GAN(敵対的生成ネットワーク)とは?活用例や課題を解説

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GAN(敵対的生成ネットワーク)とは、役割が異なる2つのニューラルネットワークを競わせ、新しいデータを生み出す機械学習モデルのことです。データを生成するネットワークと、作り出したデータと実際のデータを比較するネットワークが相互作用することで、高精度のデータを作成します。

本記事では、GANの概要や活用例、2つの課題について詳しく解説します。GANについて知りたい方、活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

GAN(敵対的生成ネットワーク)とは

GAN(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)とは、2つのニューラルネットワークを競わせて新たなデータを生成させるモデルのことです。ニューラルネットワーク(neural network)とは、人間の脳神経細胞であるニューロンの動きを真似てAIにデータを処理させる技術のことを指します。GANは、2014年にイアン・グッドフェロー氏らが「Generative Adversarial Nets」という論文で発表しました。提唱された当初は、学習の不安定性などに問題がありました。ただ、研究やテクノロジーの進歩により、学習の安定性と生成データの品質が向上しています。

ここからは、以下の事項について詳しく解説します。

  • GANの仕組み
  • 代表的な4つの種類

なお、ニューラルネットワークの詳細を知りたい方は以下をご覧ください。
⇒ニューラルネットワークとは?仕組みや種類、主な用途を解説

GANの仕組み

GANは、以下の役割が異なる2つのニューラルネットワークを競わせる仕組みがとられています。

  • Generator(生成ネットワーク)
  • Discriminator(識別ネットワーク)

Generatorはデータを生成する役割があり、Discriminatorは生成データと実際のデータを比較する役割を担い、2つのネットワークが相互作用することで、より実際に近いデータを作り上げます。

代表的な4つの種類

GANと一言でいってもさまざまな種類が存在します。ここからは、GANにおける代表的な以下4つの種類について解説します。

  • バニラ GAN
  • 条件付き GAN
  • Deep Convolutional GAN
  • 超解像 GAN

バニラ GAN

バニラ GAN(Vanilla GAN)はもっとも基本的なモデルです。2014年にイアン・グッドフェロー氏らが提唱したシンプルなオリジナル構造ですが、他モデルの基礎となっています。画像や動画の生成で利用されている一方で、高品質画像や複雑なデータ生成は困難です。

条件付き GAN

条件付き GAN(Conditional GAN)は、生成したデータにラベルや属性などの条件を付与できるモデルです。例えば「トイプードル」「チワワ」「ミニチュアダックスフンド」など、Generatorに特定のクラスやテキスト情報を入力すると、それに応じた画像を生成してくれます。作成画像を指定したい際に有効なモデルです。

Deep Convolutional GAN

Deep Convolutional GAN(DCGAN)は画像生成に特化したモデルで、GeneratorとDiscriminatorには畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が用いられています。CNN(Convolution Neural Network)とは、畳み込み層やプーリング層などの独自構造を有しているディープニューラルネットワークのことです。画像分析において強みを有しており、一部が見えにくい画像でも解析可能です。CNNを用いることで、画像の空間的な特徴を捉えやすくなり、よりリアルな画像生成を実現しています。

超解像 GAN

超解像 GANS(SRGAN)は、品質の低い画像を高解像度なものに変換することを目的としたモデルです。従来、画像の高解像度化にはバイキュービック補完法が採用されていました。バイキュービック補完法とは、画像処理で周囲16画素の画素値を用いて補完を行う方法のことです。ただ、バイキュービック補完法では画像がぼやけやすい欠点があります。超解像 GANSであれば、ぼやけが少ない高解像度の画像へ変換が可能です。

GANの活用例

GANは以下の方法で活用可能です。

  • 画像生成
  • 高画質画像への変換
  • 画像のスタイル変更
  • 画像とテキストの合成
  • 動画生成
  • トレーニングデータの生成

ここからは、上記それぞれの方法について詳しく解説します。

画像生成

GANではテキスト情報を基に画像の生成が可能です。GANが登場した当初は粗い画像しか生成できませんでしたが、昨今は高品質画像の生成も可能になっています。具体的には「公園で犬がボールを追いかけている画像」とテキストを入力すれば、その内容に基づいた画像ができあがります。画像作成やデザイン制作の手間を大幅に軽減できるでしょう。音声入力できるGANも存在します。

なお、画像生成が可能なおすすめのAIを知りたい方は以下をご覧ください。
⇒【2025年最新】イラスト・画像生成AIツールおすすめ12選|無料・有料

高画質画像への変換

品質の悪いデータを高品質画像へ変換することも、GANでは可能です。例えば、古い写真やぼやけた画像を鮮明にしたい際に活用されています。また、デジタルリマスターや監視カメラ映像の改善などの分野でも用いられています。
さらに、サンプル画像を数点インプットさせれば、実際には存在しない特定の画像生成も可能です。例えば、数人の顔を読み込ませることで、現実には居ない人の画像を作成できます。

