技術用語解説

TLPTとは?ペネトレーションテストとの違いやメリット、実施の流れを解説

脅威ベースのペネトレーションテスト「TLPT」とは。実際の攻撃者の手口を模倣した実践的なセキュリティ評価で、組織の防御力を正確に把握し、被害範囲を明確にできます。導入メリットと実施の流れを解説。

目次

  1. 1TLPTとは
  2. 2TLPTを構成する3つの要素
  3. 3TLPTを実施する3つのメリット
  4. 4TLPTを実施する流れ
  5. 5まとめ

サイバー攻撃が高度化する中、組織の防御力を正確に把握するには、実践的なセキュリティ評価が欠かせません。その手法のひとつが「TLPT(脅威ベースのペネトレーションテスト)」です。
本記事では、TLPTの概要や従来のペネトレーションテストとの違い、導入によるメリット、実施の流れまでをわかりやすく解説します。自社のセキュリティ強化に向けた取り組みの参考にしてください。

TLPTとは

TLPT(Threat-Led Penetration Testing)とは、実際のサイバー攻撃の脅威情報をもとに、攻撃者が用いる手法を模倣して行う実践的なセキュリティテストのことです。

ここからは、TLPTを以下の3つの項目に分けて詳しく解説します。

  • セキュリティリスクを構成する要素
  • TLPTが必要な理由
  • 一般的なペネトレーションテストとの違い

それぞれ詳しくみていきましょう。

セキュリティリスクを構成する要素

TLPTのセキュリティリスクは「情報資産価値」「脆弱性」「脅威」の3要素で構成されます。

TLPTは、特定の脅威を想定することで、組織のセキュリティ対策や対応能力がどの程度有効かを評価し、潜在的な脆弱性や対応における課題を明らかにすることを目的としています。

情報資産価値

情報資産価値とは、組織が保護すべき情報やシステムが持つ重要度を指します。顧客情報、知的財産、機密情報などがこれにあたり、その情報が漏洩、改ざん、または利用できなくなった場合に事業活動に与える影響の大きさによって評価されるのが特徴です。

価値が高い情報資産ほど、それが損なわれた時の損害も大きくなるため、リスクも高まります。組織は情報資産の価値を正しく把握し、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。

脆弱性

脆弱性とは、情報システムやネットワーク、または組織の運用体制に存在するセキュリティ上の弱点のことです。ソフトウェアの設計ミス、設定の不備、運用上のルールや教育体制の不備などが含まれます。

脆弱性は、それ自体が直接的な被害をもたらすわけではありませんが、攻撃者によって悪用されることで、情報漏洩やシステムの停止といった被害につながり得るリスクを高める要因となります。

脅威

脅威とは、情報資産に対して損害を与える可能性のある事象や行為のことです。サイバー攻撃(マルウェア感染、不正アクセス、DDoS攻撃など)、内部犯行、自然災害、機器の故障などが含まれます。

脅威は、情報システムや組織の脆弱性を悪用して、情報資産を危険にさらす存在です。常に変化し、新たな手法が生み出されているため、組織は常に最新の脅威動向を把握し、対策を講じ続ける必要があります。

TLPTが必要な理由

TLPTは、現実のサイバー攻撃を想定し、より実践的な視点でセキュリティ対策の有効性を評価するために必要とされます。

従来の脆弱性診断やペネトレーションテストでは見過ごされがちな、攻撃者が複合的な手法を用いて侵入を試みるシナリオを再現。組織のセキュリティ担当者や運用体制が実際の攻撃に対してどの程度耐性があるのかを明らかにします。

これにより、インシデント発生時の対応能力を向上させ、より実効性の高いセキュリティ強化策を講じることが可能になります。

一般的なペネトレーションテストとの違い

一般的なペネトレーションテストは、システムやネットワークの既知の脆弱性を発見するのが主な目的です。

一方、TLPTは、特定の脅威アクター(攻撃者集団など)が用いるTTPs(戦術・技術・手順)を模倣し、組織のセキュリティ体制全体がその攻撃にどの程度耐えうるかを評価することに焦点を当てています。つまり、テストのスコープが「脆弱性の発見」から「特定の脅威に対する防御能力の検証」へと拡張されている点が大きな違いです。

