FA機器とは?種類や活用するメリット・デメリット、導入ステップを解説

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fa機器

FA機器とは、製品の加工や組み立てなどの生産プロセスを自動化する機器のことです。労働人口の減少や企業間競争の激化により注目を集めています。FA機器を活用すれば、コスト削減や品質の安定、安全性の向上など多くのメリットを得られるでしょう。

本記事では、FA機器の概要や活用するメリット・デメリット、導入ステップについて詳しく解説します。FA機器について知りたい方、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

FA機器(ファクトリーオートメーション)とは

FA機器(ファクトリーオートメーション)とは

FA(ファクトリーオートメーション)機器とは、工場における生産プロセスを自動化する機器のことです。具体的には、材料の加工や部品の組み立て、製品の運搬などを担います。

ここからは、FA機器に関する以下の事項について詳しく解説します。

  • 注目されている背景
  • 歴史

FA機器が注目されている背景

FA機器が注目されている主な背景には、以下の2つがあります。

  • 労働人口の減少
  • 競争の激化

上記それぞれの理由について詳しく解説します。

労働人口の減少

FA機器が注目されている理由の一つは、労働人口の減少です。日本は少子高齢化が進むとともに、総人口・生産年齢人口が減少しています。以下は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が発表した総人口と生産年齢人口の減少ペースに関するデータです。

総人口と生産年齢人口の減少ペース

出典:人手不足は2030年時点で約700万人に~省力化投資・人的資本投資による生産性向上が課題~|みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

上記によれば、総人口・生産年齢人口は今後も減少を続ける予定で、その減少人数も増すと考えられています。また、同データによれば、2030年時点の人手不足は、約700万人規模に達すると推計されています。
参照:人手不足は2030年時点で約700万人に~省力化投資・人的資本投資による生産性向上が課題~|みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

日本を含め総人口・生産年齢人口が減少している国々では、省人化が可能なFA機器が必要です。

競争の激化

企業間の競争激化もFA機器が注目されている理由です。他の企業との優位性を確保する目的で、生産コストを下げるために日本のメーカーは、中国をはじめとするアジア諸国に生産拠点を移していました。しかし、最近は海外の人件費が高騰しており、以前と比べコスト削減効果が減少しています。

また、最近はコストで差を付けるのが困難になったため質を高める動きが加速しています。ただ、品質の向上を目指せば人件費や材料費などのコスト増加につながり、良い製品を生産しても販売することが簡単ではありません。低コストで効率良く質の高い製品を作るために、FA機器が重要となっています。

FA機器の歴史

ロボットなどのFA機器は最近登場したと考える方もいるかもしれませんが、FAの歴史は古く1950年代には金属の塊を板状に延ばす機械が登場していました。また、1965年頃に産業用ロボットが実用化され、1970年代の急速な技術革新でセンサーが取得した情報を基に制御を行うロボットが開発されています。

さらに、2000年代に入ると、製造プロセスをデジタル化・自動化する「インダストリー4.0」という概念が生まれました。AIやIoTなどの新たなテクノロジーも開発され、FA機器が進化しています。

FA機器の主な種類や役割

FA機器の主な種類や役割

FA機器には、主に以下の5種類が存在します。

  • 操作
  • 制御
  • 駆動
  • 検出
  • 表示

ここからは、上記それぞれの種類と役割について詳しく解説します。

操作

人がなんらかの操作を行うことにより、動作を開始するものです。具体的には、スイッチやボタン、タッチパネルを押したり、レバーを引いたりすることで、設備が稼働します。例えば、自動販売機では商品を選ぶスイッチやお釣りを受け取るレバーが該当します。

制御

特定の条件を満たした場合、動きを制御するものです。例えば、自動販売機では投入金額が商品代金を上回った場合に、商品スイッチが点灯する制御が行われています。事前に定められたルールに従い、動きがコントロールされています。

駆動

FA機器が適切に動作するために必要なエネルギーを供給する目的で、組み込まれた機能を制御して動かすものです。モーターや電磁弁、ヒーターなどに関する出力のON/OFF実施が該当します。例えば、自動販売機において飲み物を冷やしたり、温めたりするには温度調節が必要とされますが、そのヒーターなどを制御しているのが駆動です。

検出

センサーを活用して外部状況などを検出し、制御システムに伝えるものです。例えば、ロボットや生産ラインが問題なく動いているかを監視する画像認識が実装されたカメラなどが該当します。センサーが検出できるものは、温度・湿度や圧力、距離などさまざまあり、生産プロセスにおける効率の向上や安全の確保を担っています。人では察知できないものも検出可能で、不良品の検査などにも有効です。

表示

機器の異常など、状態を視覚的に伝えるものです。具体的には、ランプや表示灯、タッチパネルが該当し、異常・正常を伝える役割を担っています。表示により、客観的に状況を把握することができ、安全な機器の稼働が実現されます。

