システム障害とは?事例や発生した際の対処法、防止策を解説

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システム障害

システム障害とは、システムにトラブルが発生して正常な利用ができなくなる事象や原因のことです。サービス提供や業務が停止して損失が発生するでしょう。また、顧客・取引先からの信用が低下するケースもあり、売上低下や顧客離れの原因になります。

本記事では、システム障害の概要や発生した際の対処ステップ、防ぐための9つの対策について詳しく解説します。システム障害について知りたい方、防止したい方は、ぜひ参考にしてください。

システム障害とは

システム障害とは

システム障害とは、機械やソフトウェア、ネットワークなどシステムを構成する要素にトラブルが起き、正常な状態を維持できなくなることやその原因となる問題のことです。インターネット・スマートフォンの普及などに起因して、システムを利用するユーザーや企業・組織が増えています。また、システム数自体も増加していますが、それにともないシステム障害の発生件数も増加しています。万が一、システム障害が起こればユーザーに悪影響を及ぼし、信頼を失う恐れがあるでしょう。

ここからは、以下の事項について解説します。

  • システム障害が発生する2つの要因
  • システム障害における3つの種類

システム障害が発生する2つの要因

システム障害が発生する原因は、大きく以下の2つに分けられます。

  • 内的要因
  • 外的要因

ここからは、上記の各要因について解説します。

内的要因

企業・組織内におけるシステムの利用や操作が関係して発生するものです。例えば、設定や操作ミスに起因して発生するシステム障害が該当します。また、悪意ある従業員の行動によりシステム障害が起こるケースもあります。

外的要因

外部からの影響により発生するものです。例えば、地震・台風・洪水などの自然災害が原因でハードウェアやサーバーが故障するケースがあります。また、サイバー攻撃を受けウイルスなどのマルウェアに感染して、システム障害が発生するケースも存在します。

システム障害における3つの種類

次に、システム障害における以下3つの種類について紹介します。

  • ソフトウェアの障害
  • ハードウェア障害
  • ヒューマンエラー

ソフトウェアの障害

ソフトウェアとは、パソコンやスマートフォンなどのコンピューターに命令を出し動かすプログラムのことです。例えば、OSやアプリケーションがソフトウェアに該当します。CPUやメモリが不足していると、ソフトウェアが停止する障害が発生します。

ハードウェア障害

ハードウェアとは、コンピューターや電子機器を構成する物理的な部品・装置のことです。 具体的には以下が該当します。

  • パソコン本体
  • ディスプレイ
  • マウス
  • キーボード
  • プリンタ

例えば、パソコンが机から落下して物理的な衝撃が加えられると障害が発生します。また、製品不良や経年劣化、自然災害などもハードウェア障害が起きる原因です。

ヒューマンエラー

人間のミスにより発生するシステム障害です。具体的には、設定や操作ミスに起因した障害が該当します。

システム障害の発生事例

システム障害の発生事例

システム障害の発生件数は年々増加しています。ここからは、実際に起こった以下のシステム障害事例を紹介します。

  • ETC
  • 三井住友銀行
  • X(旧Twitter)

ETC

中日本高速道路(NEXCO中日本)では、2025年4月6日にシステム障害が発生して、最大8都県106ヵ所の料金所で約38時間ETCが使えなくなりました。この障害により、各地で交通渋滞が発生するとともに料金徴収できなくなりました。NEXCO中日本はNEXCO東日本・NEXCO西日本と共同で、円滑な料金徴収ができない場合に料金を徴収しないことや、システム障害時に発進制御バーを開放することなどを定めた再発防止策の基本方針を発表しています。
参照:ETC障害時の料金徴収見直し 中日本高速が再発防止策|日本経済新聞

三井住友銀行

三井住友銀行では、2025年4月29日午前1時20分ごろからシステム障害が発生しました。障害の影響により、西宮支店や甲子園口支店など30近くの拠点と、桜井駅前出張所や今津出張所といった20を超えるATMが一時的に利用できなくなりました。また、システム障害の影響で2025年4月30日から同年5月1日における口座振替などの入出金手続きにも遅れが発生しています。

三井住友銀行の発表によれば、このシステム障害は4月29日23時16分ごろに復旧しています。ただ、2025年5月4日から5日に予定していた新勘定系システムへの移行が延期されました。
参照:三井住友銀行が新勘定系への移行延期、システム障害で 26年度中の完了は変えず|日経BP

X(旧Twitter)

