OWASPとは?概念やZAP、最新のOWASP TOP10を徹底解説
OWASPは、インターネットやソフトウェアの安全性向上を目指すグローバルコミュニティです。企業や開発者が信頼できる安全なアプリケーションを設計し、運用できるよう支援することを目的としています。本記事ではOWASPとは何か、Webアプリケーションをサイバー攻撃から守るための効果的な方法を解説します。
目次
Webアプリケーションを情報漏洩やサイバー攻撃から守るためには、OWASP(Open Web Application Security Project)が提供する知識とツールの活用が重要です。
本記事ではOWASPの基本的な概念を紹介し、Webアプリケーションのセキュリティ対策に必要な具体的な方法を紹介します。セキュリティ対策の基礎から実践的なアプローチまでを学び、サイバー攻撃からWebアプリケーションを守りましょう。
OWASPとは何か

OWASP(Open Worldwide Application Security Project)は、インターネットやソフトウェアの安全性向上を目指すグローバルコミュニティです。企業や開発者が信頼できる安全なアプリケーションを設計し、運用できるよう支援することを目的としています。
誰でも自由に利用できるオープンソースのプロジェクトを中心に活動しており、世界各地で開催されるカンファレンスやイベントを通じて、セキュリティに関する知識や最新の技術を共有しています。IT業界だけでなくあらゆる組織や個人にとっても、OWASPは「信頼できるセキュリティ情報の源」として重要な存在です。
OWASはなぜ重要なのか

日常的に使われているWebアプリケーションには、多くの脆弱性が存在しています。脆弱性を悪用されると個人情報の漏洩やデータの改ざん、さらにはアプリケーションの完全な制御を奪われるリスクがあるため、セキュリティ対策は必須です。
OWASPは、こうした脆弱性をなくすためのガイドラインやベストプラクティスを提供し、開発者が安全なソフトウェアを作るための手助けをしています。
OWASP ZAPの特徴

OWASP ZAP(Zed Attack Proxy)は、Webアプリケーションのセキュリティを診断するために使われる無料のオープンソースツールです。ここでは、OWASP ZAPが持つ主要な特徴について解説するので、ぜひ参考にしてください。
1. 初心者にもやさしい使いやすさ
OWASP ZAPはITやセキュリティに詳しくない人でも簡単に操作できます。
URLを入力して「実行」ボタンを押すだけで自動でWebアプリケーションに疑似的な攻撃を行い、問題がないかチェックしてくれます。誰でも気軽にセキュリティ診断を始められるのが魅力です。
2. 世界中で使われている安心のツールで日本でもサポートが受けられる
OWASP ZAPは世界的に有名なOWASPが提供している、信頼性の高いツールです。日本にも「OWASP Japan」という支部があるため、日本語によるサポートも充実しています。世界基準のツールでありながら、日本国内でも安心して使える環境が整っている点もOWASP ZAPの特徴です。
3. 実際に練習しながらセキュリティを学べる
OWASP ZAPには、初心者がセキュリティ診断を実際に体験できる練習用サイトも用意されています。たとえば、「OWASP Juice Shop」というサイトでは、わざとセキュリティ上の弱点が含まれているWebアプリを使いながら、診断の仕組みを学べます。診断結果を見ながらどんな問題があるかを理解できるので、初心者でもセキュリティについてしっかり学べるでしょう。
【2024年版】OWASP Top10とは?

