技術用語解説

AESとは?他の暗号化方式との違いや使用方法を解説

AESは共通鍵を用いた暗号化方式です。Wi-Fiのセキュリティ規格やファイルの暗号化など身近な通信環境で広く利用されています。AESが広く利用されている理由は強固な暗号化の仕組みです。AES暗号化を自社で取り入れて安全なシステム、通信環境を実現しましょう。

目次

  1. 1AESとは?
  2. 2AES暗号化が広まった理由
  3. 3AESの使用方法
  4. 4AESをより安全に利用するための対策
  5. 5まとめ

「AESはどんな暗号化だろう」
本記事ではAES暗号化が他の暗号化とどのように異なるのか解説します。AESは共通鍵を用いた暗号化方式です。AES暗号化を行うと、Wi-Fi通信やファイルの機密性確保を安全に実施できます。

当記事でAES暗号化について学び、自社のセキュリティ強化に繋げてください。

AESとは?

AES(Advanced Encryption Standard)は共通鍵暗号方式の一つです。

  • 暗号化と復号化のおさらい
  • アメリカの標準暗号方式として採用
  • 他の暗号化方式との違い

AES暗号化が安全だと認識され、広く用いられている理由を順番に確認していきましょう。

暗号化と復号化のおさらい

暗号化はファイルや通信のデータを解読されない形に変換する技術です。また復号化は暗号化されたデータを元のデータに戻す技術を指します。

送信者は、暗号化によって受信者にのみデータを解読できる状況を目指します。
例としてファイルを送る通信を考えましょう。ファイルを暗号化せずに送信すれば、途中で悪意のあるユーザーがファイルにアクセスする可能性が高いです。加えてファイルの中身を見られる、あるいはファイルの中身を改ざんされる場合もあります。

このような被害を防ぐため、送信者は見られても大丈夫な形式に変換し、ファイルを暗号化して送信します。受信者は届いたファイルを復号化し、ファイルの安全な受信が可能です。

アメリカの標準暗号方式として採用

AESはアメリカの標準暗号方式として採用されています。

従来、共通鍵暗号方式にはDES(Data Encryption Standard)が採用されていました。しかし、次第に通信技術やハードウェア技術の発展に追いつかなくなり、DESは次第に不十分な暗号化になっていきます。

その後2001年にアメリカの米国国立標準技術研究所(NIST)がDESの後継としてAESを採用しました。AESはDESの弱点を補強しており、2024年現在でも広く用いられている暗号化方式です。

他の暗号化方式との違い

AES暗号化が他の暗号化方式と異なる点を解説します。比較する暗号化方式は以下の2つです。

  • DES
  • RC4

それぞれ確認して、なぜAESが広く利用されているのか理解しましょう。

DES

DESとAESの違いは鍵長にあり、AESの方が長い鍵長を利用できます。

DESはAESが採用される前に広く用いられていた共通鍵暗号方式で、十分な安全性を確保できる暗号化として採用されていました。しかし、通信技術やハードウェア性能が向上し、DESの短い鍵長(56bit)による暗号化では、暗号化したデータ内容が読み取られる危険性が高い状況になっていきます。

上記の背景から鍵長が長い(128bit以上の)AESがより安全な暗号化方式として採用されました。

RC4

RC4とAESの違いは鍵長が自由か固定かの違いにあります。

RC4(Rivest’s Cipher 4)も共通鍵暗号方式の一つで、無線LAN通信のセキュリティ規格であるWEPや、SSL/TLS通信などに用いられており、鍵長を40~2048bitの間で自由に設定できます。

一見、AESよりもRC4の方が鍵長が長くて安全に見えるかもしれません。しかし、RC4はストリーム暗号化方式で、AESが行っているブロック暗号化方式とは異なります。この点でAESの方が強固な暗号化のため、AESが広く用いられるようになりました。

AES暗号化が広まった理由

AES暗号化が広まった理由は暗号化の仕組みにあります。具体的には以下の3つの理由です。

  • 暗号化のステップ数が多い
  • 共通鍵暗号方式
  • ブロック暗号化

順に確認しましょう。

暗号化のステップ数が多い

AESは鍵長に応じて暗号化のステップ数が多く、強力な暗号化を実現できます。AESはブロックに対して、以下の鍵長に応じたラウンド数分、暗号化処理を繰り返します。

鍵長(bit) ラウンド数
128 10
192 12
256 14

AESは各ラウンドで以下の処理を行います。

処理 内容
SubBytes ブロックのデータを16bitずつに分け、変換表を元に変換する
ShiftRows SubBytesの結果を4×4の行列に配置し、行ごとにシフトする
MixColumns ShiftRowsの結果と固定行列を掛け算する
AddRoundKey MixColumnsの結果と1ラウンド分の鍵でXOR演算する

ラウンド数が多くなるほど暗号化の回数が増えるため、解読されにくい暗号化が可能です。上記の暗号化アルゴリズムによる強力な暗号化により、AESは安全な暗号化方式として広く用いられています。

共通鍵暗号方式

AESは共通鍵暗号方式です。

共通鍵暗号方式は送信者と受信者が同じ鍵を使って暗号化、復号化を行います。一方で共通鍵暗号方式と対になる公開鍵暗号方式は公開鍵と秘密鍵の2つが必要です。共通鍵暗号方式は鍵の数が少ない分、計算コストが低いメリットがあります。