X(旧Twitter)でも、2025年3月10日にシステム障害が発生しています。アメリカや日本などの世界各地でWebサイトやアプリへの投稿・閲覧が一時的にできなくなり、アメリカでの障害報告件数は約4万件に達しました。原因はDDos攻撃だったとされており、親パレスチナのハッカー集団が犯行声明を出しています。

DDoS(ディードス)攻撃とは、多数のデバイスから大量にアクセスし、サーバーに負担をかけ正常な運営を妨害するサイバー攻撃のことです。詳細は以下をご覧ください。
⇒DDoS攻撃とは?受けた場合の被害や4つの対策をわかりやすく解説

システム障害が発生する3つのリスク

システム障害が発生する3つのリスク

システム障害が発生した場合、以下3つのリスクがあります。

  • 損失の発生
  • 信用の低下
  • 業務やコストの増加

順に解説します。

損失の発生

システム障害が起きれば損失の発生につながります。例えば、人命に関わる医療システムが1分止まれば数百万、24時間の停止で数十億円規模の損失が発生するといわれています。システム障害により賠償金の支払いが発生するリスクもあるでしょう。

信用の低下

システム障害の発生は、顧客や取引先からの信用低下につながるリスクも存在します。障害の発生により、顧客離れが起きたり新規顧客の獲得が難しくなったりする可能性があるでしょう。企業の信用やブランドイメージが低下すれば、回復までにかかる時間は少なくありません。

最悪の場合、企業の存続が困難になるケースもあります。実際に、サイバー攻撃に起因するシステム障害の発生で、サービスを廃止した企業も存在します。

業務やコストの増加

業務やコストの増加も、システム障害におけるリスクです。システム障害が発生すれば問い合わせが増えるため、対応業務の負担が増加します。また、トラブルへの対応や原因の究明、再発防止策の検討・実施なども求められ、システム担当者への負荷が増すでしょう。

DX推進需要が増加している一方でエンジニアの供給が追いついておらず、システム担当者には日々の業務実施だけでも多くの負担がかかっています。トラブル対応を並行するのは簡単ではありません。残業が発生してコストの増加につながるケースもあります。

システム障害が発生した際の対処ステップ

システム障害が発生した際の対処ステップ

続いて、システム障害発生時の対処ステップを紹介します。

  1. システム障害の内容把握
  2. 社内共有
  3. 影響範囲の調査
  4. 原因の究明
  5. 復旧作業の実施
  6. 事後対応を再発防止策の検討・実施

1.システム障害の内容把握

まず、システム障害の内容把握が重要です。具体的には、以下の項目を確認すると良いでしょう。

  • いつシステム障害が発生したか
  • どのシステムに障害が起きているか
  • どのような障害が発生しているか
  • どの範囲(ユーザー)に影響が出るか

2.社内共有

続いて、障害の状況を社内で共有します。影響を受ける可能性があるユーザーが存在する場合には、ユーザーへの連絡も実施します。システム障害発生時の情報共有は迅速に行うことが重要です。ただ、あいまいな情報を伝えると混乱を招くため、不明点は「調査中」や「不明」などと明確に伝えましょう。事前にトラブル発生時のフローを決めておけば、迅速な情報共有が可能になります。

3.影響範囲の調査

次に、影響範囲と内容に関する詳細な調査を実施します。誰にどの程度の影響が及ぶかを明確にしましょう。影響範囲が広い場合や復旧に時間がかかる場合には、予備サーバーの利用などを検討します。

4.原因の究明

緊急対応が済んだら原因の究明に移ります。障害が発生したシステムの監視データやレポートなどを基に、原因を分析しましょう。原因究明時には、過去の障害や他社の事例を参考に仮説を立てながら進めることが重要です。

5.復旧作業の実施

ユーザーへの影響最小化と迅速な利用再開を重視した、復旧作業も行います。まずは、必要最低限の機能を利用可能にすることが重要です。また、いつ復旧が完了するかの目途や代替手段などをユーザーにアナウンスしましょう。

6.事後対応を再発防止策の検討・実施

復旧が完了したら再発防止策の検討を行います。また、以下の内容を報告書にまとめて関係者に提供します。

  • 障害の概要
  • 時系列順の障害発生経緯や対応状況
  • 障害が及ぼした影響範囲
  • 暫定対応・恒久対応の内容
  • 障害が起きた原因と対策
  • 再発防止策

障害発生原因の詳細を究明して対策を講じれば、再発を防止できます。

システム障害を防ぐ9つの対策

システム障害を防ぐ9つの対策

最後に、システム障害の防止に有効な以下9つの対策について解説します。

  • 障害に強いシステム構成の検討
  • 定期的なメンテナンスの実施
  • 予備サーバーの用意
  • クラウド環境の利用
  • 脆弱性診断やテストの実施
  • ヒューマンエラー防止策の実施
  • 監視ツールの導入
  • 障害発生時における対応方法の事前決定
  • インシデント管理の徹底

