ClaudeCoworkの教科書|B2Bマーケターが競合調査で押さえるべき4つのステップ

BtoBマーケティングにおいて、競合調査は重要ですが時間がかかる業務の代表格です。競合の機能、料金、訴求メッセージ、CTA、導入事例の変化を継続的に追うには、毎回同じような手順を繰り返す必要があり、担当者の工数を着実に削っていきます。

最近はChatGPTやClaudeなどのAIチャットを活用する人も増えていますが、「ファイルを毎回アップロードする」「URLを1つずつ渡す」「出力をコピペでスプレッドシートに貼り付ける」といった作業は依然として残りがちです。単発のAI質問では、業務プロセスとしての効率化までは届きません。

そこで今回は、Claude Cowork(以下、Cowork)を使って、自社のあるBtoB SaaS(以下、製品A)の競合分析レポートをどこまで自動化できるかを検証しました。本記事では、その手順と実際に使って分かった勘所をまとめます。

この記事がおススメな方

  • BtoB SaaS・サービスのマーケティング担当者
  • 競合調査を定期的に行っている方
  • AIを単発質問ではなく、業務プロセスとして組み込みたい方

なぜChat UIではなく「Cowork」で競合調査を行うのか

Claude Coworkとは

Claude Coworkは、Anthropicが提供するデスクトップ向けのAIエージェントツールです。チャットUIのように1問1答で答えるだけでなく、ローカルフォルダの読み書き、Web調査、ファイル生成といった一連の作業を、ひとまとまりのタスクとして任せられるのが大きな特徴です。エンジニアでなくても、部下に命令するように自然な言葉で依頼することができ、自分のPC上の資料とWeb情報を組み合わせて、業務単位でAIに作業を任せられます。

実践!製品Aと競合A〜Dを比較してみた

今回の検証は、自社のBtoB SaaS(製品A)を題材に、同カテゴリの競合サービス4社(競合A〜D)を比較する形で行いました。

項目内容
自社サービス製品A(BtoB SaaS、マーケ/営業関連領域)
比較対象競合A〜D(同カテゴリの主要プレイヤー)
目的マーケティング観点での競合比較と打ち手検討
成果物機能比較表、料金比較表、ポジショニングマップ、示唆サマリー、施策案

競合調査は「プロンプト」より「事前設計」で決まる

Coworkで競合分析を任せる際、もっとも重要なのはプロンプトではなく事前準備です。

AIに自由に調べさせると、比較軸が散漫になり、最終アウトプットが「それっぽいが浅いサマリー」になりがちです。これを避けるには、人間が先に「何を、どの観点で比較するか」だけ決めておく必要があります。

用意したフォルダ構成

検証では、以下のシンプルな構成にしました。

competitive-analysis/
├── input/
│   ├── 製品A_サービス概要.md
│   ├── 製品A_価格表.xlsx
│   ├── 競合リスト.md         # 競合A〜DのURL・基本情報
│   ├── 分析観点.md
│   └── 過去の分析メモ.md
└── output/

「input/」に判断材料となる資料を入れ、「output/」 を成果物の保存先として指定するだけのシンプルな設計です。ポイントは、入力と出力のディレクトリを物理的に分けておくことです。これだけで「成果物がどこにあるか分からない」問題が消えます。

分析観点.md の中身が成否を分ける

特に重要なのが「分析観点.md」です。今回は以下のような項目を事前に書き出しました。

# 比較観点
- 主要機能
- 料金体系・提供条件
- 対象企業規模
- CRM / MA連携
- レポート機能
- 導入支援・カスタマーサクセス体制
- セキュリティ対応
- LPの主な訴求メッセージ
- CTA設計(資料請求 / 無料トライアル / デモ予約 など)

ここを丁寧に書いておくと、Coworkが返してくる比較表のクオリティが目に見えて変わります。「比較軸の設計は人間の仕事、調査と整理はCoworkの仕事」という分業が、自動化のコツです。

実行前に「一緒にプランを練る」のがCoworkの作法

ここがCowork特有の使い方なのですが、いきなり「分析を実行して」と命じる前に、先にプランを相談するのがおすすめです。

Coworkはタスクを受け取ると、実行する前にまずプラン(手順案)を提示してくれます。これに対して、

  • 「比較観点XとYは順序を入れ替えてほしい」
  • 「料金は公開価格と要問合せを別カラムにして」
  • 「競合DはLPだけでなくプレスリリースも見て」

といった修正指示を実行前にぶつけられます。実行が始まってから差し戻すよりも、ここで擦り合わせた方が出力品質が安定します。

実務ではプロンプト送信後にこのプランが提示されるので、慌てず一度読み、納得してから「承認して進めて」と返すだけです。「使い方の型」として覚えておく価値があります。

