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AGI(汎用人工知能)とは?できることやAI・ASIとの違い、開発の現状と未来を解説
研究開発が進められている「AGI」をご存じでしょうか?AGIとは、現在利用できるAIとは異なり、特定のタスクだけではなく、汎用的な問題に対応できる柔軟性を兼ね備えた人工知能のことです。自己学習能力を有しており、独自の判断や新たなアイディアの創出ができます。
本記事では、AGIの概要や従来型AI・ASIとの違い、登場により予測される仕事の変化について詳しく解説します。AGIについて知りたい方、AIを積極的に活用し業務を改善したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
AGI(汎用人工知能)とは
AGI(Artificial General Intelligence)とは、人間と同様かそれ以上の知的能力を有する人工知能のことです。現在存在するAIは、画像生成や自然言語処理、需要予測など、特定の分野におけるタスク処理を行うものがほとんどです。一方、AGIは人間が備える一般的な知識や能力を有しており、多様な問題に対して柔軟に対処できます。
2023年10月には、ソフトバンクの創業者である孫正義氏が、10年以内に多くの分野においてAIが人間を追い抜くAGIの世界が実現すると発言し、注目を集めました。ここからは、AGIの構成要素と特徴について解説します。
AGIの構成要素
AGIは主に以下の3要素で構成されてます。
- 機械学習
コンピューターが人間と同じような学習能力を持ち、経験から学ぶことで、自動的に判断や推論を行う技術です。 - 認知アーキテクチャ
人間と同様の行動や思考をするための設計図です。 - 認知ロボティクス
複雑な目標を達成するために、高水準な認識能力をロボットにインプットさせる技術です。
上記3つの要素により、人間に近いかそれ以上の能力をAIが獲得します。
AGIの特徴
AGIの主な特徴は以下の通りです。
- 汎用的な活用が可能
- 自己学習が可能
- 高い意思決定能力
上記それぞれの特徴について解説します。
汎用的な活用が可能
冒頭解説した通り、AGIにおける最大の特徴は汎用的な活用ができることです。多様なタスクや問題に対応でき、活用範囲を絞る必要がありません。さまざまなノウハウを活用して、多くの分野で活躍するでしょう。
自己学習が可能
機械学習により、自己学習が可能な点もAGIにおける特徴の一つです。自身が経験した内容や外部の情報を活用して、行動が最適化されます。学習能力により、できることや質が向上するでしょう。
高い意思決定能力
AGIは高い意思決定能力を有しています。独自に判断や意思決定が可能で、複雑な問題に対して情報収集・分析をした上で、最善の選択ができるでしょう。
AGIの活用例
高度な能力を有するAGIは、医療や教育、エンターテインメントなど、さまざまな分野での活躍が期待されています。例えば、医療分野において現在期待されているAGIの活用例は以下の通りです。
- 症状や遺伝情報、ライフスタイルなどの多様で膨大な情報を基にした、高精度の診断
- 各患者に合わせた最適な治療方法の提案による個別化医療の実現
- 安全かつ効果的な新薬の開発
- シミュレーションやメタバースを利用した、医療従事者の教育とトレーニング
医療には、働き手不足や都心部と過疎地における医療の地域格差など、多くの問題が存在しています。AGIの開発・活用により、医療分野の課題解決が期待されています。
なお、医療分野におけるAI活用について詳細を知りたい方は、以下をご覧ください。
➡医療AIとは?活躍が記載される分野と活用事例、メリット・デメリットと注意点を解説
AGIと従来型AI・ASIの違い
従来型AI | AGI | ASI | |
---|---|---|---|
対応タスク | 限定的 | 複数タスクに対応 | 未知のタスクにも対応 |
柔軟性 | なし | あり | 高い |
学習能力 | 低い | 高い | 極めて高い |
自己進化能力 | なし | 限定的 | 高い |
AGIと従来型AI・ASIの主な違いは、上記の通りです。詳しく解説します。
AGI(強いAI)と従来型AI(弱いAI)の違い
高い知能や自己判断能力を有するAGI(強いAI)と、限定的なタスクを人間が入力するプロンプトに従い処理する従来型AI(弱いAI)では、性能が大きく異なります。
