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医療AIとは?活躍が期待される分野と活用事例、メリット・デメリットを解説
医療AIとは、医療従事者が行う診断や治療、看護などをサポートするAIのことです。日本において、医療従事者の不足や都心部と過疎地における医療の地域格差など、多くの問題があります。医療AIの活用により、医療従事者の負担軽減や地域格差の是正、医療における質の向上などが可能です。
本記事では、医療AIの概要や活躍が期待される分野と活用事例、メリット・デメリットについて詳しく解説します。医療AIについて知りたい方はぜひ参考にしてください。
医療AIとは
医療AIとは、医療業界の業務サポートを目的に開発・利用されているAI(人工知能)のことです。診断や治療、予防など多岐に渡る範囲で活躍が期待されています。ここからは、医療業界でAIが求められている理由と国の施策について詳しく解説します。
医療分野でAIが求められている理由
医療分野でAIが求められている理由として、以下が挙げられます。
- 医療従事者の労働環境改善
- 医療における地域格差の是正
- 膨大な情報の存在
順に解説します。
医療従事者の労働環境改善
医療従事者が不足しており、厳しい労働環境となっています。業務は患者の診察や治療、看護だけではありません。記録や書類作成など、患者と直接関わらない業務も多く、長時間労働などの原因となっています。医療AIを導入して、業務の一部をAIに任せることで、労働環境の改善が期待できます。
医療における地域格差の是正
地域ごとに受けられる医療の格差が発生していることも、医療業界における課題の一つです。とくに、過疎が進んでいる地域では医療従事者が不足しており、必要な医療を受けられない可能性があります。医療AIの活用により、場所を問わず同じ医療を受けられる環境の整備が期待できます。
膨大な情報の存在
医学は日々研究されており、新たな治療方法や考え方が生み出されている点も医療AIが求められている理由です。最新の研究が医療の発展に役立っていますが、発表される論文数が多く、全情報のインプットは簡単ではありません。また、どの情報がどのような治療に有効かを判断することが難しいため、有効活用ができるとは限りません。医療AIの活用で、情報の整理や適切なタイミングで医療従事者への提示が可能となり、膨大な情報を効率的に活用できるようになります。
医療AIにおける国の施策
2017年に厚生労働省が開催した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」において、以下の分野におけるAI開発推進が提唱されました。
- ゲノム医療
- 画像診断支援
- 診断・治療支援
- 医薬品開発
- 介護・認知症
- 手術支援
参考:保健医療分野におけるAI開発の方向性について|厚生労働省
保健医療分野におけるAI研究開発の加速を目的に、医療系学部を有する大学や民間企業・団体などと協力し、必要な人材育成拠点の整備をサポートする「保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト」も行われています。
参考:保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト|文部科学省
医療AIの活躍が期待される分野や活用事例
実際に医療のどの分野でAIの活躍が期待されているのでしょうか。ここからは、活躍が期待される分野や活用事例について詳しく解説します。
画像診断サポート
画像診断のサポートは、医療AIにおいて最も早く活用が進んだ分野で、すでに多くの現場で利用されています。AIがレントゲンやMRIなどの画像から、疾患名や異常所見の候補を提示し、医師のサポートをしています。病気の早期発見や見逃し防止に役立つでしょう。
カルテの解析
人間が日常的に使う言語をコンピューターが解析・処理する自然言語処理技術が高まっており、カルテ解析にも役立っています。AIがカルテを読み込み、疾患の特定を行うテクノロジーが研究されています。
オンライン診断
オンライン診断も医療AIが活用される分野で、すでにアプリも提供されています。オンライン診断におけるAI機能を活用すれば、症状を入力することで病名の予測や近い病院の紹介をしてもらうことが可能です。また、医師からのオンライン診断と、処方箋の配達をしてくれるサービスも存在します。
ゲノム医療
ゲノム医療も医療AIの活用が期待される分野です。ゲノム医療とは、DNAに含まれている遺伝情報全体を網羅的に調べ、その結果を基にしてより効率的かつ効果的な病気の診断と治療を行う医療のことです。ゲノムには多くの情報が含まれており、人間が分析などを行えば膨大な時間がかかりますが、AIであれば短時間で問題を発見できるでしょう。これまでの医学では発見できない病気の原因がわかるようになります。
診療のサポート
診療のサポートにも医療AIが積極的に活用されています。とくに、注射・採血ロボットやスマートウォッチ、スマートスピーカーは現在開発が進んでいる分野です。AIのサポートにより、医療従事者の負担を軽減できるでしょう。
手術サポート
現在、日本では若手の外科医が減少しており、外科医の負担増加が大きな課題です。課題解決に向けた施策の一つとして医療AIが注目されています。具体的には、医療AIによる手術サポートや外科医の技術を継承する支援で活用が可能です。また、医療AIが最適な術式を提案することにより、患者の負担を減らした手術の実施にも役立っています。