Coworkに渡したプロンプト

事前準備ができたら、Coworkにゴールを伝えます。実際に渡したプロンプトは以下のとおりです(そのまま転用できる形にしています)。

input/ フォルダ内の資料をすべて読み込み、
競合リスト.md に記載された各社についてWeb調査を行い、
分析観点.md に沿って製品Aの競合分析レポートを作成してください。

成果物はすべて output/ フォルダに保存してください。

作成するもの:
1. 機能比較表
2. 料金・提供条件の比較表
3. ポジショニングマップ
4. 各社の強み・弱み
5. 製品Aの改善余地
6. 次に取るべきマーケティング施策案

情報が確認できない項目は、推測せず「不明」と明記してください。
作業に入る前に、まず実行プランを提示してください。

ポイントは2つです。

  1. 成果物のリストを明示する:何を作ってほしいかを箇条書きで指定すると、出力構成のブレがなくなります
  2. 「不明は不明と書く」ルールを入れる:これを書かないと、Coworkは公開情報がない箇所を”それっぽく”埋めてしまうことがあります

Coworkが実行した作業

プランの擦り合わせ後、Coworkは以下の流れを自律的に実行してくれました。

  1. 「input/」フォルダの資料を読み込み、製品Aと比較観点を把握
  2. 「競合リスト.md」を起点に競合A〜DのWeb調査を実施
  3. 比較観点ごとに各社情報を収集・整理
  4. 機能比較表・料金比較表をMarkdown/表形式で生成
  5. ポジショニングマップ用の整理データを作成
  6. 各社の強み・弱み、製品Aの改善余地、施策案をテキストでサマリー
  7. 成果物をすべて「output/」フォルダに保存

人間がやると地味に時間のかかる「読む → 調べる → 並べる → 表にする → 保存する」を、ひとまとめに任せられるのが大きな価値です。途中で「ここは違う」と思ったらチャット側から介入もできるので、「ある程度任せつつ、要所で口を出す」運用が現実的です。

成果物の中身(一部抜粋)

具体的な比較結果は伏せますが、出力されたファイルの感触をつかんでもらうため、構造とサマリの一部だけ公開します。

機能比較表(フォーマットのみ)

製品Aと競合A〜Dを縦横で並べ、対応状況を記号で整理。「output/feature-matrix.md」と「.xlsx」の両方が生成されました。実際の中身はこんな見た目です(評価値はマスキング)。

比較観点製品A競合A競合B競合C競合D
主要機能①
主要機能②不明
CRM / MA連携
レポート機能不明
公開料金ありあり要問合せあり不明

凡例:◎強い / ○対応 / △限定的 / ✕非対応 / 不明

料金・提供条件の整理

公開料金があるサービスとないサービスが混在するため、「公開/要問い合わせ/不明」を明示する形で整理されていました。競合の中でも価格戦略の考え方には明確な違いが出ており、製品AのプライシングLPを見直す材料になりました。

ポジショニングマップ

「機能網羅性」×「導入のしやすさ」の2軸で配置されたところ、競合A・Cは機能網羅型として右上、競合B・Dは導入容易性に振った左下、製品Aは中央やや右下という分布になりました。

イメージとしては以下のような配置です。

なお、後述するとおり軸の妥当性は人間レビューが必須です。

示唆サマリー(Cowork出力をベースに筆者整理)

成果物には1〜2ページの示唆サマリーが含まれていました。具体的な内容は伏せますが、構造としては以下のようなトピック粒度で書かれていました。

  • 競合A/Cは大企業向けの高機能化、競合B/Dは中小企業向けの低価格・短期導入を志向。市場が「機能厚め × 大企業」と「軽量 × SMB」の二極に寄っている様子が読み取れる
  • 製品Aは中規模企業向けのバランス型ポジションを取り得るが、現行LPでは訴求軸が機能寄りに振れすぎており、「導入の運用しやすさ」が伝わっていない可能性がある
  • 次の打ち手候補:①LPファーストビューの訴求軸見直し、②比較資料に「運用工数の差分」を追記、③ウェビナーでの導入事例コンテンツ強化

