物流倉庫の自動化のトレンドはこれだ!メリットや事例、課題まで徹底解説

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物流倉庫の自動化のトレンドはこれだ!事例や課題まで徹底解説

EC需要の増大を背景に、物流業界では日々さまざまなテクノロジーが発達しています。
本記事では、発展する物流業界のテクノロジーの中でも「自動化」に焦点を当てて、そのメリットや最新のテクノロジー、実際の事例などを紹介します。

物流倉庫の自動化とは

物流倉庫の自動化は、現代の倉庫運営で重要な役割を果たしています。
物流倉庫の自動化とは、技術と自動化機器を用いて倉庫内の業務プロセスを効率化し、労力を削減することを指します。
具体的な自動化プロセスには、自動ピッキングロボット、コンベヤベルトシステム、自動倉庫管理システム(WMS)、自動化されたトラッキングおよび監視システムなどが含まれます。

⇒おすすめ記事:【業務効率化】工場自動化のメリットは?今後の課題と導入事例をご紹介

今と昔の物流

古くは人や家畜が物を運ぶことから始まった物流は、19世紀に蒸気機関が開発されると大きく変わりました。蒸気船や鉄道、トラックによる大量輸送が可能になった一方で、積み込みや荷降ろしの作業も増加しました。これに対応するために、クレーンやフォークリフトなどの荷役機械や、海上コンテナやパレットなどの輸送機材が普及しました。

輸送や荷役作業の機械化が進む中、保管や商流に関わる荷物情報の管理や入出庫指示などは、台帳や伝票で行われるのが一般的でした。しかし、1980年代以降のIT技術の進化に伴い、在庫管理や配車管理といった業務のシステム化が進み、現在のような大量の荷物のやりとりもスムーズに対応できるようになりました。

物流倉庫を自動化する3つのメリット

物流倉庫を自動化することで、以下の3つのメリットがあります。

効率向上

物流倉庫の自動化は業務プロセスの効率を飛躍的に向上させます。
自動ピッキングロボットやコンベヤベルトシステムなどの自動化機器は、商品のピッキング、梱包、運搬を高速かつ正確に実行します。
この結果、作業サイクル時間が大幅に短縮され、多くの注文を素早く処理できます。

これにより、作業員は繁忙期でも作業に追われるプレッシャーから解放されので、より仕事のパフォーマンスを向上させることができます。

業務と品質の安定化

ヒューマンエラーは業務プロセスのリスク要因ですが、自動化によりこれらのエラーを低減することができます。
自動化システムは高い精度で作業を実行し、正確な在庫管理と注文処理を保証します。
このため、誤った商品の発送や在庫の不足などの問題を大幅に減少させ、顧客への信頼性の高いサービスを提供できます。

省人化によるコスト削減

物流倉庫の自動化は労働コストの削減にもつながります。
自動化システムは24時間稼働するため、今までその業務に係っていた人員を削減することができます。
また、在庫の最適化やスペースの効率的な利用により、倉庫の運営コスト自体を低減することも可能です。
業界内での競争力を維持しながら、コスト効率の向上が見込めます。

現代、物流業界で話題になっている課題として、2024年問題があげられます。トラックドライバーの残業時間に上限が設けられることにより、輸送力不足が発生するといった課題です。物流倉庫の自動化を実現することにより、2024年問題の課題解決に繋がるかもしれません。
物流業界の2024年問題についてはこちらを参照ください。

物流倉庫の自動化の最新トレンド

最新トレンドとして、AIを用いた機械学習や自動運転車両が挙げられます。
いずれも物流倉庫で活用されていませんでしたが、最近では業務プロセスの効率化が図れるということで活用され始めてきました。
これにより、大幅な業務効率の改善や工数の削減を可能にしています。

物流倉庫の自動化に関わる最新テクノロジー10選

上記で紹介した2つのテクノロジーを含め、物流倉庫で活用されている最新のテクノロジーを紹介します。

自動ピッキングロボット(GAS・DPS・DAS)

自動ピッキングロボットは、人間の手作業を代替し、倉庫内での商品のピッキングとパッキングを効率化します。
これらのロボットは、高精度な視覚システムとアームを備え、複雑な作業も自動的にこなします。
また、AIと連携してピッキング戦略を最適化することで、作業者の負担軽減にもつながります。

ゲートアソートシステム(GAS)

GASとは物流業界で使用される効率的な商品仕分けと保管を目的としたシステムです。配送センターや物流倉庫で主に採用され、バーコードスキャンによって商品に対応したゲートが自動開閉し、正確な仕分けを実現します。これにより、仕分けミスを大幅に低減し、迅速で精度の高い出荷が可能となっています。

デジタルピッキングシステム(DPS)

DPSとはデジタル表示器の指示に従って商品をピッキングするシステムです。商品が保管されている棚のデジタル表示器が点灯し、バーコードなどの情報で商品を摘み取ります。視覚的な支援を受けながら素早く正確なピッキングが可能です。DPSでは、商品の保管場所(ロケーション)をシステムで管理するため、棚に設置されたデジタル表示器の位置を容易に変更することができません。

