小売業界のDX事例7選!実際にある課題やDXのメリットを紹介

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コンビニやスーパー、百貨店など小売業界では様々な課題に直面しています。特に人手不足は深刻で、働き方改革で業務を効率化するだけでは労働力が足りないのが現状です。
そこで業界全体で推し進めているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
本記事では小売業界のDX事例を紹介しつつ、業界の課題に焦点を当ててDXをするメリットなどを解説します。

小売業界のDXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとはデジタル技術を活用して組織やビジネスモデルそのものを変革することを指します。
似た言葉として「IT化」がありますが、IT化は既存の業務プロセスのまま業務を効率化し生産性を上げる取り組みです。
既存の延長にあるか、0から改革するかの違いがあります。

なぜDXに注目が集まっているか

DXに取り組むことで全く新しいビジネスモデルを生み出すことができ、競合と差別化を図れることから注目が集まっています。例えば、アパレル業界であれば、これまでは実店舗での販売が当たり前でしたが、最近はオンライン販売が主流となっています。中国ではLIVEコマースも広まっています。
このように「これまでなかったビジネスモデル」を確立することこそが競争の源泉になります。

小売業界の現状

小売業界の現状を見てみると、各業種ごとに異なる課題があります。

コンビニ

コンビニ業界は人手不足が深刻です。アルバイトが常に不足しており、1人あたりの労働時間が長くなってしまいます。労働環境に対して時給が低い傾向にあることも影響しています。加えて、最低賃金が上がっていることで経営に苦しむフランチャイズ店舗も多いです。商品管理においても、鮮度や在庫管理の難しさにより、無駄や廃棄も発生してしまいます。
他の業界よりもデジタル化が遅れているため各コンビニチェーンではDXに積極的に取り組んでいます。

百貨店

百貨店では新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けましたが、その後、特に高額商品の需要が好調でインバウンド需要の回復も見られるなど業界は着実に回復しています。各社は新しいビジネスモデルやデジタル化に着手していますが、リアル店舗の価値を見直し、百貨店の存在意義の再定義にも取り組んでいます。

スーパー

スーパー各社では、プライベートブランドはナショナルブランドに比べて高い粗利益率を確保できるため、多くのスーパーでプライベートブランド商品の開発に力を入れています。DXに取り組む店舗も多く、消費者が自分で会計をする「セルフレジ」やスマートフォンを活用した「レジGO」、AIカメラを活用したショッパー分析などが積極的に導入されています。

専門店

アパレル業界の場合、ユニクロやGUを中心にセルフレジが導入されています。商品タグにICチップが埋め込まれており、レジに通すと瞬時に会計ができる仕組みです。また、2020年6月にオープンしたユニクロ原宿店では着こなし発見アプリ「StyleHint」を体験できるスペースがあり、インフルエンサーやモデルの投稿写真が並んでいます。こうしたデジタルサイネージを活用することで、消費者に対して着こなしやトレンドを体験してもらう取り組みが進んでいます。

小売業界の今後の課題

小売業界の課題は「人手不足」と「商品のコモディティ化」の2つがあります。

深刻な人手不足

前項でもお伝えしましたが、小売業界では業務や店舗運営を行うために必要な人材が集まらず業務に支障が出ている状態がほとんどです。以前から人手不足は起きていましたが、コロナ禍以降、より顕著になっています。さらに、日本は少子高齢化が進んでおり、労働需要に対して見込める労働供給量が不足することが決まっています。
それだけではなく、若手を中心に金融やコンサルなど高年収の業界へ人材が流出しており、人手不足の深刻化が進んでいます。

出典:労働市場の未来推計2030

商品のコモディティ化

商材にもよりますが、多くの商品は機能や品質、ブランドなどの差がなくなり消費者にとって特徴がなくなりつつあります。
これを「コモディティ化」と言います。
特に日用品や生活必需品など必要不可欠な商品であればあるほどコモディティ化しやすく、競合差別化が難しくなってきました。コモディティ化した商品は付加価値を創出するために、ブランディングを強化したりコミュニケーション戦略が重要になってきます。

小売業界のDX具体例

ここからは小売業界のDX具体例を紹介していきます。

自動釣銭機付きPOSレジの導入:人手不足対策

これまでは店舗スタッフが操作するPOSレジが利用されていましたが、レジに配置できる人材が不足することもあり「自動釣銭機付きPOSレジ」が開発されました。
自動つり銭付POSレジは、店舗スタッフが操作するPOSレジと、消費者が会計をする精算機を別で設けています。そうすることで会計の効率を向上させながら、店舗スタッフの負担も軽減しています。