TLPTを構成する3つの要素

TLPTを構成する3つの要素は以下の通りです。

  • 脅威インテリジェンス
  • 攻撃シナリオ
  • 3つのチーム

上記3つをそれぞれ詳しく解説します。

脅威インテリジェンス

脅威インテリジェンスとは、TLPTの根幹をなす要素であり、組織を標的とする可能性のある実際のサイバー攻撃に関する情報を収集・分析することです。

具体的には、攻撃者の目的、使用する戦術、技術、手順(TTPs)、過去の攻撃事例、狙われやすい脆弱性などを特定します。これにより、抽象的な脅威ではなく、組織にとって最も現実的かつ深刻な脅威を把握し、テストの出発点とすることができます。

攻撃シナリオ

攻撃シナリオとは、脅威インテリジェンスで得られた情報を基に、攻撃者がどのような経路や手法で組織の情報資産に侵入・侵害を試みるかを具体的に描写した計画書です。

標的とするシステム、攻撃の起点、最終的なゴールなどを設定します。このシナリオは、単一の脆弱性を突くだけでなく、複数の手法を組み合わせた複合的な攻撃を想定することで、より現実的なテストを実現します。

3つのチーム

TLPTは、実施時に3つの役割で構成されます。実際の攻撃を仕掛ける「レッドチーム」、攻撃を検知・分析し対応する「ブルーチーム」、そして両者の間に立ち、進行管理や評価、報告を担う「ホワイトチーム」です。

レッドチーム

レッドチームは、TLPTにおいて、現実のサイバー攻撃者を模倣して組織への侵入を試みる攻撃側のチームです。

脅威インテリジェンスに基づいた攻撃シナリオを実行し、システムの脆弱性を突くだけでなく、組織のセキュリティ対策や監視体制をすり抜け、情報資産へのアクセスを試みます。組織の防御能力を最大限に試すことや、実際の攻撃に対する弱点や盲点を洗い出すことを目的としています。

ブルーチーム

ブルーチームは、TLPTにおいて、組織の防御を担うチームです。レッドチームによる攻撃を検知、防御し、インシデントに対応する役割を担います。

SOC(セキュリティオペレーションセンター)やCSIRT(コンピュータセキュリティインシデント対応チーム)のメンバーで構成されることが多く、レッドチームの活動を監視し、その侵入を防ぎます。ブルーチームの対応力や有効性を評価することも、TLPTの重要な目的の一つです。

ホワイトチーム

ホワイトチームは、TLPT全体を統括し、管理・評価するチームです。

レッドチームとブルーチームの間に立ち、両チームの活動を調整し、テストのルールや範囲が適切に守られているかを監視します。また、テストの結果を客観的に評価し、レッドチームとブルーチームの協力を促しながら、組織のセキュリティ向上に向けた具体的な改善策を策定します。

ホワイトチームは、テストの公正性と有効性を確保するうえで不可欠な存在です。

TLPTを実施する3つのメリット

TLPTを実施するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 攻撃者の視点で安全性を評価できる
  • 被害や影響の範囲を把握できる
  • 全社のセキュリティ意識が向上する

それぞれ詳しくご紹介します。

攻撃者の視点で安全性を評価できる

サイバー攻撃者と同様の思考や手法を用いて検証することで、実際に狙われやすい脆弱性や攻撃ルートを明確にできます。

通常の脆弱性スキャンでは見落としがちな、複数のシステムや業務プロセスをまたぐ複合的な侵入経路を発見できる点が大きな特徴です。例えば、単体では影響が小さい複数の脆弱性が連鎖し、深刻な攻撃シナリオとなるケースも再現可能です。