共通鍵暗号方式による高いセキュリティの実現が、AESが広まった理由の一つです。

ブロック暗号化

AESはブロック暗号化方式を採用しています。

ブロック暗号化方式の対になる技術はストリーム暗号化方式です。ブロック暗号化はブロックごとにデータを暗号化するため、順次暗号化を進めるストリーム暗号化よりも強力な暗号化になります。よって機密性が高い通信やファイルの暗号化にはブロック暗号化方式が用いられます。一方でブロック暗号化よりも計算時間が短くて済むため、リアルタイム性を求める通信にはストリーム暗号化が有効です。

RC4はストリーム暗号化方式で、AESはブロック暗号化方式です。機密性が高い暗号化方式としてAESは広く利用されるようになりました。

AESの使用方法

AESは安全性が高い暗号化方式として以下の通信や用途に用いられています。

  • Wi-Fi通信
  • インターネット通信
  • ファイル暗号化

それぞれどのように用いられているか確認しましょう。

Wi-Fi通信

Wi-Fi通信のセキュリティ規格であるWPA2やWPA3で、AES暗号化が利用されています。

Wi-Fi(無線)通信は不正アクセスを受けやすく、狙われやすい通信です。AESが施す強力な暗号化によって、通信の安全性を確保しています。Wi-Fi通信のセキュリティ規格はルーターや通信モードを指定する際にWPA2、WPA3を指定すると、AES暗号化の利用が可能です。なおWPA3の方が安全性が高いため、選べる場合はWPA3を選択してください。

危険性があるWi-Fi通信に安全性が高いAES暗号化を適用させてリスクを低減しましょう。

インターネット通信

インターネット通信ではSSL/TLSを利用するHTTPS通信でAES暗号化が用いられています。

SSL/TLSは通信の暗号化をするプロトコルで、その暗号化の際にAES暗号化が行われます。インターネット通信はHTTPまたはHTTPSで行われますが、SSL/TLSが適用されたHTTPSの方が安全な通信です。

インターネット通信でAES暗号化を利用するにはHTTPS通信をしましょう。HTTPS通信ができないWebサイトでは、安全性が未確認となるため注意が必要です。

ファイル暗号化

ファイルの機密性を維持するためにもAES暗号化は広く用いられています。ファイル暗号化によって、安全な送受信が可能です。
ファイルの暗号化をするためにAESを用いる方法として以下があります。

  • ファイル暗号化ソフトを使う(大抵はAES暗号化が行われる)
  • クラウドストレージにファイルを保存する(保存時の通信や保存後にAES暗号化が行われる)

安全にファイルのやり取りをするためにも、AES暗号化を行いましょう。

AESをより安全に利用するための対策

AESは強力な暗号化方式です。それでも不正アクセスやデータの流出のリスクがあります。特に共通鍵が流出してしまうと一気に危険な状況に陥ります。AESをより安全に利用するためには以下の対策を実施すべきです。

  • 強力なパスワードの設定
  • 多要素認証の利用
  • ファイアウォールやセキュリティソフトの導入
  • 従業員のセキュリティトレーニング

それぞれの対策について解説します。

強力なパスワードの設定

AESの鍵作成の際には強力なパスワードを設定すべきです。

AESは共通鍵暗号方式のため、鍵が流出してしまうと、暗号化はほとんど無意味になります。鍵自体に強力なパスワードを設定して、鍵の流出を防ぎましょう。
強力なパスワードの具体的な条件は以下の通りです。

  • 文字数が多い
  • 記号や大文字、小文字、数字が含まれている
  • 推測されにくい

多要素認証の利用

多要素認証の利用も、AESをより安全に利用するために重要です。

AES暗号化したデータへのアクセス時にパスワード以外の要素でも認証を加えると、より強力な暗号化が実現します。含めるべき認証の例は以下のとおりです。

  • 所有要素:ワンタイムパスワードなど
  • 生体認証:指紋や顔認証など

多要素認証を導入すれば、仮にパスワードが流出しても、暗号化されたデータにはアクセスできません。

ファイアウォールやセキュリティソフトの導入

ファイアウォールやセキュリティソフトなど、セキュリティ対策ソリューションの追加も有効です。

AES暗号化はデータが不正アクセスを受けても問題ない形にして、通信をします。しかし、不正アクセスの遮断、あるいは内部の攻撃や不正は検出できません。これらの脅威からデータを守るにはセキュリティ対策用のソリューションが必要です。

AESによるデータの暗号化だけでなく、セキュリティソリューションの追加で、より安全なシステムや通信環境を実現しましょう。

従業員のセキュリティトレーニング

セキュリティ対策として従業員のセキュリティトレーニングも重要になります。攻撃を受けた際に被害の大きさを決めるのはユーザーの行動だからです。

例として怪しいメールが届いた際に、従業員がリンクをクリックすれば、たちまちバックドアやマルウェアを仕掛けられてしまいます。これではAES暗号化をする前の時点でデータが流出してしまうでしょう。

従業員のセキュリティトレーニングで、社内のセキュリティ意識を高めておくことが、何よりも重要なセキュリティ対策です。

まとめ

 AES暗号化は共通鍵暗号化方式の一つです。以下の要素で安全性が高い暗号化を実現しています。

  • ブロック暗号
  • 長い鍵長

AES暗号化の高い安全性により、Wi-Fi通信やインターネット通信(HTTPS)、ファイルの暗号化など広い用途で利用されています。より安全性が高いシステムや通信の環境を実現するためには、基本的なセキュリティ対策に加え、セキュリティソリューションの導入をご検討ください。

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