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医療業界の自動化|RPA導入のポイント、メリットや導入事例をご紹介
以前より人手不足を深刻な問題とする医療分野ですが、医療の2024年問題がその危機にますます拍車をかけると予測されています。人的リソースの不足は、日本の人口減少が背景にあるため、簡単に解消されるものではありません。
そこで大きな注目が集まるのがIT・デジタル技術の活用と自動化です。医療DXにより医療現場の多様な業務を効率化および自動化し、人手不足問題に対処することが可能であり、ひいては継続的に社会に医療を届けるための手段ともなります。
本記事では、医療分野における課題とその解決策としての自動化について解説します。具体的な業務での利用事例や活用可能な技術も紹介していますので、自動化を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
医療業界における課題
医療業界において、広く認識されている課題には下記が挙げられます。これらの課題は以前より潜在的に存在していましたが、大規模なパンデミックの発生により多くの現場で鮮明になっています。
人材不足
医療の現場では、患者に対応するために人手が必要です。慢性的に人手不足が叫ばれてきましたが、国内の人口減少により労働人口も減少し、人手不足が加速する事態となっています。
長時間労働
医療現場の中には、緊急医療や入院患者への対応などに伴い、シフト制の勤務となっているところも存在します。先の人手不足と併せて、長時間労働が発生していることも珍しくありません。
ただし、業務の特性上、単純に業務時間を減らすと医療現場での人手不足と直結してしまうため、長時間労働を解決するための方策が必要となります。
需要拡大
国民の平均年齢の上昇に伴い、医療機関の需要は増加することが予測されます。特に団塊の世代が後期高齢者となる2025年前後に大きく需要が増加することが以前より予測されていました。これに加えてCOVID-19などの新型の感染症の登場などでさらなる需要拡大の可能性もあり得ます。
経営悪化
医療団体の経営悪化も大きな課題です。「2023 年度病院経営定期調査 概要版-中間報告(集計結果)- 」(一般社団法人 日本病院会、公益社団法人 全日本病院協会、一般社団法人 日本医療法人協会)によると、2022 年に医療利益が赤字となった病院は74.2%に上ったことが報告されています。複数の要因が病院の経営を圧迫していると考えられます。
- 人件費や採用費の増加
- 物価上昇
- COVID-19による影響
医療業界の課題解決策としての自動化とは
前項で挙げた医療業界の課題について、有効な解決策と考えられるのがIT・デジタル技術の活用による自動化です。医療業界における様々な業務の効率化を図ることができるため、人材不足や長時間労働の解消、需要拡大や経営悪化への対応についても効果が見込めます。
例えば、カルテや診療報酬などに関する情報の入力業務にはRPA(詳細後述)を用いることで人間の行っていた作業を自動化することが可能です。また、検査や診療では順序の管理や案内が発生しますが、システムの導入によって自動化することも望めます。
ただし、注意点として、医療という業務特性を考慮して適用範囲には十分な検討が必要です。安全性の確保、患者のメンタル面のケア、法対応などに注意が必要でしょう。
医療業界で自動化できる業務12選
医療業界の具体的な業務について、自動化が可能と考えられるものをピックアップしています。
診断支援システム
診察や診断において、過去のデータを参照して支援する仕組みを取り入れることで効率化が図れます。同じ症状、病名などのカルテの情報を集め、診断の支援を図れるでしょう。
患者管理システム(電子カルテ)
カルテを電子化することも各種業務の自動化に繋がります。既往歴や画像データなどを紐づけて管理することで、再度確認する際には自動化を適用できます。
カルテ情報の電子カルテシステムへの取り込み
電子カルテシステムを導入する際の、既存のカルテをシステムに取り込む業務も自動化が可能です。OCRによる読み取り、AIによる文章補正、電子カルテシステムへのデータ連携などで業務を効率化できます。
薬剤管理
診療に利用する薬剤の管理も自動化が可能です。一定量の利用があれば自動発注する仕組みを取り入れておくことで、効率的に管理できるでしょう。