従来型AIは事前に定めたタスクのみしか実行できず、柔軟性が低いのに対して、AGIは柔軟性が高く多彩なタスク処理が可能です。
また、従来型AIの場合、基本的に事前に人間がインプットさせたデータから学ぶのに対して、AGIは経験や収集データから自己学習ができ、限定的ですが自己進化も行われます。
AGIとASI(人工超知能)の違い
ASI(Artificial Super Intelligence)とは、人間の能力を凌駕した人工知能のことです。AGIが学習を重ねたり、技術が進歩したりして、実現するAGIの進化バージョンです。
ASIは、さまざまな状況に対処する能力を有しており、未知のタスクも処理できます。また、学習能力が非常に高く、改善と自己進化を繰り返すことが可能です。
AGIのできること
AGIはさまざまな可能性を秘めています。ここからは、AGIのできることについて解説します。
独自判断による問題解決
AGIでは多くのデータをスピーディーに分析して、問題点や課題を抽出できます。また、独自に判断する能力を有しており、人間では対処できない問題の解決が期待されています。
例えば、医療分野において利用すれば、DNAに含まれる遺伝情報全体を網羅的に調べ、その結果を基により効率的かつ効果的に病気の診断と治療を行うゲノム医療が実現するでしょう。また、自動運転で活用すれば、曜日や時間帯、気象などの情報を活用して、最適な交通経路を選択できます。
新たなアイディアの創出
AGIでできるのは、インプットした内容をただアウトプットすることだけではありません。経験や収集したデータを基に得た知識を組み合わせ、新たなアイディアの創出が可能です。人間では思いつかなかったアイディアや理論を生み出すとともに、難題の解決が期待されています。AGIが開発されれば、今後学問が益々進歩するでしょう。
人間と同レベルのコミュニケーション
人間と同レベルのコミュニケーションができることも、AGIの特徴です。AGIであれば、表情や声からも感情・体調の読み取りができ、その情報を基に自律的な判断と問題解決が可能です。あたかも人間のように振る舞う特徴を活かし、医療や教育現場、顧客対応などでの活躍が期待されています。
AGIの現状と未来
続いて、AGIの現状と未来について解説します。
AGIの現状
AGIは長年に渡り研究開発が行われている大きな目標です。実際に、OpenAIやGoogle DeepMindなどをはじめ、世界中の企業・団体が研究開発を行っています。ただ、開発に成功している企業は存在しません。現在のAIは画像認識や音声認識、自然言語処理などの限定的な分野で活躍するもののみです。AGIの開発には、機械学習アルゴリズムの進化や膨大な計算リソースが求められます。
AGIの未来
AGIの開発成功時期がいつになるかは、専門家の間でも意見がわかれています。開発時期に関する著名人の主な意見は、以下の通りです。
- ダリオ・アモデイ氏(Anthropicの共同創業者・CEO):2年~3年程度
- シェーン・レッグ氏(Google DeepMind 共同創業者・チーフAGIサイエンティスト):50%の確率で2028年
- ジェンスン・フアン氏(NVIDIA創業者・CEO):5年以内
- レイ・カーツワイル氏(発明家・思想家・未来学者):2029年もしくは2032年
- 孫正義氏:10年以内
- ジェフリー・ヒントン氏(コンピュータ科学者・心理学者):5年~20年程度
AGIの開発には、未だ多くの課題が残っていますが、今後も確実に研究開発が進んでいくでしょう。
AGIの登場により予想される仕事の変化
AGIの登場は、私たちに大きな影響を与えるでしょう。ここからは、AGIの登場により予想される仕事の変化について解説します。
新たな仕事の登場
AGIが開発されれば、新たな仕事が登場すると考えられます。AGIの監視や管理、調整する仕事が必要になるでしょう。また、導入をサポートする職種も求められます。具体的には、AGIを導入するとともに製造現場の業務プロセスを変更したり、適切に稼働しているかを監視したりする仕事の登場が考えられるでしょう。
AI関連職種の地位向上
AI関連職種の地位向上も考えられます。具体的には、以下職種の地位が向上するでしょう。
- AIを利用しやすい形にするためのトレーニングを実施するAIトレーナー
- 適正に活用する目的で、AIの公平性や正確性などを確認するAI評価スペシャリスト
- 組織や企業で適切にAIを利用するために、ガイドラインやポリシーの作成をサポートするAIエチックスコンサルタント