このレベルの初稿が出てくるので、チームでの議論のたたき台としてはかなり十分です。

実際に使って分かった注意点

ここからが本記事で一番伝えたい部分です。Coworkは万能ではありません。実務で使うなら、以下の点を理解しておくと事故が減ります。

1. 公開情報だけでは埋まらない項目がある

特に料金や詳細機能は、ログイン後にしか見られないSaaSも多く、「不明」が並ぶことは普通にあります。これは仕様であり、無理に埋めさせない方が品質は安定します。

2. ポジショニングマップの軸は人間が確認する

軸の取り方ひとつで結論が変わるのがポジショニングマップです。Coworkが提案した軸はあくまで叩き台として、最終的にはマーケ担当者が業界文脈で見直す前提で扱うべきです。今回も初稿の軸は1度差し戻し、業界の購買決定要因に近い軸へ調整しました。

3. 競合サイトの表現を鵜呑みにしない

公式サイトの訴求は当然ポジティブに書かれています。それをそのまま比較表に流すと、「全社が万能サービス」のような薄い比較になります。自社視点的な再評価を必ず一段階挟むのがおすすめです。

4. 戦略判断は人間の仕事

施策案は便利ですが、そのまま実行できるレベルではありません。製品Aの予算・リソース・優先度を踏まえた絞り込みは、最後まで人間の役割です。

Coworkは「調査と整理の初速を上げる存在」。戦略の意思決定そのものを置き換えるツールではない、と捉えると現場運用がしやすくなります。

次回からは”1行で済む”:Skillsで類似業務を量産する

ここまでの流れを1回限りで終わらせるか、毎月再現できる仕組みにできるかで、現場の効率は大きく変わります。

Coworkには Skills(スキル) という、再利用可能なワークフロー機能があります。今回の競合調査で得たノウハウ(フォルダ構成・観点の並び順・出力ファイルの命名規則など)をひとまとめにパッケージ化しておけば、次回からは「製品Aの競合調査をして」と言うだけで、同じクオリティの成果物が再現できるようになります。

つまりSkillsとは、「うまくいった調査プロセス」をテンプレ化して、類似業務を量産できるようにする仕組みです。一度作ってしまえば、競合調査だけでなくレポート作成・LP分析・営業資料更新など、フォーマットが似た業務にも横展開できます。

ただし、Skillsの作り方や、組織内での粒度・命名・運用ルールづくりは別の論点になってきます。「自部門で試したいが、まず何から作ればいいか分からない」「部門展開でつまずきそう」という方は、後述のClaudeCowork内製化支援もご検討ください。

まとめ:ClaudeCoworkは「便利なAI」ではなく「業務プロセス化できるAI」

最後に、本記事の要点を整理します。

  • ClaudeCoworkは「PC上の資料の読み書き」「Web調査」「ファイル生成」を一気通貫で任せられるため、競合調査のような業務単位の作業に向いている
  • 成功の鍵はプロンプトではなく事前設計。特に分析観点ファイルの精度が成否を分ける
  • 実行前にプランを擦り合わせるステップを必ず挟む
  • ClaudeCoworkは初稿作成と整理作業に強いが、比較軸の妥当性確認と戦略判断は人間の仕事
  • Skillという便利な機能を使えば、類似業務の量産も可能
  • Coworkは初稿作成と整理作業に強いが、比較軸の妥当性確認と戦略判断は人間の仕事

「AIで競合調査してみた」では終わらせず、自分の業務フローの中に組み込めるかを意識すると、Coworkの価値はぐっと立ち上がります。

マーケ担当者にとって、競合調査は今後ますます「人がやる作業」から「AIに任せて人がレビューする作業」へとシフトしていくはずです。本記事がその第一歩のヒントになれば幸いです。

ClaudeCoworkを自社の業務に組み込みたい方へ

弊社では、本記事のようなCowork活用の設計から、Skills整備・部門展開までを支援する 「Claude Cowork 内製化支援サービス」 を提供しています。「まず自部門で試したい」「すでに使い始めたが組織に広げる段階で詰まっている」など、フェーズに応じてご相談いただけます。無料診断で、貴社の業務・体制に合わせた活用可能性と課題を整理できますので、お気軽にお問い合わせください。

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