障害に強いシステム構成の検討

システム障害を防ぐには、そもそも障害に強いシステム構成にすることが重要です。例えば、DDos攻撃は膨大なアクセスによりシステムに多くの負荷をかけ、障害を発生させる攻撃ですが、負荷分散の仕組みを用いたシステム構成にすることにより防止できるケースがあります。また、負荷分散を行えば多数の従業員がサーバーに同時アクセスしても、処理・通信速度が落ちません。

定期的なメンテナンスの実施

定期的なメンテナンスを実施すれば、システムの安定稼働につながります。経年劣化などもシステム障害が発生する原因です。定期的なメンテナンスと、部品の交換・修理により障害発生リスクの抑制が可能です。また、メンテナンスによりバグを発見して解消できる可能性もあるでしょう。

予備サーバーの用意

予備サーバーの用意もシステム障害の防止に有効です。サーバーはさまざまな理由により、ダウンする可能性があります。予備サーバーを用意し自動切り替えが実行される設定をしておけば、トラブルが起きても被害を最小化可能です。

クラウド環境の利用

クラウド環境の利用も良いでしょう。日本は災害大国といわれています。オンプレミスサーバーを利用している場合、地震や台風などの物理的な被害により障害が発生するリスクがあります。実際に、2011年に東日本大震災が起きた際にはクラウド環境を利用していなかった医療システムの電子カルテがダウンして、患者のデータを確認・利用できませんでした。

脆弱性診断やテストの実施

脆弱性診断やテストの実施もシステム障害防止に効果的です。脆弱性診断(セキュリティ診断)とは、コンピュータシステムやネットワークに存在するセキュリティ上の弱点を特定する作業のことです。多くのサイバー攻撃は脆弱性の悪用によるものであるため、脆弱性がないかを確認することで攻撃されるリスクを抑えられます。また、システムのテストを実施してバグを修正することも障害発生の防止に役立ちます。

なお、脆弱性診断の詳細は以下をご覧ください。
⇒脆弱性診断とは?種類や脆弱性を放置するリスク、進め方を紹介

ヒューマンエラー防止策の実施

「システム障害における3つの種類」の章で解説した通り、ヒューマンエラーもシステム障害が起きる原因の一つです。マニュアル・チェックリストの作成やヒヤリハットの共有などにより、ヒューマンエラーを防止する仕組みを構築しましょう。勘違いや聞き間違いなどからヒューマンエラーが発生するケースもあるため、重要なコミュニケーション時にすれ違いが起きない工夫も重要です。

監視ツールの導入

監視ツールを導入すれば、システム障害の発生に素早く気付き対処できます。システム障害が起きた際、迅速な行動を取ることで被害の最小化が可能です。ログやトラフィック、インフラ監視ツールなどを導入すると良いでしょう。

障害発生時における対応方法の事前決定

障害発生時における対応方法をあらかじめ決めておけば、トラブルが起きても冷静かつ迅速に行動できます。本記事で紹介した「システム障害が発生した際の対処ステップ」を参考に、いつ誰がなにをするか明確にしてマニュアルにまとめましょう。また、マニュアル完成後は従業員に浸透させることが重要です。

インシデント管理の徹底

システム障害のスムーズな解決と再発防止には、インシデント管理の徹底も欠かせません。そもそもセキュリティ分野におけるインシデントとは、コンピューターの利用や情報管理、情報システム運用において、セキュリティ上の脅威となる事象のことです。インシデントを管理することで、システムの正常な利用を実現できます。

なお、インシデントとインシデント管理の概要は以下をご覧ください。
⇒セキュリティインシデントとは?発生する3つの原因や事例、対策方法を解説
⇒インシデント管理とは?その目的・メリットとは?

まとめ

まとめ

システム障害とは、機械やソフトウェア、ネットワークなどシステムを構成する要素にトラブルが起き、正常な状態を維持できなくなることや、その原因となる問題のことです。システムを利用する企業が増えるとともに、システム障害の発生件数も増加しています。万が一、システム障害が起これば損失の発生や信用の低下、業務・コストの増加につながるため注意が必要です。

システム障害の防止には、障害に強いシステム構成の検討や定期的なメンテナンスの実施、監視ツールの導入などが有効です。また、システム担当者がシステムを監視してトラブルの早期発見と対処を行う体制の整備も欠かせません。ただ、近年はシステム担当者が足りておらず、余裕がない企業も多いでしょう。

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