インシデント管理・対策とは?実施メリットやステップ、成功させるポイントを解説

コラム

インシデント管理・対策とは、システムやセキュリティに関する問題の迅速な検知・対処を行うとともに、再発防止策を検討・実施することです。システムの安定性向上やトラブル回避などを目的に、多くの企業で実施されています。

本記事では、インシデント管理・対策の概要やメリットと問題点、実施するステップ・成功のポイントについて詳しく解説します。インシデント管理・対策について知りたい方、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

インシデント管理・対策とは

インシデント管理・対策とは、システムやセキュリティに関する問題の記録や対応、解決と再発防止に向けた対策を行うことです。近年、デジタルデバイスやツールの活用はビジネスに欠かすことができません。デジタルツールなどの利用率が増加するのにともない、サイバー攻撃も増えています。
万が一、システム障害が発生したりサイバー攻撃による情報漏洩が起きたりすれば、企業の信用やブランドイメージが低下して、顧客離れの原因になるでしょう。インシデント管理・対策を行い、問題の予兆を早期発見して迅速な対処で被害を最小化するとともに、再発防止に向けた対策が重要です。

ここからは以下の事項について解説します。

  • インシデントの概要
  • インシデント管理・対策の重要性
  • 問題管理との違い

インシデントの概要

そもそもインシデント(incident)とは、重大な事件に発展する可能性がある事象や小さな事件のことで、大きく以下の2種類に分類されます。

  • ITシステムにおけるインシデント
  • セキュリティインシデント

ここからは、上記の各種類について解説します。

ITシステムにおけるインシデント

ITシステムにおけるインシデントとは、システムの障害やヒューマンエラーによる問題のことです。例えば以下が該当します。

  • ネットワーク障害で従業員やユーザーのサービス利用が阻害される
  • サーバー障害でメールを送受信できない
  • アクセス集中による通信速度が低下する
  • ID・パスワードの入力ミスでロックがかかる

システム障害はビジネスに大きな悪影響を及ぼします。

セキュリティインシデント

セキュリティインシデントとは、サイバー攻撃や災害などに起因した問題のことです。具体的には以下が該当します。

  • 不正アクセスによる情報の窃盗や改ざん
  • ウイルスなどのマルウェア感染によるシステム・デバイスの乗っ取り
  • 地震や落雷、火災などによるデータの消失
  • メールの誤送信

近年は、プライバシー保護に関する注目が高まっており情報漏洩などが起これば、事業の継続が困難になるケースもあります。

インシデント管理・対策の重要性

インシデント管理・対策が重要なのは、被害が拡大した場合ビジネスに大きな悪影響があるためです。サービス提供が停止して、ユーザーに迷惑をかければ満足度の低下や顧客離れにつながります。医療システムなどが停止した場合は、人命に関わる恐れもあるでしょう。個人情報の漏洩は企業の信用を、機密情報の漏洩は競争力を低下させます。インシデント管理・対策による迅速な検知・対応は、企業の信用やブランドイメージを守り、事業を継続させるために必要です。

問題管理との違い

インシデント管理と問題管理は混同されがちですが、両者は対象とする範囲が異なります。インシデント管理では、発生したトラブルへの対処と解決が主な対象範囲です。一方、問題管理にはトラブルへの対処だけでなく、再発防止や改善策の実施も含まれます。

インシデント管理・対策が求められる代表的な項目

インシデント管理・対策が求められる代表的な項目は、以下の通りです。

  • ITシステムやサービスの運用
  • サイバーセキュリティ
  • 災害対応(BCP)
  • 法令とコンプライアンス対応

順に解説します。

ITシステムやサービスの運用

ITシステムやサービスの運用で、インシデント管理・対策が求められる主な項目は以下の通りです。

  • システム障害
  • サーバーダウン
  • ソフトウェア・アプリケーションの不具合

障害に対して迅速な対応を行うことで、サービス提供や業務の継続が可能です。

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティにおけるインシデント管理・対策の主な項目は以下の通りです。

  • ウイルス・ワームなどのマルウェア感染
  • ランサムウェア
  • 情報漏洩
  • 不正アクセス
  • データの改ざん・削除

サイバーセキュリティに対するインシデント管理・対策は、企業の信用低下を防止します。また、セキュリティリスクの回避にもつながります。

災害対応(BCP)

地震や台風が多く災害大国といわれる日本では、災害対応(BCP)も欠かせません。万が一に備えて、異常の検知や復旧プロセスを事前に定めておくことで、被害の最小化・早期復旧が可能です。

法令とコンプライアンス対応

法令とコンプライアンスに対するインシデント管理・対策も求められます。近年は、新たな法律の施行や改正が頻繁に行われています。情報の収集と対策を行わなければ、罰金や刑事罰が科せられるでしょう。また、内部従業員が不正を行うケースが存在するため、コンプライアンスの強化・対応も欠かせません。

インシデント管理・対策を行うメリット

続いて、インシデント管理・対策を行う以下の事項について解説します。

  • ユーザーサポート担当者におけるメリット
  • マネージャーにおけるメリット
  • ユーザーにおけるメリット

ユーザーサポート担当者におけるメリット

インシデント管理・対策を行うことで、ユーザーサポート担当者の負担を軽減できます。過去に起きた事象や対処法・対策をデータベースに蓄積しておけば、ユーザーサポート担当者はユーザーからの問い合わせに素早く回答できるでしょう。情報がなければ、エンジニアやマネージャーなどさまざまな人に問い合わせて問題を解決しなければなりません。

