ハイブリッド暗号方式とは?仕組みやメリット・デメリット、導入方法を解説
ハイブリッド暗号方式とは、公開鍵暗号方式と暗号鍵暗号方式を組み合わせ、高い安全性と処理速度を実現した暗号化技術のことです。本記事では、ハイブリッド暗号方式の概要と仕組みやメリット・デメリット、利用されている代表的な暗号化アルゴリズムについて解説します。
目次
ハイブリッド暗号方式とは、公開鍵暗号方式と暗号鍵暗号方式を組み合わせた暗号化技術のことです。高い安全性と処理速度を実現できる点が特徴で、HTTPS通信や電子メール、VPN接続などさまざまなシーンで活用されています。
本記事では、ハイブリッド暗号方式の概要と仕組みやメリット・デメリット、利用されている代表的な暗号化アルゴリズムについて詳しく解説します。ハイブリッド暗号方式について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ハイブリッド暗号方式とは

ハイブリッド暗号方式とは、公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせて、双方の強みを活かして弱点を補う暗号方式のことです。公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式は、異なるメリット・デメリットを有しており、併用することで長所を伸ばし短所を打ち消します。
ここからは、以下の項目について解説します。
- 公開鍵暗号方式の概要
- 共通鍵暗号方式の概要
- ハイブリッド暗号方式が生まれた背景
- ハイブリッド暗号方式の活用例
公開鍵暗号方式の概要
公開鍵暗号方式とは、誰でも利用できる公開鍵と個人が秘密裏に保持する秘密鍵をペアで使う暗号方法のことです。一つの鍵だけでは復号できないため高い安全性を確保可能です。一方で、鍵長が長く暗号化と復号の際に複雑な計算処理が必要になり、処理に時間がかかるデメリットがあります。
詳細は以下をご覧ください。
⇒公開鍵暗号方式とは?仕組みやメリットなどをわかりやすく解説
共通鍵暗号方式の概要
共通鍵暗号方式とは、一つの鍵で暗号化・復号を行う暗号方法のことです。効率が良く大量のデータを暗号化する際のスピーディーな計算速度が強みです。ただ、暗号化と復号に同じ鍵が利用されるため、鍵が流出すれば簡単に暗号を解かれてしまいます。
詳細は以下をご覧ください。
⇒共通鍵暗号方式とは?種類やメリット・デメリット、他の暗号化技術も解説
ハイブリッド暗号方式が生まれた背景
ハイブリッド暗号方式が誕生した背景には、通信におけるセキュリティリスクの高まりがあります。もともと、共通鍵暗号方式が活用されていましたが、鍵の交換や管理が課題とされていました。
1970年代後半に安全性を高める目的で、暗号化・復号に別鍵を用いることで安全性を高めた公開鍵暗号方式が生み出されましたが、処理に時間がかかる点が課題です。その結果、高い安全性と処理速度を兼ね備えたハイブリッド暗号方式が誕生しました。
ハイブリッド暗号方式の活用例
ハイブリッド暗号方式のもっとも代表的な活用例は、HTTPS通信です。HTTPSとは、暗号化通信(SSL)で安全性を向上させた規格・ルールのことです。HTTPS通信では、ハイブリッド暗号方式を活用して高速かつ安全な通信を実現しています。
また、ハイブリッド暗号方式は以下のシーンでも活用されています。
- 電子メール
- VPN接続
- ファイル共有システム
- メッセージアプリ
なお、HTTPSの詳細は以下をご覧ください。
⇒httpsとは?概要や安全なサイトの見分け方をわかりやすく解説
ハイブリッド暗号方式の仕組みや流れ

ハイブリッド暗号方式では、公開鍵暗号方式で共通鍵暗号方式の鍵を安全に送付する仕組みが取られています。ハイブリッド暗号方式におけるデータ送信の流れは、以下の通りです。
- 暗号鍵の生成
- ファイルの暗号化
- 鍵とファイルの送信
- 鍵とファイルの復号
ここからは、上記の各ステップについて解説します。
1.暗号鍵の生成
まず、ファイル送信者が共通鍵を生成します。この共通鍵は、ファイルを暗号化するための鍵として活用されます。
2.ファイルの暗号化
続いて、送信者は生成した共通鍵を活用してファイルの暗号化を実施します。また、受信者が公開鍵と秘密鍵を生成して、送信者に公開鍵のみ送付します。
3.鍵とファイルの送信
送信者は、受け取った公開鍵を用いて自分が生成した共通鍵を暗号化します。また、暗号化した共通鍵とファイルを送付します。
4.鍵とファイルの復号
最後に、受信者は受け取った共通鍵を自分が生成した秘密鍵で復号します。また、復号した共通鍵でファイルの復号も実施します。
ハイブリッド暗号方式と他の暗号化テクノロジーの違い

続いて、ハイブリッド暗号方式と以下の暗号化テクノロジーにおける違いについて解説します。
- 量子暗号方式との違い
- デジタル署名方式との違い
- ブロックチェーン技術との違い
量子暗号方式との違い
量子暗号方式(Quantum cryptography)とは、量子力学の理論を基にした暗号化技術のことです。暗号化したファイルは通常の回線を用いて送付しますが、暗号化・復号に用いる共通鍵は量子経路を利用して送る仕組みが取られています。
量子暗号方式の場合、共通鍵を送る際に量子経路を用いることで、鍵が盗まれた際の検出が可能です。一方、ハイブリッド暗号方式は鍵が盗まれたとしても検出できません。
デジタル署名方式との違い
デジタル署名方式(Digital Signature)とは、公開鍵暗号方式の活用により電子文書の本人性・非改ざん性を証明する技術のことです。例えば、電子契約や電子申請で活用されています。
ハイブリッド暗号方式とデジタル署名方式は目的が異なります。ハイブリッド暗号方式はデータの保護を主な目的にしているのに対して、デジタル署名方式はデータの検証が主な目的です。
ブロックチェーン技術との違い
ブロックチェーン技術とは、データの安全な管理を目的としたテクノロジーのことです。情報をブロック単位でまとめ、それを時系列でチェーンとしてつなげることでデータの改ざんを防止します。ハイブリッド暗号方式が、データの安全な送受信を目的としているのに対して、ブロックチェーン技術はデータの保護や透明性の向上を目的にしています。
ハイブリッド暗号方式のメリット・デメリット

