
2025年12月3日(水)、東京国際フォーラムで開催された「IBM TechXchange Summit Japan 2025」に、当...

業務を円滑に進めるためにITシステムを導入したものの、システム運用に対して悩みを抱えている企業は多いのではないでしょうか。
近年ではどの企業でもITシステムを活用している一方で、その運用・管理に悩んでいる企業は少なくありません。企業のITシステムに関する悩みを解決してくれるのが、ITシステム周辺の業務を外部に委託する「ITアウトソーシング」です。実際にITアウトソーシングであれば、自社社員だけでは対応しきれない社内システムの運用・管理を委託することで、これまで抱えていた問題を解決できます。
この記事では、ITシステムの構築・運用を外部委託する「ITアウトソーシング」を利用するメリットや、導入のポイントを解説します。ITアウトソーシングを利用すれば、担当者の負担が軽くなるだけでなく、今まで以上に業務を効率良く進められるでしょう。
目次
ITアウトソーシングとは、各企業の管理プログラムやシステムなどに関わる業務を他の業者へ委託することです。内容はシステム設計を含めた全ての業務を委託したり、一部分の運用・管理だけを委託したりと、様々な形態があります。
この章では以下の2つの観点からアウトソーシングについて説明します。
ITアウトソーシングではシステムの設計から運用まで全て委託したり、運用部分だけを委託したりなど、様々な形態があります。
ITアウトソーシングの形態は、大きく以下の4つに分けられます。
企業が抱えるITシステムの課題や悩みに応じて、委託する形態を決められます。そのため導入する際は、どこまで自社で対応できるか洗い出した上で、自社に適したITアウトソーシングの形態で利用しましょう。
各企業が何らかのシステムを所有している一方で、その運用・管理に悩んでいる企業が多いため、ITアウトソーシングは非常に大きい市場を形成しています。
矢野経済研究所の調査によれば、2024年度のIT系BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)市場規模は、前年度比6.0%増の3兆1,240億円に達すると予測されています。また、グローバル市場においても、ITアウトソーシング市場は2024年に約3,374億米ドルとなり、2030年には5,608億米ドルに達すると予測され、年平均成長率(CAGR)8.83%で成長する見込みです。
出典:BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年)
この成長の背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、クラウドサービスの普及、中堅・中小企業へのアウトソーシング利用の広がりがあります。市場規模から分かる通り、「IT業務を外部委託する」というのは、決して珍しい話ではなく、今後さらに拡大していく分野なのです。
ITアウトソーシングの導入を検討すべき企業には、共通する課題や特徴があります。自社が以下のいずれかに該当する場合は、アウトソーシングの活用が有効な解決策となる可能性が高いでしょう。
順番に解説します。
経済産業省によると、2025年にはIT人材不足が約43万人に達すると予測されています。さらに、2030年には最大79万人のIT人材が不足する見込みです。
少子高齢化が加速している日本社会において、労働人口の減少は重大な社会問題であり、IT業界も例外ではありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査では、IT企業・事業会社の両方において、質・量ともに7割以上の企業がIT人材不足を感じていることが明らかになっています。
このような状況下で、思うように採用活動ができず、人手不足に悩まされている企業は多いのです。ITアウトソーシングを活用すれば、どの企業でも質の高いシステムの利用および運用が可能となり、人手不足問題の心強い味方になるでしょう。
出典:DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~(2018年9月)
出典:経済産業省委託事業「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年3月、みずほ情報総研株式会社実施)
出典:独立行政法人情報処理推進機構「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」(2024年7月)
自社でIT部門を維持するには、人件費、教育コスト、設備投資など、多額の固定費が必要です。特に中小企業にとって、専門的なIT人材を常時雇用し続けることは大きな財務負担となります。
ITアウトソーシングを利用すれば、必要な時に必要なリソースだけを活用できるため、コストの最適化が図れます。また、最新技術への投資や設備更新の負担も軽減でき、予算を本業に集中させることが可能になります。
導入コストが低いことで、上司や経営層からの決裁も得やすくなり、スピーディーなシステム導入が実現できるでしょう。
IT技術は目まぐるしい速度で進歩しており、「数年前の技術が今では古くなっている」ケースは少なくありません。クラウドコンピューティング、AI、IoT、セキュリティ対策など、新しい技術領域が次々と登場しています。
しかし社内のITシステムに携われるスタッフが少ないなどの理由から、日常的に運用・管理が行き届いていないと、システムのアップグレードに手を付けられないのが正直なところでしょう。また、既存のIT人材が最新技術をキャッチアップし続けることも容易ではありません。
そこでITアウトソーシングを活用すれば、最新のIT技術を自社システムにも、容易に導入できます。専門業者は常に最新の技術トレンドを追い、ノウハウを蓄積しているため、自社で一から学習するよりも効率的に最新技術を取り入れることができます。
最新技術を活用できれば、より効率よく、生産性の高い仕事ができるようになるでしょう。
ITアウトソーシングを成功させるためには、適切な業者選定が不可欠です。ここでは、業者を選ぶ際に確認すべき重要な以下のポイントを解説します。
ITアウトソーシングでは、外部の業者に自社のシステムやデータへのアクセスを許可するため、セキュリティリスクが伴います。業者選定の際には、以下のセキュリティ体制を慎重に評価することが重要です。
契約に際しても、情報漏洩やデータ不正アクセスに対する条項を盛り込み、万が一の際の責任範囲を明確にしておく必要があります。
ITアウトソーシング業者によって、提供するサービス内容や料金体系は大きく異なります。自社のニーズに合った業者を選ぶために、以下の点を比較検討しましょう。
複数の業者から見積もりを取り、単純な価格比較だけでなく、費用対効果を総合的に判断することが重要です。
業者の実績と専門性は、サービス品質を判断する重要な指標です。以下のチェックリストを活用して、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。
可能であれば、担当者と直接面談し、自社の課題に対する提案内容や理解度を確認することをお勧めします。また、既存顧客からの評判やレビューも参考になるでしょう。
ここでは、実績と信頼性の高いITアウトソーシング企業を以下の通り6社ご紹介します。それぞれの企業の特徴を理解し、自社のニーズに合った業者選定の参考にしてください。

