の通りです。
第1部 総論
第2部 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰
第3部 企業DXの戦略
第4部 デジタル時代の人材
第5部 DX実現に向けたITシステム開発手法と技術
付録
PDF版では全377ページにわたるボリュームのある資料となっています。各部のタイトルからも分かる通り、国内でのDXの取り組み状況、DXの具体例の提示、DXを支える人材の動向、DXに向けた技術的な情報などがまとめられています。
以下では、第1部から第5部の重要ポイントと要約をそれぞれ紹介します。
1.DXの取組状況
2022年時点でのDXについての日米企業の取り組み状況を比較すると、取り組めている企業は米国77.9%、日本69.3%と近づいてきていることがわかります。ただし、全社戦略に基づいた取り組みの比率は米国68.1%、日本54.2%と差があり、企業全体での課題として取り組むことが国内企業には求められています。
DXの成果が出ているとした企業は、米国89.0%、日本58.0%と依然として成果には大きな差が存在します。
従業員規模別に取り組み状況を見た場合、日本国内では従業員の多い企業ほど取り組みが盛んな傾向があります。一方で従業員100人以下の企業の中では取り組んでいない企業が約60%と中小企業の乗り遅れが顕著にあらわれました。
2.国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰
総務省2021年の調査から、企業規模、産業種別、地域の観点で俯瞰すると下記の傾向が見られました。
- 企業規模
大企業の4割強がDXに取組んでいるのに対して、中小企業では1割強にとどまっている。 - 産業種別
「情報通信業」「金融業、保険業」でDXに取組んでいる企業の割合が5割前後と他産業と比較して高い(全産業平均は2割強)。 - 地域
関東、東海、関西では大企業を多く持つため社会変革や市場での立ち位置変革といった取り組みが多い。地方では農業、林業などの地域産業での活用や働き手減少、高齢化などの問題対策への取り組みが見られる。
DXへの取り組みが広まっており、さらなる展開が期待されるとしています。
3.企業DXの戦略
DX推進・実現は、企業で戦略を立てて挑むべき課題です。戦略全体を構成する要素として、下記が挙げられてます。
- 外部環境変化とビジネスへの影響評価
- 取組領域、推進プロセスの策定
- 企業競争力を高める経営資源の獲得・活用
- 成果評価とガバナンス
- 先進技術を使った新たなビジネスへの取組
4.デジタル時代の人材
DXの推進、実現においては、人材の活躍が欠かせません。その際、求められる人材像を明確にする必要がありますが、日本では求められる人材像を定め周知できている企業は18.4%と非常に少ないです(米国48.2%)。
また、企業はDX人材に対し「量」「質」的不足を感じています。日本国内の企業の83.5%はDX人材の「量」が不足しており、2021年と比べても不足が加速している傾向にあります。一方の米国では量の不足は減少傾向にあります。さらに、日本国内では人材の「質」でも89.1%の企業が不足しているとしています。
人材の確保が急務となる中、「人材確保の手段」、「キャリア形成と学び」、「人材の評価」、「企業文化・風土」などが課題として立ちはだかっています。
5.DX実現に向けたITシステム開発手法と技術
DXを実現するためのITシステムの要件の大きなポイントとなっているのが、下記の3点です。
- 「スピード・アジリティ」
- 「社会最適」
- 「データ活用」
また適用すべき開発手法、開発技術には下記が挙げられていますが、SaaSの適用以外では日本国内の企業は米国に大きく遅れをとっている状況です。
〇開発手法
- 人間中心デザイン
- デザイン思考
- アジャイル開発
- ノーコード/ローコード
- DevSecOps、CI/CD
〇開発技術
- マイクロサービス/API
- パブリッククラウド(IaaS、PaaS)
- ハイブリッドクラウド
- SaaS
- クラウドセキュリティ
- コンテナ/コンテナ運用自動化
DX実現において重要となる技術として「データ利活用技術」「AI技術」「IoT技術・デジタルツイン」が挙げられます。それぞれの技術に対しては、下記の状況が報告されています。