アプリ活用でオンライン接客対応:人手不足対策

まだ導入している企業が少ないですが、アプリやビデオツールを活用してオンラインで接客対応をしている企業もいます。
例えば、アパレル業界だとECサイトにオンライン接客の窓口を設置し、実店舗のスタッフが対応しているケースがあります。オンライン接客により消費者は店舗に行ったかのような購買体験ができます。
同じ時間でより多くの接客対応ができるため、ブランディングの一環としても有効です。

OMOを実践する:コモディティ化対策

OMOとはオンラインとオフラインを統合するマーケティングの手法を指します。
スマートフォンが普及したことでデジタルを活用した購買行動が増えたことで誕生した考え方です。
実店舗があるビジネスの場合、これまではオンラインとオフラインで在庫管理が別々でした。しかし、消費者はオンラインとオフラインを併用するため店舗側もオンオフがシームレスに繋がっている状態を作る必要があります。オンラインで購入した履歴が店舗にも共有され、次回にレコメンドされるなど様々な活用方法があります。

ECサイトを展開してデジタルマーケティング:コモディティ化対策

すでに実施している企業も多いですが、インターネット上で取引を行う「ECサイト」を活用してデジタルマーケティングを行うことも重要です。
実店舗だけでは商圏内でしかビジネスができませんが、ECサイトであれば世界に向けて販売することができます。今では越境ECとして国外に向けて販売する戦略を取っている企業もあるほどです。

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小売業界でDXをするメリット

業務の効率化ができる

スマートフォンが普及したことでデジタル活用が加速し、これまで使っていたシステムでは非効率な場合もあります。
特に、これまで人の手で行っていたデータの突き合わせ作業や伝票の転記作業などをデジタル化することで人為的なミスをなくすだけでなく、工数を削減し業務を効率化することができます。

コストの削減につながる

前述の通り、DXを推進することで業務を効率化することができます。業務を効率化することで、これまで複数名で行っていた業務を1人でできるようになったりなど、人件費の抑制に繋がります。それだけではなく、デジタル技術を活用して在庫や流通、仕入れを管理することで原価も抑制できます。
こうした結果、DX推進で費用はかかるものの中長期的に見ればコスト削減に繋がります。

ニーズにあった接客ができる

消費者によって求める接客は異なります。1から丁寧に教えてほしい人、自分で考えてから話を聞きたい人、ただ見に来ただけの人、こうした様々なニーズにあった接客ができるのもDXの特徴です。
例えば、ECサイトでオンライン接客を用意したとします。自分で全て調べて判断できる人には不要ですが、オンラインに慣れていないためスタッフのサポートが必要な人は利用するでしょう。
こうした些細な気遣いが信頼となり、長期的な取引にも繋がります。

在庫管理を効率化できる

気温や天候によって売れ行きが変わったり、時間帯によってピークが存在する商材の場合、これらを考慮して在庫を管理できるのが理想です。アナログで管理することは可能ですが、精度高く実行しようと思うと限界があります。
そこで、DXによって気候データや過去の購買データをもとに適正在庫で管理できると無駄な在庫をなくし効率化できます。

顧客情報などデータを有効活用できる

消費者や既存顧客の購買データをマーケティングや顧客対応に活用することで、LTVを改善したりロイヤルカスタマーを育成することができます。
どんなデータを収集するか、どのように分析するか等の設計は必要ですが、小売業界もデータを活用することでまだまだ拡大余地があります。

小売業界×DXの成功事例

ローソン

ローソンでは店舗に設置したカメラやマイクで、売場の通過人数やお客様の滞留時間、棚の接触時間、商品の購入率等を可視化し、POSの売上データを組み合わせることで様々な分析を行っています。
これらのデータをもとに売り場を改善し、売上の最大化を図りつつ、消費者にとっても買い物がしやすい売場の実現を目指しています。

出典:ローソンと日本マイクロソフト、AIやデータを活用した店舗のデジタルトランスフォーメーションにおいて協業

三越伊勢丹

三越伊勢丹ではリモート接客を一部店舗でスタートしています。本店と地域の店舗をリモートでつなぎ、お客様は地域の店舗にいながらリモート接客を受け、これまで本店に行かなければ購入できなかった商品のショッピングが楽しめます。