NTTデータは、DX推進やクラウド移行、セキュリティ対策など、包括的なITサービスを提供しています。2023年7月にはセキュリティ管理のアウトソーシングサービスを開始し、サイバー攻撃の防止と被害最小化に注力しています。

アクセンチュアは、ビジネス変革とテクノロジーを組み合わせたサービスが強みです。デジタルトランスフォーメーションを推進したい企業に最適です。

富士通は、ハードウェアからソフトウェア、クラウドサービスまで、ワンストップで提供できる強みがあります。既存システムとの連携にも強みを持っています。

日本IBMは、グローバルな知見と日本市場への深い理解を併せ持ち、大規模システムの構築や運用に実績があります。

電算システムHDは、2027年12月期に連結売上高1,000億円を目指して事業拡大中です。中堅企業や地方企業にとって利用しやすい価格帯とサービスを提供しています。

SMSデータテックは、システム運用・保守を中核事業とし、ITサービスマネジメントの国際標準であるITIL®に準拠した高品質なサービスを提供しています。大手SIerをクライアントに持ち、24時間365日の監視体制で社会インフラを支えています。

ITアウトソーシングを導入すれば、ITシステムの運用で生じた問題を解決できます。ここからはITアウトソーシングを導入するメリットを以下のとおり5つ解説します。
ITアウトソーシングの活用は、自社でIT部門を構築するよりもコストを抑えられるため、容易に導入できます。
自社でIT部門を立ち上げる場合、人材の採用費用、教育コスト、設備投資、オフィススペースなど、多額の初期投資が必要です。一方、ITアウトソーシングは企業が必要な時に必要なリソースだけを利用できるため、固定費を変動費化でき、コストの最適化が図れます。
実際に初期投資が低いことで、上司や経営層から決裁を得るハードルも下がり、導入がしやすくなります。低コストで自社内のシステムを適切に運用できるのが、ITアウトソーシングの大きなメリットの1つです。
ITアウトソーシングを活用すれば、専門家の知識と経験により、システムの品質が大幅に向上します。
アウトソーシング業者は、多様な業界・企業でのシステム構築・運用の実績を持ち、ベストプラクティスやノウハウを蓄積しています。また、最新のIT技術を常にキャッチアップし、技術者の育成にも力を入れているため、高度な専門知識を持った人材がプロジェクトに携わります。
その結果、セキュリティが強固になったり、システムの稼働速度が向上して業務が円滑に回ったり、障害発生率が低下したりと、様々な恩恵を受けられます。逆に古い仕様のシステムや専門知識不足の運用では、セキュリティリスクの増大や業務効率の低下といった事態が起こりかねません。
専門的な知識を持ったITアウトソーシング業者を活用すれば、質の高いシステムを導入・運用でき、結果として生産性の向上につながるでしょう。
ITアウトソーシングを活用すれば、社員が本来注力すべきコア業務に専念できるようになります。
IT系の業務は専門性が高く、時間と労力を要します。システムトラブルの対応やメンテナンス作業に追われると、本来の業務である製品開発、営業活動、顧客対応などが疎かになりがちです。実際に担当者がシステム対応に追われてしまうと、担当者が兼任している他の業務が滞ってしまい、会社全体として生産性の低下に繋がってしまいます。
ITアウトソーシングに委託すれば、IT業務から解放され、社員は自社の競争力を高める業務に集中できます。これにより、企業全体の生産性向上と事業成長の加速が期待できるのです。
ITアウトソーシング業者の多くは、24時間365日のシステム監視・運用サービスを提供しています。
夜間や休日にシステム障害が発生した場合でも、即座に対応できる体制が整っているため、ビジネスへの影響を最小限に抑えられます。自社でこのような体制を構築するには、シフト勤務の人員配置や夜間対応手当など、多大なコストと労力が必要です。
特にECサイトやWebサービスなど、24時間稼働が求められるシステムを運用する企業にとって、安定したサービス提供は顧客満足度に直結します。ITアウトソーシングを活用することで、限られたリソースでも高品質な運用体制を実現できるのです。
また、プロアクティブな監視により、問題が深刻化する前に対処できるため、システムダウンのリスクも大幅に低減できます。
ITアウトソーシングは、ビジネスの成長や変化に応じて、柔軟にリソースを調整できるメリットがあります。
事業拡大時には迅速にシステムリソースを増強でき、逆に縮小時には無駄なコストを削減できます。自社でIT部門を抱えている場合、人員の増減は容易ではなく、採用や解雇には時間とコストがかかります。
また、季節変動が大きいビジネスや、新規プロジェクト立ち上げ時など、一時的にITリソースが必要なケースにも対応しやすくなります。必要な期間だけサービスを利用し、プロジェクト終了後は契約を縮小するといった柔軟な運用が可能です。
このスケーラビリティにより、企業は変化の激しいビジネス環境に素早く適応でき、競争優位性を維持できるでしょう。