マネージャーにおけるメリット

インシデント管理・対策によりユーザーサポート担当者の負担が軽減すれば、マネージャーは重要性の高いインシデントの分析や対処にリソースを割けるようになります。また、サービス強化にも時間を使えるようになり、品質や顧客満足度の向上を図れます。

ユーザーにおけるメリット

インシデント管理・対処が行われることで、ユーザーは安心してシステムを利用できます。システムが停止した場合、業務が滞ったり機会損失が発生したりするリスクがあるでしょう。問題が起きた際に迅速な対処や被害の最小化が行われることでリスクが抑制されます。

インシデント管理・対策のステップ

インシデント管理・対策のステップは以下の通りです。

  1. インシデントを検出する
  2. インシデントを分析して対処法を検討する
  3. インシデントに対処する
  4. インシデント管理を継続するとともに対策を検討する

順に解説します。

1.インシデントを検出する

インシデント管理・対策の第一ステップは、問題の検出です。問題を検出できなければ対処もできません。システムのアラート通知やユーザーからの問い合わせを基に、インシデントを検知しましょう。また、検知した際にはどのような経緯で発生したかの記録も実施します。

2.インシデントを分析して対処法を検討する

インシデントを検知したら、以下の項目を分析します。

  • 種類
  • 想定される影響や範囲
  • 緊急度
  • 対応の難易度

また、分析結果に基づき以下を含めた対処法を検討しましょう。

  • 対処手段
  • 復旧などにかかる時間
  • 対処する担当者

3.インシデントに対処する

システムの早期復旧に向け対処します。まずは、現場の担当者が対処を試みて困難な場合には、マネージャーや責任者にエスカレーションし解決にあたります。被害の最小化や損失発生防止には、迅速な対応が重要です。

4.インシデント管理を継続するとともに対策を検討する

問題の解決後も、インシデント管理を継続します。また、根本原因を解消する対策を検討しましょう。具体的には、セキュリティ対策ツールの導入やシステムの入れ替えを行います。

インシデント管理・対策における問題点

企業や組織の被害最小化などに効果のあるインシデント管理・対策ですが、以下の問題点が存在します。

  • 専門人材が足りない
  • 対策まで至らない

順に解説します。

専門人材が足りない

インシデント管理・対策を行うには、IT全般やセキュリティに関する専門的な知識・スキルを有する人材が必要です。ただ、近年はDXを推進する企業が多くIT人材の需要が増加している一方で、供給がおいついておらず、専門人材の確保が簡単ではありません。社内で育成するにも、多くの手間・コストがかかります。
インシデント管理ツールや外部パートナーの利用も視野に入れると良いでしょう。

対策まで至らない

インシデント管理により、問題の早期発見や対処を行っている企業は多数ありますが、根本的な対策まで至っていないケースも少なくありません。本質的な問題点の究明・解決や再発防止策の検討を行わなければ、同様の問題が発生する恐れがあります。
一時的な対処だけでなく、根本的な解決を図りましょう。

インシデント管理・対策を成功させるポイント

最後に、インシデント管理・対策を成功させる以下のポイントについて解説します。

  • 役割やルールを明確にする
  • ナレッジベースを作成する
  • インシデント管理ツールを用いる
  • アウトソーシングする

役割やルールを明確にする

インシデント管理・対策の成功には、役割やルールを明確にすることが重要です。事前にトラブル発生時のルールなどを明確にしておくことで、迅速な行動が可能になります。役割やルールを定めたら、従業員に周知しましょう。

ナレッジベースを作成する

発生したインシデントに関するナレッジベースを作成することも重要です。具体的には、以下を記録・蓄積すると良いでしょう。

  • インシデントの原因や影響範囲などの概要
  • 対処の手順やかかった時間、使用ツール
  • 再発防止に向けた改善点

情報を蓄積することで、同様のインシデントが発生した際に迅速な対処が可能になります。また、対処方法に関する属人化の防止にも有効です。

インシデント管理ツールを用いる

インシデント管理ツールを用いることも欠かせません。全システムの状況を人が監視するのは困難です。監視対象が多く見逃す恐れもあるでしょう。インシデント管理ツールを用いれば、アラートの一元管理や優先順位付け、自動対応が可能です。最適なインシデント管理を実現できるでしょう。

アウトソーシングする

インシデント管理・対策を成功させる上で、アウトソーシングの利用も良いでしょう。リソースが足りなければ、インシデントの発見や対処が遅れ、被害が拡大します。
また、対処や対策が可能な人材を確保できないケースもあるでしょう。アウトソーシングであれば、必要なときに迅速な専門人材の確保が可能です。

まとめ

インシデント管理・対策とは、システムやセキュリティに関する問題の記録・対応、解決と再発防止に向けた対策を行うことです。具体的には、サーバー障害や不正アクセス・情報漏洩、地震・落雷・火災などによるデータ消失への対処が該当します。インシデント管理と対策を行えば、システムの安定性向上やトラブル回避、信頼性の向上が期待できます。

ただ、インシデント管理と対策には専門的な知識・スキルを有する人材が必要です。近年は、IT人材が不足しており確保が困難なケースもありますが、アウトソーシングであれば容易に専門人材の協力を得られます。
弊社SMSデータテックでは、費用対効果の高い安定したシステム運用と継続的改善を実施する「システム維持管理」を提供しています。ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。

まずはお気軽にご相談ください
お問い合わせフォーム

おすすめイベント・セミナー 一覧へ