上記は、倫理面も考慮した上でAIを運用するために欠かせない存在です。開発者はもちろん、適正な利用をサポートするAI関連職種の重要性が高まります。
働き方の変化
AGIの台頭は、働き方自体を変化させます。能力の高いAGIであれば、人間が行っていた多数の役割を担えるでしょう。人手不足の解決や過重労働の改善、多様な働き方の実現などが期待されています。例えば、人が行っていた単純業務をAGIが担当することで、人間は収益を向上させるためのコア業務に集中可能です。また、人が担うクリエイティブな業務もサポートします。
法律や規制、ルール整備
AGIの普及にはメリットだけでなく注意点も存在するため、プライバシー・知的財産などの法律や規制、ルールの整備が必要とされます。現在でも、AIの利用に関するルールがさまざまな国や地域で話し合われていますが、AGIの登場により、さらに複雑な法規制が必要とされる可能性があります。
AGI開発を推進するテクノロジー
続いて、AGI開発を推進するテクノロジーについて解説します。
ディープラーニング(深層学習)
ディープラーニング(Deep Learning)とは、脳の神経回路における仕組みを模したニューラルネットワークを多層に重ね、学習能力を高めた機械学習のことです。ディープラーニングにより、データの特徴をより深く学習することで、複雑な処理が可能になりました。
生成AI
ChatGPTをはじめとする生成AIでは、大量のデータによる学習が行われており、ユニークかつリアルなコンテンツ作成が可能です。人間が作ったようなテキストや音声などの制作物を創造できます。
➡大躍進中の生成AI!トレンドと業務自動化サービスへの活用について紹介
➡生成AIにはどんな種類がある?基本的な原理と主要な種類を解説
自然言語処理(NLP)
自然言語処理とは、人が日常的に使っている言語(自然言語)をコンピューターで処理・分析する技術のことです。SNSの普及やビジネスコミュニケーションにおけるチャットツール利用が増加したため、テキストデータ量が増え注目されています。自然言語処理技術により、文章生成や質問応答などの多様なタスクが可能になります。
コンピュータビジョン
コンピュータビジョンとは、コンピューターが画像や映像から情報を抽出する高度な認識能力のことです。ディープラーニングと組み合わせることで、より高度な認識や監視、画像・動画処理タスクが可能になります。
ロボット工学
ロボットに関するテクノロジーの研究を行うロボット工学により、AGIにおける感覚的知覚と身体操作が可能になることが期待されています。AGIをロボットに埋め込めば、人間のように腕を動かして、パーツの組み立てなどができるでしょう。
AGI開発における課題
研究が進められているAGIですが、まだ開発には至っていません。ここからは、AGI開発における課題について解説します。
ドメイン間連携の創出
人間はさまざまな知識や経験を組み合わせて思考する一方で、現状のAIモデルはドメイン間の連携ができません。ドメイン間の連携ができなければ、知識の応用やさまざまなタスクへの対応が簡単ではありません。
感情的な思考の必要性
ディープラーニングにより、AGIが実現する可能性は高まっています。ただ、現在のテクノロジーでは、人間が持つ創造性を再現できていません。創造性の向上には、感情的な思考が必要とされるからです。
感覚的な知覚の必要性
AGIには、人間と同じような外部環境の感覚的な知覚が必要とされます。ただ、現状のコンピューター技術では味や匂い、音などを正確に理解できません。
AGIの問題や懸念
さまざまな課題解決が期待されているAGIですが、問題や懸念点も存在し、もっとも代表的なものがシンギュラリティと言われる現象です。シンギュラリティとは、AIが人間の知能を超えることです。2045年に起こると予測されることから、2045年問題とも呼ばれています。
シンギュラリティが起これば、人間がAIをコントロールできなくなる恐れがあります。また、AGIの台頭で業務の自動化が進めば、職を失う人が発生する可能性もあるでしょう。
まとめ
AGIとは、特定のタスクに特化したテクノロジーではなく、人間と同様かそれ以上の知的能力を有する人工知能のことです。まだ、開発が完了していませんが、近い将来完成するのではないかと予測されています。AGIは自己学習能力を有しており、独自の判断や新たなアイディアの創出が可能で、私たちの仕事の仕方・生活を大きく変える可能性があります。
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