OWASP Top 10は、Webアプリケーションのセキュリティにおいて最も重要で、よく見られる脆弱性をまとめたリストです。ここでは最新の2024年版を紹介します。新たな脅威や攻撃手法の進化に対応し、最新のリスクに基づいた重要な脆弱性がリストアップされているため、ぜひ参考にしてください。
1.Improper Credential Usage (クレデンシャルの不適切な使用)
APIキーやパスワードなどの認証情報が適切に管理されていない場合、攻撃者に盗まれて悪用されるリスクを説明した項目です。パスワードを安全に保管していないと他者が不正にサービスにアクセスできてしまうため、攻撃者に乗っ取られる恐れがあります。
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2.Inadequate Supply Chain Security (サプライチェーンセキュリティの不備)
モバイルアプリの開発からリリースまでに、開発コードやサードパーティ製ライブラリの検証が不十分である場合に生じるリスクについて説明している項目です。サプライチェーンとは、製品やサービスを開発・提供する際に必要な一連のプロセスや関係者のネットワークを指し、素材の調達から開発、製造、配送、最終的な提供に至るまでの流れを含みます。
モバイルアプリのサプライチェーンが適切に管理されていないと、悪意を持つ内部関係者や外部のサードパーティ製ライブラリを通じて不正な機能がアプリに組み込まれるリスクがあります。
3.Insecure Authentication/Authorization(安全でない認証/認可制御)
モバイルアプリにおける認証および認可制御が適切に実装されていない場合に発生するリスクについて説明している項目です。認証とはユーザーが正規の利用者であることを確認するプロセスであり、認可は特定のユーザーがどの機能やデータにアクセスできるかを制御するものです。これらの制御が不十分であれば、攻撃者が正規利用者に成りすますことが可能になり、サービスを不正に利用されたり乗っ取られたりする危険があります。
4.Insufficient Input/Output Validation(不十分な入出力値検証)
ユーザーが入力した値やサーバが出力する値に対して十分な検証が行われていない場合に生じるリスクについて説明している項目です。
モバイルアプリやサーバ側で入力および出力の検証やサニタイズ処理が適切に実施されていないと、脆弱性が生じ、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった攻撃を受ける可能性があります。
なお、サニタイズとは、ユーザーからの入力値やシステムからの出力値を正しい形式に整えたり、不正なコードを削除する処理を指し、セキュリティリスクを防ぐための重要なプロセスです。
5.Insecure Communication(安全でない通信)
モバイルアプリが暗号化されていない通信や、非推奨の暗号化プロトコルを使用している場合に発生するリスクについて説明している項目です。暗号化されていない「平文」での通信とは、データがそのままの形で送受信されることを指し、攻撃者が容易に通信内容を傍受できる状態を意味します。このような状況ではユーザーが入力したパスワードや個人情報などの機密データが漏洩し、さらには通信内容が改ざんされるリスクが高まります。
6.Inadequate Privacy Controls(不十分なプライバシー管理)
ユーザーの個人情報が十分に保護されていない場合のリスクを説明した項目です。
アプリが個人情報を暗号化せずに保存していると、攻撃者にそのデータを盗まれてユーザーが詐欺や乗っ取り被害に遭いやすくなります。アプリ提供元企業として、信頼を損なう大きなリスクにもつながります。
7.Insufficient Binary Protections (不十分なバイナリ保護)
アプリの実行ファイルが適切に保護されていない場合のリスクを説明した項目です。
攻撃者がリバースエンジニアリング(製品の仕組みや構成部品、技術要素などを調査する手法)でアプリの仕組みを解明し、不正なアプリを作成する可能性があります。偽アプリがユーザーに配布される可能性もあり、非常に危険な状態です。
⇒リバースエンジニアリングとは?メリットや方法、違法性と対策を解説
8.Security Misconfiguration(セキュリティの誤設定)
アプリの設定ミスにより、不要なアクセス権限や危険な通信プロトコルが使用される場合のリスクを説明した項目です。設定不備には安全でない通信プロトコルの使用や不要なパーミッションの付与、誤ったコンポーネントのアクセス設定が挙げられます。
攻撃者が設定ミスにつけこんでシステムに不正アクセスできてしまうため、アプリ全体が攻撃にさらされる危険性が上がります。
9.Insecure Data Storage (安全でないデータストレージ)
モバイルアプリが取り扱うデータに対して、適切な保護対策が行われていない場合に発生するリスクを説明した項目です。データの保護が不十分な場合、ユーザーが入力した重要な情報が漏洩し、ユーザーに被害が及ぶだけでなく、アプリを提供している企業の信用も失われる可能性があります。
10.Insufficient Cryptography(暗号化の不備)
データの暗号化が不適切である場合に発生するリスクを説明した項目です。古い暗号化アルゴリズムを使用していると攻撃者はその暗号を解読し、ユーザーの機密情報を盗むことが可能です。データ漏洩の危険が非常に高い状態といえます。
(OWASP Mobile Top 10)
OWASP ZAPの利用方法