被害や影響の範囲を把握できる

攻撃が成功した際に想定される被害の範囲や影響度を、実証的に明らかにできます。

抽象的なリスク評価ではなく、「侵害時にどのデータが流出し得るのか」「業務がどの程度停止するのか」といった具体的な影響を可視化できる点が特徴です。この明確な情報は、セキュリティ対策の優先順位付けや予算配分の判断材料として非常に有効です。さらに、演習を通じてインシデント対応の疑似体験ができ、チーム全体の実践的な対応力強化にもつながります。

全社のセキュリティ意識が向上する

TLPTは、IT部門だけでなく組織全体のセキュリティ意識向上にも貢献します。攻撃・検知・対応の一連の流れを通じて、現場担当者や経営層もリスクを実感しやすくなります。結果として、組織全体での対策強化や運用改善につながる点が大きなメリットです。

TLPTを実施する流れ

TLPTを実施する具体的な流れは以下の通りです。

  1. 計画の策定
  2. シナリオの作成
  3. ツールの開発
  4. テストの実施
  5. 評価と報告、改善

1.計画の策定

まず、組織の特性や守るべき重要資産、想定される脅威アクターを整理し、テストの目的と範囲を明確にすることから始まります。「どの攻撃者から、どの資産を保護するのか」という基本方針を定めるのが、計画の出発点。

そのうえで、経営層や関係部門との協議を重ね、テストの目標や実施方針について合意を形成することが不可欠です。

2.シナリオの作成

最新の脅威インテリジェンスをもとに、対象組織を狙う可能性が高い攻撃者像をプロファイル化します。業界特有のリスク傾向や過去のインシデント、自社の業務特性などを踏まえ、現実的な脅威アクターを特定することが重要です。

例えば、金融機関では金銭目的のサイバー犯罪グループ、研究機関では知的財産を狙う国家支援型攻撃者が想定されるケースが多くあります。こうして特定した脅威アクターのTTP(戦術・技術・手順)を分析し、現実に即した攻撃シナリオを組み立てます。

3.ツールの開発

次の段階では、シナリオに基づく攻撃を実行するための専用ツールを準備します。

レッドチームは、実際の攻撃者が使うツールと同等の能力を持つ環境を構築しますが、使用するのは制御可能で安全性が確保されたツールです。また、状況に応じてテスト環境や目的に合わせたカスタムツールを作成する場合もあります。

4.テストの実施

計画したシナリオに沿って、段階的に攻撃を実行するフェーズに移ります。レッドチームは、情報収集から初期侵入、特権昇格といった手順を順を追って進めていくのが基本です。

同時にブルーチームは、通常業務として監視や検知、対応を行い攻撃の察知と阻止を試みます。なお、テスト中に重大なリスクが判明した場合は、あらかじめ定められた手順に従い、即時報告と対応が行われます。

5.評価と報告、改善

テスト完了後は、結果を詳細に分析し、防御システムの有効性や脆弱性を評価する段階に移ります。「レッドチームがどこまで侵入できたか」「どの防御策が有効だったか」「ブルーチームは適切に検知・対応できたか」など、多角的な視点での評価が求められます。

また、計画シナリオと異なる経路や想定外の手法が確認された場合は、特に慎重な分析が必要です。分析結果を踏まえて具体的な改善策を整理し、報告書を作成します。

最後に、関係部門へ結果を共有すれば一連のテストは完了です。

まとめ

今回は、TLPTの基本概要と導入によるメリットについて詳しくご紹介しました。TLPTは、実際の攻撃者の視点で組織の防御力を評価できるため、より現実的なリスク把握が可能です。また、具体的な被害範囲を明確にし、優先すべき対策の判断材料として活用できます。

今後のサイバーセキュリティ対策において、TLPTは重要な役割を果たすため、ぜひ導入を検討してみてください。

また、情報漏洩を未然に防ぐ対策を行うとともに、万が一情報漏洩が発生した際早期に発見して対策を打てる体制の整備も求められます。情報漏洩監視ツール「ダークウェブアイ」は、会社のドメイン情報を入れるだけで「いつ」「どこから」「どんな情報が」漏れてしまったのか、一瞬で分かります。

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