出典:デジタルを活用したシームレスな購買体験の具体例

無印良品

無印良品は「Instagram」とスマホ向けアプリ「MUJI passport」を活用することで売上が増加しています。これまでもSNSを積極的に活用しており、自社商品のアレンジレシピなどを投稿すると度々SNSで話題になっています。
また、「MUJI passport」はダウンロード件数が870万件、1人あたりの利用頻度が26回とロイヤルティの高い顧客も囲い込みができています。
SNS×アプリによるデジタルマーケティングの成功例と言えます。

出典:デジタル活用企業 1位は無印良品、2位マック

ユニクロ

ユニクロでは店舗で買ってもECで買っても履歴が残るため、店舗にきた消費者がECサイトで「いつどの商品をみていたか」が分かるようになっています。
国内ではあまり見られませんが、海外では店舗スタッフが接客時にこうした履歴を確認し、買い忘れをリマインドしたり商品をレコメンドしたりしています。

出典:ユニクロやナイキはすでに取り組んでいる! 店舗のデジタル化とデータ活用

IKEA

IKEAは郊外に大型店舗を構えるスタイルでしたが、都心部に人口が流入していることを踏まえて都心部型店舗をオープンしています。都心部ということもあり、オフィス家具のニーズが高かったり、在宅勤務をするための家具を探す方が多くいるようです。
しかし、都心部ではどうしても全ての在庫を抱えることができないため、都心部店舗で注文された商品の配送や、実店舗で手触りだけ確認してアプリ購入に繋げる取り組みを行い、消費者が大型店舗に足を運ばすとも商品を購入できる仕組みを整えています。

出典:イケア・ジャパン初の試み“都心型店舗”として誕生したIKEA渋谷のリニューアル背景

カルビー

カルビーでは各領域のID-POSデータを共通で分析できるよう取り組んでいます。これまでのPOSデータは「売れ方」が分かるデータでしたが、ID-POSデータは「購買者の買い方」が分かるデータです。
これによって、ショッパー分析がより高度にできるようになり、売り場改善や購買体験を向上させることができるようになりました。

出典:カルビーの「リテールDX事例」を紹介!

東急ストア

東急ストアでは、無人決済店舗「TOUCH TO GO」を運営しています。一般的な無人決済では、消費者が自分で会計するセルフレジタイプが主流でした。しかし、東急ストアでは消費者の事前登録が不要で導入のハードルが比較的低いウォークスルー型の無人決済を導入しました。
商品登録や故障など改善余地はあるようですが、従業員の労働時間を改善するための取り組みとして注目を集めています。

出典:東急ストア「リテールDX」の取り組み

小売業界でDXをするときのポイント

目的とゴールを決めて推進する

DXを進める際には、まず明確な目的とゴールを設定することが必要です。顧客体験の向上、オペレーションの効率化など目的は様々ですが、目的とゴールを決めることで意思決定や比較検討を行いやすくなります。
また、DXのためにシステム導入をする場合もあるかと思いますが、ただ単にシステムやサービスを導入することではなく、そのシステムを通じて達成したい具体的なビジネス上の成果を明確にすることが重要です。

DX人材を確保しPDCAを回す

DXの推進には専門的な人材が不可欠です。専門知識を持つという意味だけでなく、経営者と合意を得たり社内調整ができるようなポータブルスキルも求められます。
また、DXプロジェクトは1回で完了するものではなく、継続的な改善が求められるため、PDCAサイクルを回すことが重要です。計画を立て、実行し、結果を検証し見直すことで、本当の意味でDXを実現できます。

効果検証ができる環境と方法を確立する

大切なのが効果検証ができる環境と方法を確立することです。データ収集に必要なツールを導入したり、大量のデータを処理するための分析方法などを検討しましょう。
目標は売上や顧客満足度など具体的な指標を設定し、それらを定量と定性で測定することでDXの効果を客観的に評価しましょう。

まとめ

コロナ禍の影響で実店舗に打撃を受け、多くの企業がECサイトを活用してデジタルマーケティングに取り組んでいますが、小売業界の人手不足は深刻です。ただ単にデジタル化したりIT化するだけでは業界として成長していくことはできません。DXとして新たなビジネスモデルを確立したり、今の時代にあった販売方法を模索していくことが重要です。
ただし、DXを推進することが「目的」になってしまうと元も子もありません。目的と目標を定め、その手段がDXとなるよう会社全体で取り組んでいきましょう。

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