デジタルアソートシステム(DAS)

DASとはデジタル表示器を利用してアソート作業を支援するシステムです。DASとDPSの主な違いは、表示器の取り付け場所です。DASでは、納品先への搬入用ユニット(カゴ車やコンテナなど)に表示器を取り付けて使用します。倉庫現場では、ハンディターミナルや固定式、無線式、ゲート式の表示器が使用され、従業員はこれらの指示に従って仕分け作業を行います。従来の紙のリストによる作業から解放され、視覚的に素早く作業が可能です。また、デジタル表示器には数量も表示されるため、数量のミスを減らすことができます。

人工知能(AI)と機械学習

AIと機械学習によって、過去のデータから物流に関するパターンを学び、需要予測や在庫最適化を行います。
また、リアルタイムのデータを分析して、在庫の配置を最適化し、効果的なルート計画を提供します。
これにより、効率性とコスト削減が実現します。

IoTセンサー

IoTセンサーは、温度、湿度、振動、重量、位置などの倉庫内のリアルタイムデータ収集を可能にします。
これにより在庫と物品の状態をモニタリングし、リアルタイムのデータ分析と予測メンテナンスを支援します。
また、センサーデータを利用することで、倉庫内のプロセスを最適化し、品質を確保できます。

自動倉庫

自動倉庫は、倉庫内のスペースを最適に利用し、自動的に商品を格納および取り出すシステムです。
シャトル式自動倉庫やAS/RS(自動化ストレージおよびリトリーバルシステム)などがあり、高いスペース効率と効率的な在庫管理を実現します。
これにより、倉庫内のスペースが最大限に活用され、作業の効率性が向上します。

ロボティクスプラットフォーム

ロボティクスプラットフォームは、ロボットのプログラムと管理を容易にします。
これにより、新しいロボットの導入や既存のロボットのアップデートが迅速に行え、倉庫内の自動化プロセスの柔軟性が向上します。
プラットフォームは、ロボットの制御、監視、データ収集を統合し、管理者に完全な可視性を提供します。

ブロックチェーン技術

ブロックチェーン技術は、物流倉庫の自動化において信頼性と透明性を高めるのに役立ちます。
ブロックチェーンは、物品の履歴とトランザクションを不変かつ透明に記録し、サプライチェーン全体でのトレーサビリティを提供します。
これにより、過去の情報や証跡を簡単に追跡でき、物品の偽造や紛失を防ぎます。

AR(拡張現実)とVR(仮想現実)

ARとVR技術は、倉庫内での作業者のトレーニングとタスクの可視化に使用されます。
ARヘッドセットやスマートグラスを使用して、作業者は正確な作業指示やデータをリアルタイムで表示できます。
VRは、新しい倉庫設計のシミュレーションやトレーニングのために活用されます。
これにより、作業者のスキル向上と作業プロセスの最適化が実現します。

自動運転車両(AGVおよびAGC・AMR・GTP)

無人搬送ロボット(AGV・AGC)

自動ガイド車両(AGV)や自動ガイドカート(AGC)は、倉庫内での物品の運搬を自動化するのに役立ちます。
これらの車両は、自動的に道路を走行し、商品を所定の場所に運びます。
AGVとAGCは、倉庫内の物品の移動を迅速かつ安全に実行し、作業者の負担を軽減します。

自立走行搬送ロボット(AMR)

AMRはAIやセンサーにより誘導体無しで自立走行が可能な搬送用ロボットです。センサーによる自己位置推定と環境地図作成によって障害物を回避しながら自律走行します。ロボットは周囲の環境を認識し、誘導体の設置不要でレイアウト認識も迅速に行えます。

棚搬送ロボット(GTP)

GTPはピッキング作業者や棚入れ場所まで荷物を直接運ぶロボットです。別名「棚搬送型ロボット」や「棚流動型ロボット」とも呼ばれます。GTPロボットはあらかじめ設定された専用エリア内で動作します。

声認識技術

声認識技術は、作業者が手を使わずに指示を出すための便利なツールです。
作業者はヘッドセットを着用し、音声コマンドを使用して商品のピッキング、移動、保管などのタスクを自動化できます。
声認識技術は、作業の効率化と正確性向上に貢献します。

クラウドベースの倉庫管理システム(WMS)

クラウドベースのWMSは、リアルタイムの在庫管理、オーダー処理、在庫追跡を実現します。
クラウドベースのアーキテクチャは、データのセキュリティと可用性を確保し、倉庫運営の効率性を向上させます。
リモートアクセスも可能なため、運営者はどこからでも倉庫プロセスを監視および管理できます。

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物流倉庫の自動化実例5選

実際に、上記で紹介したようなテクノロジーを活用して、物流倉庫の自動化に成功した企業の事例を5つ紹介します。

【事例1】アスクル

2020年6月、アスクルは大阪府にある物流センターにてロボットを導入し、倉庫内の商品運搬を自動化することに成功しました。
昨今のコロナ禍による情勢を受け、EC出荷量の増加に人員不足が重なり商品の運搬が追いつかなくなっていたところに、ロボットによる自動運搬を導入したことで慢性的な人手不足が解消し大きな業務効率改善となりました。
※参考:アスクルの物流センターにGeek+の自動搬送ロボットを111台導入 出荷製品を自動運転でスタッフまで運ぶスマート物流