診療予約管理
診療の予約、受け付け、呼び出しなどの管理業務も自動化が可能です。予約時に問診票の入力や既往歴なども入力できる仕組みも登場しています。
検査結果の登録・管理
機器を使った検査結果の記録・管理も自動化が可能な業務です。自動化することで人的ミスを防ぐことにもつながります。
病床管理
病院経営で重要な要素となる病床の稼働についても、管理を自動化し効率化することができます。効率的に管理することで稼働率の向上にも貢献できるでしょう。
診療報酬明細作成業務
診療報酬明細(レセプト)の作成も医療機関では避けられない業務ですが、自動化・効率化を図ることができます。診療内容の入力補助、電子カルテとの連携などがそのための手段となります。
患者の状態観察
入院中の患者の定期的な状態観察(バイタルチェック)も自動化することができます。ウェアラブルデバイスによる測定とIoTによる連携などで自動化し、業務負荷の削減が可能です。
緊急連絡体制
医療業務では、緊急事態に連絡・招集を行う場合もあるでしょう。その際の連絡方法についても、効率化・自動化を図れます。担当者へのエスカレーションやナースコールなどもシステム導入により利便性が高められます。
経費精算や給与算出
経費精算や給与算出については、医療業界に限らず効率化・自動化が図られている分野です。給与計算については勤怠の管理と連携することで完全な自動化が可能です。
各種データの集計・統計
医療業務で発生するデータの集計・統計も自動化が図りやすい業務です。検査結果の集計であれば、検査データを持つ仕組みとの連携により飛躍的に業務を効率化できるでしょう。
医療業界のRPA導入メリット
医療業界の業務では、RPAを用いた自動化が有効なシーンが多数存在します。比較的小規模な業務から取り入れることができるため、気軽に取り組みやすい手法といえます。
RPAについては、下記の記事でも記載していますのでご参照ください。
➡「RPAとは?ビジネスにおける活用事例やおすすめのツールを解説」
医療の自動化を図ることは、医療業界にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。代表的なメリットを下記に挙げます。
業務の効率化・自動化
各種業務の効率化または自動化を図ることができます。必要となる人的リソースが減るため、業務運営上の大きなメリットとなります。
人的作業によるミスの削減
自動化を用いることで、人間の作業によるミスを削減することにもつながります。人間が手で行う入力では、ミスが発生する可能性が常に残りますが、自動化によりコンピュータに行わせることでミスを減らすことができます。
従事者の負荷軽減
業務が効率的になることで、医療従事者の負荷軽減につながります。長時間労働や人員不足により負荷が高い現場にとって大きなメリットとなります。
医療業界のRPA導入事例
医療業界でのRPAの導入事例を紹介します。
済生会熊本病院
済生会熊本病院では、DX推進のためにローコード開発機能を持つRPAのロボオペレータを導入し、1,829名分の予約処理において46時間の削減に成功しています。パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社がロボオペレータの導入および支援を行い、病院内でのRPA処理(ロボット)内製化を実現しています。
奈良県総合医療センター
奈良県総合医療センターでは、パソコンを使った定型業務の自動化に向けてRPAツール「WinActor」の導入を行い、既存の医療用システムに影響なく業務の効率化に成功しています。定型業務の作業時間を削減し、スタッフが患者と向き合う時間の増加、医療の質の向上に繋げています。2〜3時間かかっていた臨床検査部のリスト作成業務を約10分に縮めるなど、計7業務に適用し、年間1,000時間の削減効果が試算されています。
弊社SMSデータテックでもRPA製品「 WinActor ®」を取り扱っております。RPA・AI-OCR導入支援では、RPA導入にまつわるコンサルティングから開発、運用まで、トータルでサポートし、RPAに関わる様々なお悩みを解決します。
名古屋大学医学部付属病院
名古屋大学医学部付属病院では、RPAテクノロジーズ株式会社が提供するRPAツール「BizRobo!」を導入し、医師の勤務時間の計算を自動化しました。従来、月に400枚、1枚2分程度かかっていた作業を自動化することができ、年間で約160時間の削減に成功しています。さらに様々な部門、業務に展開し、年間で9,800時間の削減効果を見込んでいます。
