運用・保守コストを削減!攻めのIT経営を行うにはどうしたらよいのか?

コラム
#システム運用

ITコストの中で、削減のターゲットになるのは、運用・保守のコストです。
海外の会社のITコストは、その半分が戦略的なITコスト・新システムの導入およびインフラの拡張または刷新のためのコストである(Flexera, 2021 State of Tech Spend Report)のに対して、日本のITコストはその60-70%が保守運用コスト、守りのITコストなのです。このことがDX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせとなっている今、どうしたら運用・保守のコストが減らせるのでしょうか。
運用・保守コストの膨張の原因と、その削減の方法に迫ります。

運用・保守コスト、なぜ高い?

日本企業の運用・保守コストは非常に高いとされます。ITコストのうち、60-70%を占めているため、戦略的なIT投資に費用を回すことができないのです。以下の要素が原因として挙げられます。

1.運用・保守業務が属人的

運用・保守業務にメスを入れるには、運用保守業務の可視化・標準化が不可欠です。
ところが、この部分が見えない・標準化されていない、となると、どの工程を削れるのか、検討がしにくいといえます。工程を削って、人件費を浮かせる見通しをつけることもままなりません。
さらに原因をさかのぼると、IT人員が不足しているのに対して、業務は圧倒的に量が多く、このアンバランスにより、構造的な問題を解決する暇もない、というのが現状です。個々人のスキルで太刀打ちできるレベルの人員不足ではないのです。

2.基幹システムを代表とするシステムの老朽化・複雑化

基幹システムは、ソフトウェアのプロダクトライフサイクルは標準的には5年であるのにかかわらず、10年、15年、もっと極端な場合、20年以上も使い続けている例もあります。バージョンアップ・カスタマイズ・サーバの増設を繰り返している間に、トラブル対応・保守対応などのコストが膨らんでも「入れ替えるともっとコストがかかるのでしょうがない」との判断が重なりがちです。
特に基幹システムがこのように長い間変わらないとすると、他の関連するシステム・インフラ・あるいは業務そのもののフローも刷新が難しくなります。結果、運用コスト・保守コストが割合的に増えてしまうのです。

3.セキュリティ要求の厳しさ

セキュリティ体制に対する要求は、厳しくなってもなかなかゆるくなることはありません。セキュリティ体制に問題があると、そこから生じるインシデント対応費用・保険費用・あるいは損害賠償費用などは、年々膨らむ傾向にあります。損害も大規模になりがちです。監督官庁・取引先の目、規制も厳しくなる一方です。
セキュリティに関する費用は運用コストの一部ですが、削減はしにくい費用です。ひとたびことが起こると、経営の根幹を揺るがしかねないものですから、安全管理措置が十分であるといえる水準以上の費用を確保すべきです。
しかし、他のIT投資とのバランスを考えると、膨らむセキュリティ対策費用が妥当であるか、見直しの必要がある場合も考えられます。例えば、人手でのサーバ監視などは限界があると同時に、コスト面でも合理性を欠きます。

4.運用・保守に携わる人員のスキルの問題

基幹システムについて、カスタマイズや他のシステムとの連携を行い、複雑化した場合、対応できるスキルのある人員を確保できるかどうかは非常に難しいと言わざるを得ません。なかなか後継者を運用・保守人員が育てられないこと、そして、運用・保守にあたる人員を確保できたとしても、その給与水準は上がる傾向にある、といった事情も運用保守の費用削減を難しくしています。
さらに、もしも運用・保守の人員不足が慢性的に認められたとすると、インシデント対応の迅速性・問題対応の適切性など、質の問題からITシステムが機能しないような事態も起こりかねません。外注を投入する・さらにカスタマイズを行うなどして、「だましだまし」運用を続けるような例も普通に見られるのです。

どこから運用・保守コストにメスを入れるのか?