【事例2】ヤマト運輸

ヤマト運輸では人力で運ぶには負担の大きいパレットによる業務負荷と、搬送作業の多くが片道であるため復路では手ぶらとなってしまい、無駄な時間が生まれてしまうという課題を抱えていました。
そこで、搬送ルートを自動で設定し運転を自動化してくれる物流支援ロボを導入したことによって、業務効率の改善だけではなく、従業員の安全面の確保にもつながったのです。

【事例3】佐川グローバルロジスティクス

佐川グローバルロジスティクスでは、自動搬送ロボットや自動梱包機、オートストア機能などを兼ね備えた「次世代型ECプラットフォームセンター」を展開しています。
従来は人力で行っていた商品の梱包から運搬、注文処理までの一連の流れを全て自動化することによって、極力人の手を介さない物流倉庫の運営を実現しました。
これにより大幅なコストカットを叶えたのです。
※参考:MonotaRO/自律搬送型ロボット導入の新物流拠点、本格稼働

【事例4】Amazon

Amazonの物流倉庫では、「Kiva Systems」というロボットメーカーを買収したAmazonが開発した、「Amazon Robotics Kiva」という自動搬送ロボットが導入されています。作業スタッフが必要な商品を選択すると、ロボットがその商品を含む棚を持ってスタッフの元へ運んできます。このシステムにより、倉庫内での人の移動が不要となり、移動スペースを節約しながら効率的なストッキングが可能になりました。作業員は定位置で作業し、これにより作業の負担とヒューマンエラーが大幅に減少しました。
※参考:アマゾンロボティクスの全貌 顧客と働く人の満足が効率化を実現

【事例5】日立物流

日立物流では、EC市場の拡大と労働人口の減少による課題に対応するため、EC事業者は高効率で初期費用を抑えた物流インフラの構築を迫られていました。自動製函機、棚搬送AGV、ゲート仕分けシステム、チラシ・納品書自動投入機、自動封函機、ロゴ印字機、オートラベラなど複数の設備を導入し、これらを自社開発のRCS(Resource Control System)で統括することで、複数荷主が共同利用できる省人化・自動化されたシェアリング型センターを構築しました。これにより、「人が歩いて行うピッキング」に比べて歩行距離が大幅に短縮され、誤出荷や納品書の誤投入などの作業ミスが減少し、業務効率化が実現されました。
※参考:物流・配送会社のための 物流DX導入事例集 ~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~

物流倉庫の自動化の課題

物流倉庫の自動化は非常に便利ですが課題もあります。以下の3つの側面から課題について解説します。

高コスト

自動化システムの導入には高い初期コストがかかります。
上記で紹介したような最新のテクノロジーを活用したロボットやセンサー、自動化装置の購入と設置、カスタマイズなどは決して安くはないコストが発生し、特に中小企業にとって大きな課題となっています。

複雑性

自動化システムは高度で複雑なテクノロジーを組み合わせたものであり、その設計と運用には専門知識が必要です。
システムの導入と運用における技術的な課題やトラブルシューティングは、企業にとって課題となるでしょう。

適応性の課題

倉庫自動化は、倉庫内の物品、プロセス、需要の変化に適応する必要があります。
新しい製品や配送モデルへの対応、システムのアップデート、変化する規制に適合することが課題です。
そのため、カスタマイズの柔軟性なども重要といえます。

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物流倉庫の自動化を成功させるためのポイント

物流倉庫の自動化を失敗しないためのポイントを3つ紹介します。

適切なテクノロジーの選択

前述したように、物流倉庫の自動化にはさまざまなテクノロジーが活用できます。
自社の倉庫のニーズと目標に合った適切なテクノロジーを選択することが大切です。
ニーズに即していないテクノロジーを導入して、却って業務の負担となり自動化どころではない、ということにならないようにしましょう。

従業員のトレーニング

自動化の導入に伴い、従業員は新しいスキルとトレーニングが必要です。
最新のテクノロジーを導入しても、使いこなす側の従業員が未熟では意味がありません。
十分なトレーニングプログラムを提供し、作業者が新しいテクノロジーを理解し、効果的に操作できるようにサポートしましょう。

モニタリングと最適化

自動化システムは継続的にモニタリングし、PDCAサイクルを回していくことで性能を最適化しましょう。
導入してすぐに業務効率が大幅に改善することはありません。
データ分析とフィードバックを活用して、プロセスの改善を継続的に行っていきましょう。

まとめ

物流倉庫の自動化は大幅な業務効率の改善やコストの削減など大きなメリットがあります。
一方で、活用できるテクノロジーは日々進化しており、最適なツールの選定や実際に使用する作業者の教育など、導入までのハードルが高い特徴もあります。
物流倉庫の自動化に着手したいけど不安がある、という方は弊社の業務改善コンサルティングサービスをぜひ活用ください。
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