モダナイゼーションとは?行うメリットや方法と注意点、成功事例を解説

コラム

モダナイゼーションとは、古いシステムを見直して最新の技術や環境に適合させることです。古いシステムを保守・メンテナンスできるエンジニアは少なく、運用に関わるコストが増加しています。モダナイゼーションを実施すれば、コスト削減だけでなく業務効率・生産性の向上やセキュリティの強化などさまざまなメリットを得られるでしょう。

本記事では、モダナイゼーションの概要やメリットと実施する際の注意点、成功事例について詳しく解説します。モダナイゼーションについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

レガシーシステムの問題点

過去の技術や仕組みで構築されているレガシーシステムには、以下の問題点が存在します。

  • 複雑化・属人化
  • 運用コストや障害リスクの増加
  • 低効率
  • 不安定な稼働

レガシーシステムは、バージョンアップや機能追加を繰り返した結果、構造が複雑化・ブラックボックス化しているケースが少なくありません。また、古い技術を活用しているため効率が悪く、最新テクノロジーを活用できない原因になります。
経済産業省も2018年に発表したDXレポートの中で「2025年の崖」という言葉を用いて、古いシステムの問題点を指摘しました。2025年の崖とは、人材不足や基幹システムの老朽化などが原因で、2025年以降年間最大12兆円の経済損失が生じる問題のことです。レガシーシステムの活用を続ければ、さまざまなリスクがあるでしょう。

モダナイゼーションとは

レガシーシステムから脱却する一つの手法として注目を集めているのが「モダナイゼーション」です。モダナイゼーション(modernization)とは、老朽化したり古くなったりしたIT資産を、最新のものや最適なものに置き換える取り組みのことです。また、併せてシステムの効率性や柔軟性を高め、企業競争力の向上を目指します。

ここからは以下の事項について解説します。

  • モダナイゼーションの必要性
  • マイグレーションとの違い

モダナイゼーションの必要性

モダナイゼーションが必要とされる主な理由は、以下の3つです。

  • 古い技術からの脱却
  • テクノロジーの進歩
  • 競争環境の激化

冒頭解説した通り、レガシーシステムを活用し続ければコストが増加します。開発当時に活用されていたプログラミング言語を取り扱える技術者が少なくなっており、システムの保守・管理も簡単ではありません。ベンダーのサポートが終了した製品を使い続ければ、セキュリティリスクも向上します。

また、近年はAIなど新たなテクノロジーが生み出されており、日々性能が高まっています。データを活用して経営を行う企業も多く、IT資産は事業の成長や発展に寄与する要因の一つです。モダナイゼーションにより、最新テクノロジーを活用できる環境の整備が求められています。

さらに、競争環境の激化からもモダナイゼーションが必要とされています。グローバル化が進み競合他社も増え、企業の生き残りは簡単ではありません。モダナイゼーションで効率や顧客体験の向上を図ることが重要です。

マイグレーションとの違い

モダナイゼーションとマイグレーションは混同されがちですが、両者は移行する対象が異なります。マイグレーション(migration)とは、既存のシステムやハードウェア・ソフトウェア、データを新たな環境に移行することです。例えば、老朽化したハードウェアやレガシーシステムからの移行、オンプレミス環境からクラウド環境への移行が該当します。
一方、マイグレーションでは既存のシステムを最新の技術やプラットフォームに更新します。ただ単に、環境を変えるだけでなくプログラミング言語の書き換えやアーキテクチャの再設計なども対象です。
⇒マイグレーションとは?種類と手法や実施するメリット、成功させるポイントを解説

モダナイゼーションを行う5つのメリット

続いて、モダナイゼーションを行う以下5つのメリットについて解説します。

  • 業務効率と生産性の向上
  • コスト削減
  • セキュリティ強化
  • データ活用の実現
  • コンプライアンスの遵守

業務効率と生産性の向上

モダナイゼーションの実施により、業務効率と生産性の向上が可能です。最新テクノロジーを取り入れれば、業務プロセスの最適化が期待できます。また、業務の一部を自動化できれば、人が行う作業を減らせるでしょう。リモートワークなど、多様な働き方ができる体制の整備にも役立ちます。

コスト削減

モダナイゼーションを行うことでコスト削減も可能です。古いシステムの保守・管理を実施できるエンジニアの希少性が高まっており、コストが増しています。また、システムが老朽化すればトラブルを起こすリスクが増え、対応にもコストがかかるでしょう。
最新テクノロジーに置き換えれば、システムの運用コストを減らせます。

セキュリティ強化

モダナイゼーションはセキュリティの強化にも有効です。近年は、サイバー攻撃が増加しており手法も高度化しています。レガシーシステムにはセキュリティ上の欠陥である脆弱性が多数存在するため、サイバー攻撃の防止が簡単ではありません。
モダナイゼーションでセキュリティに関する新たな技術を取り入れれば、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを低下させられます。

データ活用の実現

データ活用の実現も、モダナイゼーションを行うメリットです。他システムとの連携が可能になれば、データ活用がしやすい環境を整えられるでしょう。より多くのデータを活用した分析や正確性の高い判断が可能になります。また、AIなどを導入すれば経験や勘に頼らない予測も可能です。

コンプライアンスの遵守

モダナイゼーションはコンプライアンスの遵守にも効果的です。最新テクノロジーに刷新することで、新たな法律や業界基準を満たせます。近年は法律の改正が頻繁に行われていますが、レガシーシステムの場合対応が簡単ではありません。
法律や業界基準を満たさなかった場合、罰金が科されたり信用が低下したりするリスクがあります。最新のテクノロジーに置き換えれば、法律などへ対応しやすくなるでしょう。