運用・保守コストを抑えるためにすることは、2種類あります。

  1. 見える化・・・業務そのものと、システムやインフラのパフォーマンスを対象とする
  2. 置き換え・・・定型化・自動化・よりシンプルなオペレーションに置き換える

の2つです。

運用・保守コストの「見える化」を徹底して行う

まず、運用・保守業務の見える化ですが、前述の通り、IT人員は不足しており、IT人員が自ら業務の可視化を図ることもなかなか難しいものがあります。そこで、既存の内部統制資料・内部監査のためのフローチャートなど資料などを使い、可視化を始めるのが合理的な方法です。
さらにシステム・ネットワークのパフォーマンスについても見える化を行う必要があります。地道にシステムの稼働率・サーバにおいてはデータの占有率・データ量の計算など、基本的な数値を集めます。予定ないし想定の稼働率・占有率未満のもの、あるいは超過しているものについてはなぜそうなるのかも含めて、見直し・負荷の分散・あるいは思い切ってカットするなどの対策を考えるべく、分析してみましょう。これらの資料・情報が不完全で、自力で補充できないのであれば、外部のコンサルティング会社などに入ってもらい、一度IT部門の業務の見える化を行ってもらったほうが早いでしょう。コストを大幅にカットするための外部委託ですから、あとで回収が可能な費用となるはずです。
なお、見える化を図るタイミング、というのも問題になることがあります。どこかの時点でシステム導入を制限するなど、見える化をしやすい状況・時点で行うこともコツの一つと言えるでしょう。変化をコントロールしにくい状況では、コストの把握もままならないことがあるため、いったん止めてしまう、ということです。
ネットワークの運用を客先の受発注システムに合わせているといった場合についても「聖域」とは考えず、影響も含めて分析しましょう。

人手・システムの置き換え、持つべき視点とは?

人手の自動化・ワークフローによる承認オペレーション、記録作成の定型化・外注化などが置き換えの方法の代表です。この置き換えは、当然のことですが、見える化ができていることが前提となっています。
特に定型業務については、人手のモニタリングをアプライアンスに置き換える・インシデントの記録を自動でつけるようにする・内製で行う場合と、外注で行う場合の比較をし、外注に置き換えるなど、多くの置き換えが可能になることに気づかれるでしょう。
ただし、人から置き換えてよい定型的な工程と、その他の非定型的・クリティカルな業務の区別については、十分な見極めが必要です。コストカットは、対応の質を落とすことにつながりますので、質が落ちた結果、運用が不適切で余計にコストがかかってしまったのでは、本末転倒となります。

クラウド化を改めて検討してみる

今や、クラウド全盛時代ですが、機密情報を多く扱う基幹システムには、オンプレで完全にクローズドネットワークで利用しているものがある、といったこともよくあるものです。
しかし、クラウドも今や複数のクラウドプラットフォームの併用により、安全性を担保する時代で、オンプレよりもクラウドがセキュリティ・データ活用に不適切と言われることはかつてより少なくなっているはずです。
保守・運用費用のことも含めて考えて、どこまでその必要性があるのかについても再検討することは必要です。

そのカスタマイズは本当に必要か?

また、汎用か、カスタマイズか、という観点も視点としては大事です。カスタマイズは、業務のありように合わせる観点から、基幹システムの場合などは不可欠、と考えがちですところが、運用・保守のコストを考えると、カスタマイズが行われれば行われるほど膨張しがちになります。海外企業のIT投資の場合、会計原則の影響からも5年のプロダクトサイクルを基準にカスタマイズを控える傾向もあることも参考になります。
本当にカスタマイズをしながらそのシステムを使うことが必要なのか、DBのデータを有効活用しながら、システムはよりシンプルな使い方ができないかも、検討してみましょう。

まとめ

以上、運用・保守コストが膨らみがちな原因と、その改善のための手法と視点をご紹介しました。デジタルトランスフォーメーションによる積極的なIT投資には、保守・運用コストの適切な抑制が必要です。
本記事でご紹介した手法・視点を参考にしてコスト分析をしていただけますと幸いです。

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