画像のスタイル変更

GANは、画像のスタイルを変更する際にも用いられています。例えば、写真をスケッチ風に変更可能です。また「ゴッホ風」や「ピカソ風」と指定してアート作品に変換でき、写真・画像の雰囲気を変えたい際や表現力を高めたいときに役立ちます。
画像全体のスタイルを変えられるだけでなく、一部のみの変更でもGANは有効です。具体的には、赤色のTシャツを着た男性の画像を、スーツを着た画像に変換できます。

画像とテキストの合成

画像とテキストの合成も、GANにおける活用シーンの一つです。GANを用いることにより、違和感なく調和のとれた画像とテキストの合成が可能です。例えば、画像内にキャッチコピーを挿入する際に活用されています。視覚的にインパクトのあるポスターや広告、SNS用の画像作成時に有効で、作業の手間軽減が期待できます。

動画生成

GANでは、画像だけでなく動画の作成も可能で、映画やゲームを作る際にも活用されています。例えば、架空のシーンやキャラクターが動くシーンをリアルに表現できます。また、手間やコストを抑えて作成できる点も魅力です。GANを用いれば、誰でも気軽に映像を作れるでしょう。

なお、動画生成が可能なおすすめのAIを知りたい方は以下をご覧ください。
⇒【2025年最新】動画生成AIおすすめ23選!無料・有料の注目ツールを比較&解説

トレーニングデータの生成

AI開発時のトレーニングデータ生成にもGANは利用されています。AIは学習すればするほど性能が向上します。例えば、製造現場で不良品を発見する画像認識AIは、良品・不良品の画像を大量にインプットさせることにより、精度の向上を図っています。
ただ、トレーニング用のデータ収集には、多くの時間や手間、コストがかかるでしょう。GANであれば、保有している画像を基に別の画像を作り出せるため、トレーニングデータの生成にも有効活用可能です。

GANにおける2つの課題

便利なGANですが、以下2つの課題が存在します。

  • 判断基準が不透明
  • 不具合の発生

最後に、上記それぞれの課題について詳しく解説します。

判断基準が不透明

GANの生成データに対する判断基準が明確ではありません。人間の価値観や考え方がさまざまであるため、データから感じるものが異なります。例えば、ある人は本物と酷似していると判断するかもしれませんが、別の人は違うと考えるケースがあるでしょう。

GANで作成したものか否かに関わらず、誰もが似ていると感じるものを生成することは困難であるため、GANが作り出したデータの有用性を疑問視する声も存在します。特に、医療や自動運転など人命・安全性に影響を与える分野では、活用に慎重な検証が必要です。

不具合の発生

不具合が発生する点もGANにおける課題の一つです。テクノロジーが進歩していますが、GANの使用がビジネスに最適かどうかを疑う者も少なくありません。

例えば、GANでは「勾配消失問題」と呼ばれるエラーが発生します。ニューラルネットワークの学習では、出力層から得られた結果を正解ラベルと比べ、出力結果と正解ラベルの差である「誤差」を算出後、その総和(損失関数)が求められ、その関数の傾きが「勾配」として用いられます。勾配消失問題とは、各層の勾配で小さい値が続いた場合、入力側付近の勾配はゼロと見なされ、学習が上手く進まなくなる問題のことです。

また「モード崩壊」も発生します。モード崩壊とは、AIが学習を重ね精度を高めた結果、理想とする特徴を持ったデータのみを生成する現象のことです。例えば、多彩な人の顔画像を生成しようと考えても、特定の顔ばかりが生成されるようになります。

まとめ

GAN(敵対的生成ネットワーク)とは、以下の役割が異なる2つのニューラルネットワークを競わせ、新しいデータを生み出す機械学習モデルのことです。

  • Generator:データを生成するネットワーク
  • Discriminator:生成データと実際のデータを比較するネットワーク

上記2つのネットワークが相互に作用することにより、データの精度を向上させています。2014年に論文で発表された当初は多くの課題を有していましたが、テクノロジーの進歩により多彩なシーンで活用されるようになりました。具体的には、画像・動画の生成やスタイルの変換、高画質画像への変換が可能で、映像・ゲーム・広告の作成に役立っています。

近年は、AIをはじめ多くのテクノロジーが生まれるとともに、性能が向上しています。上手な活用は、人手不足の解消や企業競争力に役立つ業務効率化に有効です。AIなどのツールも上手く活用して、業務効率化を実現しましょう。

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