医療業界でRPAを導入する際の注意点
医療業界の業務にRPAを導入する場合、注意点もあります。特に医療ならではの、患者との直接的な接触があること、個人情報を取り扱うこと、安全性の重視される仕事であることなどの点には細心の注意が必要です。
技術的障壁とその克服方法
RPAの導入と活用では、利用者となる医療施設の所属員がRPAを使いこなす必要があります。
これまで、IT・デジタル技術を使ってこなかった人員が利用する場合、技術的、心理的な障壁を乗り越えて使いこなせるまで成長することが必要となります。ITベンダーのサポートなど、解決の方法を用意することも重要です。
組織文化の変革と従業員の教育
長い歴史を持つ病院や団体では、組織の文化が根強く、新たな技術の活用を受け入れない場合もあります。体質的な問題として諦めてはならない点で、現在の業務における課題とデジタル技術の活用による今後や将来について説明し、教育の場を根気強く持ち、技術の活用を浸透させる必要があります。
データプライバシーとセキュリティの確保
業務上、患者の個人情報を取り扱う機会が多く、データに対するプライバシー意識やセキュリティの確保は必須のポイントです。技術の活用とともに、ITに関するリテラシー、セキュリティ意識の向上も同時に行わなければなりません。
機能性だけでなく、本来の目的を果たすための製品選定
医療業界に限ったことではありませんが、技術の導入は目的ではなく手段です。あくまで本来の目的を達成するための手段として製品を選定することが大切です。もともとの目的が業務の効率化、自動化、内製などにある場合、その実現ができる製品という観点で製品やベンダーを選定しましょう。
医療業界でRPAを導入する際の成功ポイント
医療業界で業務にRPAを導入する場合の、成功するためのポイントを紹介します。
目標設定と計画立案
RPAを導入してその成果を確認するためには、具体的な目標設定を行う必要があります。「XX業務のコストX%削減」、「XX時間分の作業短縮」などの目標を立て、目標に向けて導入・組織内での普及・活用に関する計画を立てましょう。
また、目標設定、計画立案時点では目標が達成可能な、妥当な値になっていることも試算しておきます。
適切なテクノロジーパートナーの選定
RPAには様々な製品があり、導入にあたってはITベンダーなどのテクノロジーパートナーと協力することが一般的です。利用環境の整備や製品のセットアップ、カスタマイズなどについて、ノウハウを持ったパートナーと組むことでスムーズな組織内での活用に繋がります。また、RPAによるロボット(処理)の作成や社内での利用に関する教育なども必要に応じてパートナーの支援が利用できます。
実装フェーズと評価フェーズ
RPAを利用できる環境ができたら、ロボット(処理)を作る実装フェーズに取り掛かります。特に組織内での内製化を目指す場合には、ノウハウを蓄積して社内で業務を完結できる状態を目指す必要があります。
また、RPA導入前に対象の業務に関わる作業の時間やコストを計測しておき、RPAを用いた後の値と比較を行う評価フェーズも用意しておきます。実際の成果により導入の成否を確認し、以降の展開などに活かすことが重要です。
まとめ
医療業界は人口減少などによる人手不足を深刻な問題としています。そのための解決策として、業務の自動化が有望です。IT・デジタル技術の活用による医療DXにより、業務の効率化やコスト・作業時間の削減を望むことができます。
医療に関する業務の中でも、自動化や効率化が適用できるシーンは多数存在します。具体的な方策としては、RPAの導入による情報入力や管理の効率化、予約管理などのシステム化、IoTデバイス、ウェアラブルデバイスなどを活用した業務削減などが挙げられます。
もし、業務の自動化をどこから始めればよいのかわからない場合には、SMSデータテックの自動化コンサルティングの利用をご検討ください。ヒアリングから設計、ツールやアプリケーションの導入まで一貫したサービスを提供しています。多くの事例からRPAをはじめとした自動化技術に関するノウハウをご用意しています。お気軽にご相談ください。
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