FA機器を構成する主なシステム

FA機器を構成する主なシステム

FA機器は、主に以下の2つを活用することで動作の実現や効率の向上を図っています。

  • 製造システム
  • 基幹システム

順に解説します。

製造システム

生産プロセスをサポートするもので、生産性の向上に役立っています。具体的には、以下が挙げられます。

種類 概要
APS 生産計画や製造スケジュールの管理を行うもの
CAD コンピューターで設計図や図面を作成するもの
CAM CADで作成した図面を基に素材を加工するもの
CAE コンピューター上で技術計算やシミュレーション、解析を行うもの
CAT 製品の寸法や形状、性能などをコンピューターで自動検査するもの
PLM 製品の企画や設計から生産・販売・廃棄までのライフサイクル全体を統合的に管理するもの
PDM 製品の企画や開発、設計に関連するデータを一元管理して、効率的に活用するもの

基幹システム

業務効率化をサポートするもので、主に以下の3種類が存在します。

種類 概要
ERP ヒト・モノ・カネ・情報などの企業におけるリソースを一元管理するもの
MES 生産ラインの各製造プロセスと連携して、作業手順管理や品質管理、保守管理などを行うもの
MRP 効率的に生産管理・在庫管理を行うもの

なお、ERPの詳細は以下をご覧ください。
⇒ERPとは?主な機能やメリット・デメリット、導入の流れと選定のポイントを解説

FA機器で活用されているテクノロジー

FA機器で活用されているテクノロジー

FA機器には多くの最新テクノロジーが活用されています。ここからは、以下のテクノロジーを紹介します。

  • IoTとAI
  • モジュール化
  • リモートメンテナンス
  • 協働ロボット
  • AGV(無人搬送車)
  • 作業支援カメラ
  • RFIDソリューション

IoTとAI

IoT(Internet of Things)とは、モノとインターネットがつながり相互に情報のやり取りを行う仕組みのことです。遠隔操作・モニタリング・データ通信などが可能となり、利便性や生産性・品質の向上、リアルタイムでの情報取得などが期待できます。

近年は、AIを搭載したIoTが登場しており収集したデータの効果的な活用も可能です。また、AIはIoTだけでなく多くの機器に実装され、業務効率化の実現に役立っています。
なお、IoTの詳細については以下をご覧ください。
⇒IoTとは?できることや導入のメリット・デメリット、活用事例を解説

モジュール化

モジュール化とは、製品やシステムを構成する部品・機能を独立した単位(モジュール)に分割する手法のことです。モジュールごとに開発・テスト・製造を行うことで、開発や保守の効率を高められます。

リモートメンテナンス

リモートメンテナンスとは、インターネットを利用して遠隔地にあるコンピューターやシステムの保守管理、故障時の調査などを実施する仕組みのことです。生産現場では、設備や機器の故障・トラブルが発生した際の原因調査・修理などに活用されています。エンジニアが直接現地に赴く必要がないため、コストや手間の削減が期待できます。

協働ロボット

協働ロボット(Collaborative Robot)とは、人間と同じ作業空間内で安全に共働できるロボットのことで、コボットとも呼ばれます。従来のロボットは、安全性を高めるために人から隔離して活用する必要がありました。協働ロボットは小型・軽量化されており、安価であるため導入しやすい点も特徴です。

AGV(無人搬送車)

AGV(Automatic Guided Vehicle)とは、床の磁気テープなどに基づき動作する無人搬送車のことです。人が運転しなくても自動で走行して、荷物の運搬などを行ってくれるため省人化に役立ちます。フォークリフト型や積載型、牽引型などさまざまなタイプが存在し、用途に合わせて利用可能です。

作業支援カメラ

作業支援カメラとは、従業員の動作や作業場所を撮影・チェックすることで、ミスの防止や安全性の向上に役立つテクノロジーのことです。事前に適切な作業やその結果を記録・登録しておけば、その情報と比較して問題がないかチェックされます。製造品の不良や部品の欠品がないか、作業手順が適切かなどのモニタリングに役立ちます。

RFID

RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を活用してICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術のことです。多数のICタグであっても、離れた場所から一度に読み取ることができ、瞬時になにかを判断可能です。

例えば、納品された段ボールに入った部品も梱包の外側から読み取り、なにかを把握できます。また、自動登録を行うことでどこに保管したかの記録や検索の効率化に役立ちます。

FA機器を活用するメリット

FA機器を活用するメリット

FA機器の活用により以下のメリットを得られます。

  • コスト削減
  • 生産性の向上
  • 品質の安定・向上
  • 安全性の向上

コスト削減

FA機器の活用はコスト削減につながります。生産プロセスの一部を自動化することにより、人件費を削減可能です。近年は、最低賃金も向上しており人件費が重い負担となっているケースがあるでしょう。人手不足が深刻化しているため、アルバイトやパートの採用も多くの手間とコストがかかります。