続いては、OWASP ZAPの基本的な利用方法を解説します。Webアプリケーションの安全性を向上させるための実践的な知識を身につけるためにも、しっかりおさえておきましょう。
インストール方法
OWASP ZAPはオープンソースのツールで無料で利用できるため、セキュリティ診断を手軽に始められます。インストールするための動作環境や事前に準備するアプリケーションは次のとおりです。
- ホスト端末: Windows 10
- OWASP ZAP: 2.11.0
- Java Version: 8 Update 311
1.JREのインストール
OWASP ZAPを使用するためには、Java Runtime Environment(JRE)が必要です。以下の手順でJREをインストールします。
- 64bit版のJREをダウンロード
64ビットJava for Windows ダウンロードページ - Oracleの公式サイトからライセンスを確認してダウンロードリンクを選択
- ダウンロードしたインストーラを起動
- インストールを実行
2.OWASP ZAPのインストール
- OWASP ZAPのインストーラをダウンロード
ダウンロードページ - 「Windowsの64bitインストーラ」を選択してダウンロードを開始
- ダウンロードが完了したらインストーラを起動
- 画面の指示に従い「次へ」をクリック
- ライセンス条項について「同意する」にチェックを入れて「次へ」をクリック
- インストールの種類を選択
- インストールを実行
診断できる項目
OWASP ZAPでは、Webアプリケーションの脆弱性を評価するために、以下の3つのスキャン機能を提供しています。それぞれのスキャン方法について説明します。
1. 簡易スキャン
簡易スキャンは、OWASP ZAPが自動的にWebアプリケーションの基本的な脆弱性をチェックするための機能です。URLを入力するだけで、OWASP ZAPが短時間でセキュリティチェックを行い、一般的な問題を迅速に特定します。
2. 動的スキャン
動的スキャンは、Webアプリケーションを実際に操作しながら脆弱性を検出する方法です。
ユーザーがアプリケーションにアクセスして攻撃を行い、実際の利用環境に近い形で脆弱性を見つけ出します。アプリケーションの動的な振る舞いを評価できるため、より深い脆弱性分析が可能です。
3. 静的スキャン
静的スキャンは、Webアプリケーションのソースコードやバイナリを分析して脆弱性を特定する手法です。コードを実行せずにコードの構造や実装の問題点を探ります。開発段階で早期に問題を発見するのに適しており、アプリケーションの設計や実装の欠陥を洗い出せます。
その他のOWASPの取り組み

OWASPの代表的な活動には、「セキュリティガイドライン」の作成や前述の「OWASP Top 10」がありますが、それ以外にもさまざまなプロジェクトやツールの提供を行っています。
ここでは、OWASPが推進しているその他の重要な取り組みを紹介します。ぜひ、参考にしてください。
1.OWASP Bug Logging Tool(BLT)
開発者がアプリケーションの脆弱性やバグを記録・管理するためのツールです。BLTは、セキュリティ上の問題を体系的に管理することで、アプリケーションの安全性を向上させるのに役立ちます。
2.OWASP CSRFGuard
Webアプリケーションをクロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)攻撃から保護するためのライブラリです。CSRF攻撃とは、悪意のあるサイトがユーザーを騙して別のサイトで意図しない操作をさせる攻撃手法を指します。CSRFGuardはユーザーのリクエストが正当であることを確認するためのトークンを使用し、攻撃を防ぐ防壁の役目を担います。
3.GitHub上の多数のリポジトリ
OWASPはGitHub上に多くのリポジトリを持ち、さまざまなセキュリティツールやライブラリを開発・公開しています。これらのリポジトリには、脆弱性診断ツールやセキュリティガイドラインなどが含まれており、誰でも自由に利用可能です。
4.OWASP Top 10 Client-Side Security Risks
ブラウザ上で動作するアプリケーションに共通する特定の脆弱性をまとめたドキュメントです。開発者が注意すべきポイントが掲載されています。
5.OWASP Cloud-Native Application Security Top 10
現在進行中のプロジェクトです。クラウドネイティブアプリケーション(クラウドコンピューティング環境で実行することを前提に構築されたソフトウェアプログラム)における、主要なセキュリティリスクや関連する課題、解決策に関する情報を提供予定です。
OWASPの会員になる方法

OWASPの個人会員に登録するには、年間50ドル(グローバル会員)または500ドル(ライフタイム会員)の費用がかかります。個人会員になると、以下のような特典を受けられます。
- OWASPが提供する専用のメールアドレスを利用できる
- 会員限定のニュースレターが受け取れる
- OWASPの組織の投票権が与えられる
まとめ

今回の記事では、OWASPの重要性やWebアプリケーションをサイバー攻撃から守るための具体的な方法について解説しました。
ただし、近年のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、OWASPの知識だけでは100%リスクを防ぐことが困難なケースもあります。
OWASPのガイドラインを参考にしつつ、エンドポイントセキュリティの導入も検討し、より強固なセキュリティ体制を築いていきましょう。