- データ利活用
導入している企業の数では、日米に大きな差はありません。ただし、米国では全社的にデータ利活用に取り組んでいる一方、日本では部門単位での利活用にとどまるケースが多く、成果には大きな差異が見られます。
- AI技術
「AI人材の不足」、「AIに対する理解度不足」などの課題が立ちはだかり、技術の利用や発展は大きく米国に遅れをとっています。
- IoT技術・デジタルツイン
こちらの分野でも米国に大きく引き離されている状況です。
DX白書2023からわかる3つのポイント
DX白書2023から特に重要なポイントとして、下記の3点が挙げられます。
DXは大企業を中心に拡大している
日本国内では大企業がDXへの取り組み、成果においてリードしています。しかしながら、DXを必要としているのは中小企業でも同様であり、実現が急がれることも同じです。大企業の事例からも、活用できるポイントを見出して取り組みに活かすことが重要です。
事業継続のための施策重視
近年ではサイバー攻撃や自然災害などが事業継続に対する大きなリスクとなっています。IT、デジタル技術を活用して事業を行っている場合には、それらの停止が業務の停止とも直接的につながっているため、トラブル発生へ備えて、事業が継続できる体制作りも重視すべきです。
高度なデータ分析で高い成果を出すことが求められる
企業規模に限らず、自社の事業上で発生しているデータや外部機関が公開しているデータが多数存在している状況です。IoTなどによりデータを取得する仕組みづくりもハードルが下がっています。
これらのデータを収集、蓄積するだけでなく、分析して事業に役立てるデータ活用はDXの一つの成功パターンにつながるものです。データの組み合わせによりこれまでになかった知見を得て、価値の付加や新たなビジネスの展開に成功しているケースは少なくないのです。
DX白書の活用方法3選
DX白書について、本項では概要をまとめています。さらにDX白書を読み込むことで、下記の活用が可能です。
豊富な事例、インタビューをDX推進時の説得材料として利用
企業内でのDX推進では、経営層を中心として全社一丸となった取り組みが求められています。そのためには、経営層や企業の様々な部門担当者にDX推進に対する理解と協力を求める必要があります。まずは、DXの必要性と今すぐ取り組まなくてはならないことを伝えることが第一歩です。
その際に、DX白書からは豊富な事例やインタビューを参照することができます。成功するかどうかわからないDXの推進について、前例や成功者の言葉は大きな説得材料として役立ちます。
自社現場に活かせるアイデアの抽出
「DXを推進せよ」と言われても、具体的にどのようにすれば実現できるのかがすぐに浮かんでくるわけではありません。現状業務の分析などがベースとなりますが、各種のデジタル技術活用に関するアイデアも必要となるところです。
まったく同じ方法や技術が使えるとは限りませんが、DXの事例からはデジタル技術活用に関するアイデアを抽出することができます。デジタル技術で実現できることを知り、自社業務と組み合わせてDX施策につなげるためにも、DX白書は活用できます。
自社DXにおけるデータ活用の具体的イメージを得る
特に重要視されるポイントでもあげたのが、データ活用についてです。企業は現状でも多くのデータを持っていますが、どのようにしたら有用な知見を得られるのか、どんなデータが役立つのかはなかなか難しい問題です。
本来はデータサイエンスの手法を用いて考えるといったアプローチが主流ですが、まずはその取り掛かりに事例を参照して自社の場合に当てはめて考えてみるステップをおいてみましょう。自社のDXに対して、具体的イメージを作ることができます。
まとめ
DX白書2023は、IPAがDXについての取り組み、課題、技術などをまとめた書籍です。PDFファイルとして、誰でも参照できるよう公開されています。
日本国内の企業におけるDXの推進状況、米国との比較、企業規模や地域などの様々な視点でデータを収集してまとめています。また、DXを支える人材像やその育成、豊富なDX事例についても記載されている有用な資料です。これからDXに取り組む企業やDX推進中の企業にとっても非常に役立ちます。
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