生産性の向上

生産性の向上もFA機器の活用メリットです。FA機器を用いて人が行っていたルーティンワークを減らせば、売上向上やコスト削減を目的としたコア業務に多くの時間を割けるでしょう。また、重いものの持ち運びなど負担が大きい作業の自動化で、集中力や体力の減少も抑えられます。

品質の安定・向上

FA機器の活用は品質の安定や向上にも役立ちます。設定や操作を間違えなければ、機械は事前に定められた通りの動きをします。人間と異なり、集中力が切れてミスが増えるといったこともなく、ヒューマンエラーの防止に効果的です。

また、技術承継にも役立ちます。日本では、技術者が高齢化して定年を迎えつつあり技術の承継が問題視されています。FA機器の活用は、属人化の防止につながり品質が向上するでしょう。

安全性の向上

FA機器の活用は、安全性の向上にもつながります。製造するものによっては、生産プロセスで重量物や有害物質を使うケースがあるでしょう。FA機器を用いることで、事故を減らすとともに従業員の精神的・肉体的負担を軽減可能です。

FA機器を活用するデメリット

FA機器を活用するデメリット

続いて、FA機器を活用する場合の以下デメリットについて解説します。

  • コストの発生
  • 故障のリスク
  • 雇用減少の不安感

コストの発生

FA機器の導入・活用における最大のデメリットは、コストの発生です。導入・維持に多くの費用がかかります。さまざまなFA機器があり金額もさまざまですが、大型なものの中には導入だけで、数千万円から数億円程度必要とされるものもあります。導入する際には、削減できるコストと比較して慎重に検討しましょう。

故障のリスク

FA機器には、故障や誤作動のリスクが存在します。故障や誤作動が発生すれば、大きな問題になるケースがあるでしょう。また、修理や復旧はベンダーに依頼しなければならず、多くの時間がかかる場合も存在します。費用がかかるとともに、生産ラインのストップで機会損失も発生します。

雇用減少の不安感

雇用減少の不安感誘発も、FA機器を活用するデメリットです。従業員の中には「自分の仕事がなくなるのではないか」と不安を抱く方もいるでしょう。FA機器の導入により一部の業務は自動化されますが、完全自動化になるわけではなく人の力も必要です。不安を抱く従業員に対しては、経営層が丁寧に説明を行い不安を取り除く働きかけを行いましょう。

FA機器の導入ステップ

FA機器の導入ステップ

FA機器の導入は以下の3ステップで進めます。

  1. 現状の把握を目標の明確化
  2. 導入計画の立案
  3. 導入・運用と改善

最後に上記の各ステップを紹介します。

1.現状の把握を目標の明確化

まずは、製造プロセスを分析して課題を把握しましょう。具体的には、以下を確認すると良いでしょう。

  • ボトルネックはないか?
  • 品質のバラツキは発生していないか?
  • 人件費などのコストが過剰に発生しているところはないか?

課題を整理したら、どの問題を解決したいかやFA機器導入の目的・ゴールを明確にしましょう。

2.導入計画の立案

続いて、導入計画を立案してシステムやベンダーの選定を行います。FA機器の中には、高額で導入に手間や時間がかかるものも多く存在するため、システム・ベンダーの選定は慎重に行いましょう。選定時には以下項目のチェックがおすすめです。

  • 自動化したい業務に適しているか?
  • 必要な機能が実装されているか?
  • 既存設備や導入予定の設備と連携可能か?
  • ベンダー・ツールの実績は豊富か?信頼性に問題ないか?
  • アフターメンテナンスやサポートは充実しているか?

FA機器は一度導入して終わりではなく、継続的な改善などの取り組みが必要とされます。長期的な連携を前提に、サポートを受けるベンダーを選定すると良いでしょう。

3.導入・運用と改善

実際に導入して活用します。また、定期的に問題がないかや期待する成果が得られているかを検証しましょう。問題がある場合は、ベンダーと相談しながら改善を行います。また、FA機器を操作する従業員に対する教育も欠かせません。PDCAを回すことで、得られる効果が高まります。

まとめ

まとめ

FA機器とは、材料の加工や部品の組み立て、製品の運搬など工場における生産プロセスを自動化する機器のことです。日本では少子高齢化が進むとともに総人口・生産年齢人口が減少しており、省人化が求められています。また、企業間競争が激化しているため、FA機器が注目を集めています。FA機器を活用すれば、コスト削減やコスト削減や品質の安定、安全性の向上など多くのメリットを得られるでしょう。

近年は、FA機器をはじめ多くのテクノロジーが生まれています。上手な活用は、人手不足の解消や企業競争力に役立つ業務効率化に有効です。FA機器などのツールも上手く活用して、業務効率化を実現しましょう。

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