異常察知
医療現場では、患者の転倒などトラブルが起こるケースも少なくありません。最近は看護師が不足しており、異常の発見が遅れれば大きな問題となるケースもあるでしょう。患者によっては自分でナースコールできない場合もあります。医療AIの活用で異常を察して、迅速で適切な対応の実施が期待されています。
医薬品の開発
医薬品の開発においてもAIは有効です。医薬品は治療において欠かせない要素の一つですが、実用化には長い歳月と多くのコストが必要です。また、開発に取り組んだとしても実用化されるものは多くありません。医療AIで疾患のタンパク質構造やバイオマーカー、重症度などのデータを効率的に収集・分析できれば、有効な新薬を迅速に開発できるでしょう。
レセプトの自動化
医療AIの活用が期待される場面は、直接的な医療行為だけではありません。診療報酬明細書の作成や医療保険に関する業務などの自動化も期待されています。事務作業の自動化は、ヒューマンエラーの防止や医療行為の充実につながるでしょう。
医療AIを活用するメリット
医療AIの活用には多くのメリットがあります。ここからは、医療AIを活用するメリットについて詳しく解説します。
医療従事者の負担軽減と業務効率化
医療AIを活用すれば、従来は人が行っていた仕事を一部実施してくれます。例えば、画像診断やカルテの分析、手術のサポートなどの利用により、現場の負担が軽減できるでしょう。また、事務作業を自動化すれば業務効率化にもつながります。
地域格差の是正
オンライン診断は都心部に居住していなくても利用できるため、医療行為における地域格差の是正につながります。また、医療AIによる診断や治療を受けられれば、医師不足が深刻化している地域であっても、質の高い医療行為を受けられるでしょう。
医療の質や精度の向上
医療AIであれば、画像やカルテなど複数のデータに基づく診断が可能です。医者とAIが協力した診断や治療方法の検討により、医療の精度が向上するでしょう。また、AI活用で業務が効率化した分の時間で医療行為を実施可能なため、質の向上も期待できます。
医療過誤の抑制
医療AIの活用は医療過誤の抑制にもつながります。重篤な症状の見落としを防ぎ、適切な医療行為ができるようになるでしょう。また、負担を軽減すれば、医療従事者の長期労働を防ぎ、適切な休暇が得られるようになります。疲労の蓄積は、ヒューマンエラーを起こす原因となるため、ミスの防止につながります。
医療AIを活用するデメリットと注意点
メリットがある一方でデメリットも存在します。ここからは、医療AIを活用するデメリットと注意点について詳しく解説します。
判断のブラックボックス化
医療AIに限らず、AIはインプットからアウトプットまでがコンピューター内部で完結するため、判断がブラックボックス化します。なぜその答えが出力されたかを把握できません。例えば、診断を行った際「10年以内にガンを発症する可能性がある」といった診断結果が出たとしてもなぜなのかがわからず、患者に対する明確な説明や治療ができない可能性があるでしょう。
誤診のリスク
AIも完ぺきではありません。誤作動や誤診のリスクが少なからずあるでしょう。全てをAIに任せてしまうと、医療ミスを引き起こす原因になります。医療従事者は医療AIに全てを任すのではなく、自分でもインプットをし続け、最終的な判断は自身で行うことが必要です。
責任の所在が不明確
万が一、問題が起きた場合、責任の所在が不明確な点も医療AIを活用する際の注意点です。例えば、誤診が起きた場合、責任は以下の誰になるかの判断が困難でしょう。
- AI
- 医療従事者
- AIを開発したメーカー
今後、法やルールの整備が求められます。
信頼性に対する懸念
AIの判断はブラックボックス化されるため、信頼性に対する懸念もあります。自信を持って活用できなければ、適切な効果は得られないでしょう。信頼性をどのように担保するかが求められます。
開発における課題
AIは事前に学習したデータに基づき回答をアウトプットします。正しいアウトプットを導くためには、大量かつ正確な情報のインプットが必要です。また、最新の事例データも学習させる必要があり、データ収集が簡単ではありません。インプットする症例データには個人情報も含まれるため、データの扱いには細心の注意が求められます。
医療AIの未来
医療AIは、医療従事者の業務効率化や都市部と過疎地域の格差是正に役立つでしょう。インターネット環境さえあれば利用することができ、将来的には日本だけでなく世界中とつなげた医療を受けられる可能性があります。開発者側が、いかに使いやすく有効なAIを開発できるかが重要です。
まとめ
医療AIとは、医療業界の業務サポートを目的に開発・利用されているAIのことです。ゲノム医療や手術サポート、医薬品の開発など、さまざまな場面での活用が期待されています。活用すれば、医療従事者の負担や地域格差の是正、医療過誤の抑制などが期待できます。
医療従事者の担い手が減少しており、AIなどを活用して負担を減らすことが重要です。AI導入は簡単ではありませんが、まずはできる範囲での業務改善に取り組むと良いでしょう。
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