続いて、ハイブリッド暗号方式における以下の項目について解説します。
- メリット
- デメリット
ハイブリッド暗号方式のメリット
ハイブリッド暗号方式における最大のメリットは、高い安全性と処理速度を実現していることです。公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式の強みが活かされており、大量のデータであっても高速で処理できます。また、鍵の管理が容易で手間やコスト削減も可能です。
ハイブリッド暗号方式のデメリット
メリットがある一方で、ハイブリッド暗号方式にはデメリットも存在します。例えば、鍵が盗まれた場合暗号を解かれてしまいます。ハイブリッド暗号方式を活用すれば、鍵を盗まれないわけではありません。また、並行処理により速い演算速度と高い処理能力を備えた量子コンピューターの登場で、公開鍵暗号方式の脆弱性が指摘されています。
さらに、ハイブリッド暗号方式は暗号化と復号のプロセスが多いため、システムに負担がかかります。スペックが低いコンピューターを活用している場合、動作が遅くなるなどの弊害が発生するケースもあるでしょう。
ハイブリッド暗号方式の導入方法

ハイブリッド暗号方式の主な導入方法は以下の2つです。
- 暗号化ツールの活用
- クラウドサービスの利用
ここからは、上記それぞれの方法について解説します。
暗号化ツールの活用
暗号化ツールの活用により、ハイブリッド暗号方式の導入が可能です。暗号化ツールを活用すれば、権限を有するユーザーしか閲覧や編集をできない環境の構築が可能です。データの送受信における安全性を高めるのみならず、保管データが流出した際のリスクも抑えられます。
近年は、プライバシー保護に対する注目が高まっており、個人情報が流出すれば企業の信用やブランドイメージが低下する恐れがあるでしょう。
なお、おすすめの暗号化ツールについて知りたい方は以下もご覧ください。
⇒ファイル暗号化とは?行うメリットや実施方法、おすすめのツール10選を解説
クラウドサービスの利用
クラウドサービスの利用も有効です。クラウドサービスのなかには、アップロードするだけでデータを暗号化するものが存在します。ただ、全てのクラウドサービスが暗号化に対応しているわけではありません。暗号化を目的に利用する場合には、暗号化機能が実装されているか必ず確認しましょう。
暗号化で利用されている代表的なアルゴリズム

暗号化で利用されている代表的なアルゴリズムは以下の通りです。
- DES
- AES
- RSA
順に解説します。
DES
DES(Data Encryption Standard)は、1977年にアメリカの政府が採用した暗号化技術です。鍵長の56bitとパリティチェック用の8bitを足した、計64bitでデータをまとめるブロック暗号の仕組みが採用されています。安全性を高める目的で暗号化処理を2回行う2DESや、暗号化と復号を3回行う3DESも登場しましたが、セキュリティリスク・システムへの負担に関する問題が見つかり、近年はAESが主流となっています。
AES
AES(Advanced Encryption Standard)は、通信データの安全向上を目的とした暗号化技術です。ISO/IEC 18033-3として国際標準化されており、ファイルの暗号化やWi-Fi・インターネット通信の保護、データベースのセキュリティなどに活用されています。DESの鍵長が短く、セキュリティ強度があまり高くないなどの課題に起因して誕生しました。AESの鍵長には128bit・192bit・256bitの3パターンがあり、セキュリティ強度と処理速度などを踏まえて選択可能です。
なお、AESやAES256の詳細は以下をご覧ください。
⇒AESとは?他の暗号化方式との違いや使用方法を解説
⇒AES256とは?特徴や仕組みと暗号化の流れ、活用時の注意点を解説
RSA
RSA(Rivest-Shamir-Adleman)は、素因数分解の仕組みを用いた暗号技術です。共通鍵暗号方式における秘密鍵の配布と管理の安全性・利便性を高めるために1977年に発明され、その後開発された多くの暗号技術にも影響を与えています。RSA暗号で生成する鍵の長さには制限がなく、安全性が高い暗号化を実現できます。
RSAの詳細を知りたい方は以下もご覧ください。
⇒RSA暗号とは?仕組みや安全に利用するポイント、他の暗号方式を解説
ハイブリッド暗号方式の今後

「ハイブリッド暗号方式のデメリット」の章で解説した通り、量子コンピューターの登場で公開鍵暗号方式におけるセキュリティリスクが不安視されています。サイバー攻撃は新たな手法が日々生み出されているため、今後暗号が解かれてしまう可能性もあるでしょう。
一方、AIなどの最新テクノロジーを活用することで、高度な暗号化を実現する技術開発も進められています。今後も、ハイブリッド暗号方式は進化を続けるでしょう。
まとめ

ハイブリッド暗号方式とは、公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせて、双方の強みを活かして弱点を補う暗号方式のことです。高い安全性と処理速度を兼ね備えており、HTTPS通信や電子メール、VPN接続など多くのシーンで活用されています。
ただ、ハイブリッド暗号方式を活用すれば100%安全なわけではありません。鍵を盗まれれば、暗号を解かれてしまう可能性があるでしょう。また、量子コンピューターの登場で、公開鍵暗号方式の安全性に疑問が持たれています。
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