モダナイゼーションを実施する6つの方法

モダナイゼーションを実施する主な方法は以下の6つです。

  • リプレイス
  • リホスト
  • リライト
  • リビルド
  • リファクター
  • リドキュメント

順に解説します。

リプレイス

ソフトウェアやハードウェアを最新のものに変更する手法です。例えば、同様の役割を果たす最新のシステム構築・導入が該当します。企業の状況に合わせたシステムにしやすく、パフォーマンスやセキュリティ、柔軟性の向上などが見込めます。一方で、形式などが異なりデータ移行に手間がかかるケースもあります。

リホスト

プログラムは変更せずに、サーバーやOS、ミドルウェアなどを新たなシステム基盤に移行する手法です。システムの拡張性や柔軟性が高まり、コスト削減も期待できます。ただ、プログラムの構造自体を変更するわけではないため、古いコードに起因した課題が残るリスクもあります。

リライト

プログラム言語や技術を最新のものに置き換えることで、既存システムを継続利用できるようにする手法です。ソースコードを根本的に見直して、使いやすく生産性の高いシステムの構築を目指します。ただ、複雑化したレガシーシステムの場合、リライトに多くの時間やコストがかかります。

リビルド

最新の技術やプラットフォームに合わせて既存システムを一から再構築する手法です。新たな技術で作り変えるため、システムのパフォーマンスやセキュリティが向上します。一方で、時間と手間、コストがかかります。

リファクター

機能は変更せず、設計の変更とプログラムの最適化を行う手法です。効率性の向上や保守しやすいコードへの書き換えが目的で、厳密にはモダナイゼーションに向けた準備といわれる方法です。

リドキュメント

既存システムの仕様書や設計書、マニュアルなどのドキュメントを再整備する手法です。レガシーシステムの場合、ドキュメントが更新されておらず現状とそぐわないケースが少なくありません。リドキュメントにより、情報の正確性を担保して運用・保守しやすくします。リファクター同様、モダナイゼーション実施に向けた準備として利用されます。

モダナイゼーションを実施する際の注意点

モダナイゼーションを実施する際は以下に注意しましょう。

  • 詳細な現状分析の実施
  • 要件の明確化
  • データの整形
  • テストとバリデーションの実施

ここからは、上記の各注意点について解説します。

詳細な現状分析の実施

旧システムの詳細な現状分析を実施しましょう。具体的には以下の洗い出しを行います。

  • 構成要素や機能
  • 業務・ビジネスに与える影響
  • 強み・弱み

上記を洗い出し分析することで、既存システムの問題点が明確になります。

要件の明確化

現状が明らかになった後に、詳細な要件定義を実施します。なにをどのように変えるかを明確にすることが重要です。モダナイゼーションの実施方法は複数あり、目的により最適なものが異なります。また、変更点が定まらなければどのような技術を用いれば良いかも決まりません。

データの整形

データを移行する際には整形が欠かせません。旧システムと新システムのデータ構造やフォーマットが異なれば、データを上手く移行できず消失してしまう可能性があります。また、併せて重複しているものなど不要なデータは削除すると良いでしょう。

テストとバリデーションの実施

本番環境に移行する前に、テストとバリデーションを実施しましょう。バリデーションとは、データやプログラムが特定の条件・仕様に適合しているかを検証するプロセスのことです。要件通りにモダナイゼーションを実施したとしても、想定通り稼働するとは限りません。まずは、テストとバリデーションを実施することで、トラブルが発生した際のリスクを減らせます。

モダナイゼーションの成功事例3選

モダナイゼーションを成功させている企業は少なくありません。最後に以下の成功事例3選を紹介します。

  • 鈴与商事
  • 東急建設
  • ユニメイト

鈴与商事

エネルギー・関連設備や化学品、オフィス製品などを取り扱う鈴与商事は、もともと活用していたワークフローシステムの提供範囲が限定的で、設定・開発が複雑な点に課題を感じていました。
モダナイゼーションを実施してワークフローシステムを刷新した結果、ペーパーレス化の大幅な促進と設定・開発の内製化に成功しました。その結果、年間400万円のコスト削減に成功しています。

東急建設

建築設計や木造・木質建築、賃貸不動産などの事業を展開する東急建設も、ワークフローシステムのモダナイゼーションを実施しました。東急建設もワークフローシステム自体は導入していたものの、老朽化が進みメンテナンスや開発に多くの手間・コストがかかっていました。
モダナイゼーションした結果、開発業務の効率化・標準化が可能となりメンテナンス工数削減に成功しています。また、入力の手間を減らすことにも成功しました。

ユニメイト

事務服やサービスユニフォームなどのレンタル・販売を行うユニメイトでは、ヒューマンエラーによるサイズ違いの頻発で、返品・交換のコストや過剰在庫が課題となっていました。正確なサイズの把握を目的に、AIを活用した自動採寸アプリをモダナイゼーションで取り入れた結果、オペレーションの改善に成功しています。

まとめ

モダナイゼーションとは、老朽化したり古くなったりしたIT資産を、最新のものや最適なものに置き換える取り組みのことです。レガシーシステムには、運用コストや障害リスクの増加、不安定な稼働などさまざまなリスクが存在します。モダナイゼーションで最新かつ最適なものに置き換えれば、システムの効率性や柔軟性を高め、企業競争力の向上を目指せるでしょう。古いシステムの改善を行いたい場合には、弊社SMSデータテックが提供している維持管理サービスの利用がおすすめです。古いシステムの安定稼働もサポートしているため、ご興味ある方はお気軽にご連絡ください。

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