ITアウトソーシングは良いことばかりかというと、決してそうではなく、デメリットもあります。しかしデメリットに対する対策を施したうえで導入すれば、安心して利用できます。
ここではITアウトソーシングのデメリットを以下の通り2つ挙げつつ、その対策も併せて解説します。
システムを外部に委託することで、委託先から外部へと、社内の情報が漏洩してしまうリスクがあります。個人情報をはじめとした、重大な情報を管理しているシステムを委託する際には、より慎重に対応しないといけません。
そのためITアウトソーシングを利用する際は、
などの対策を取って、情報漏洩を防ぐようにしましょう。
⇒メールアドレスを入れるだけ!自社の漏洩状況をチェック!
社内にITシステムに関するノウハウが蓄積しないことも、ITアウトソーシングのデメリットです。
ITアウトソーシングで委託先が携わる工程の範囲が広いほど、社内にノウハウが蓄積されず、トラブルが起きた場合に対処できないリスクがあります。そこでITアウトソーシングを委託する際は、万が一トラブルが起きた際に社内でも対処できるように、以下の方法を取りましょう。
上記の方法を委託先に行ってもらえれば、万が一トラブルが起きた場合に、自社社員だけでも対処できるようになるでしょう。また、将来的な内製化の検討も容易になります。
ITアウトソーシングを成功させるためには、計画的な導入プロセスが重要です。ここでは、導入を検討する段階から実際に運用を開始するまでの具体的な以下のステップについてそれぞれ解説します。
ITアウトソーシング導入の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。
実施すべき分析項目は次の通りです。
この分析により、「どの業務を外部に委託すべきか」「内製すべき業務は何か」が明確になります。また、現状の課題を数値化することで、アウトソーシング後の効果測定の基準を設定できます。
経営層、IT部門、業務部門など、関係者全員で現状認識を共有し、ITアウトソーシング導入の目的と期待する効果を明確にすることが重要です。
現状分析の結果を踏まえ、具体的な委託範囲を決定します。
委託範囲の決定ポイントは次の通りです。
委託範囲が決まったら、詳細な要件定義を行います。
要件定義の主要項目は次の通りです。
要件定義は曖昧にせず、具体的かつ測定可能な指標を設定することが重要です。これにより、業者選定の際の比較基準が明確になり、運用開始後のトラブルも防げます。
要件定義が完了したら、業者選定と契約プロセスに移ります。
1. RFP(提案依頼書)の作成と配布
要件定義をもとに、複数の業者に提案を依頼します。自社の課題、求める成果、予算、スケジュールなどを明記しましょう。
2. 提案内容の評価
各業者からの提案書を、以下の観点で評価します。
3. プレゼンテーションと質疑応答
候補を絞り込んだ後、各業者にプレゼンテーションを依頼します。直接対話することで、提案書だけでは分からない対応力や相性を確認できます。
4. 最終選定と契約交渉
評価結果をもとに業者を選定し、契約条件の詳細を詰めます。
契約時の重要チェックポイントは次の通りです。
5. 移行計画の策定
契約締結後、スムーズな移行のための詳細計画を立てます。
6. キックオフと運用開始
関係者全員が参加するキックオフミーティングを開催し、プロジェクトの目的、役割分担、コミュニケーション方法などを確認します。その後、移行計画に沿って段階的に運用を開始します。
運用開始後も定期的なレビューを行い、サービス品質の確認と改善を継続することが、ITアウトソーシング成功の鍵となります。
ITアウトソーシングを利用すれば、コストを掛けることなく社内に最新技術の導入が可能になります。
自社のシステム担当者の手が回らない場合、人手が不足している場合には、ITアウトソーシングは心強い味方となります。さらに担当者が本来の業務に専念できるようになり、生産性の向上にもつながるでしょう。
弊社SMSデータテックでは、ITアウトソーシングサービスを提供しています。業務効率を上げたい、安いコストで最新技術のシステムを導入したい、等々システムに関する悩みがある時は、ぜひ一度ご相談ください。
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